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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第451話 医療機関の営業マンとして

 インドの都市は何処に行っても人が多く、なぜか俺達の高級キャンピングカーを見かけると人が寄って来る。だが途中でシャーリーンが準備してくれた、補給物資や燃料のおかげで手間取る事無く、チェンナイに到着することが出来た。 


「サリーを着ている女の人がいるね」


 ミオが言う方向を見れば、色とりどりの服を着た女性が行きかっていた。元より町並みもあちこち色とりどりで、今まで巡って来た国々とは違う風景が広がっている。


「美しい街だな」


「そうね」


「だが何処に行っても大勢の人がいる」


「早く何とかしなきゃね」


 それを聞いてアビゲイルが言う。


「万が一、研究所からゾンビが漏えいなどしたら、あっという間に広がるでしょう」


「その前に必ず潰さねばならん」


 俺達はファーマー社の一つ目の研究所を目指している。するとソファーに座って、何かしらスマートフォンをいじっていたシャーリーンが俺達に聞いて来た。


「チェンナイにある七カ所の拠点を全て潰すのですか?」


「必要ならな」


「同時に?」


「いや。それは不可能だ」


「一か所を叩けば、あっという間に他の拠点に広がりませんか?」


 それは皆が考えていた。そこでクキがシャーリーンに言う。


「情報は大森が押さえるつもりでいる」


「ネットや電話を封じても、中の人がバイクで走ったら?」


「確かにそれもあるが…」


「あの。部外者なのですが、私の考えを述べてもよろしいですか?」


「自由にどうぞ」


 するとシャーリーンは俺達の前に、スマートフォンを置いて画面を見せて来る。


「これなんですが」


 それを覗き込んでミオが尋ねる。


「医療関係のホームページですか?」


「ドバイの医療会社ホームページです。ここもカリム様の物なのですが、会長にも社長にもカリム様は名を連ねていません」


「医療関係の会社ですか…」


「はい。実は私は名前を変えて、ここに勤めている事になっております」


 それを聞いて、クキとアビゲイルが身を乗り出した。


「それで?」


「普通に接触しましょう。安全に情報を集めてから一気に叩く、というのはどうでしょう?」


 俺達は顔を見合わせた。


「無くはないな」


「でも、危険じゃないかしら? もしばれたらシャーリーンさんが危ない」


「いや。彼女一人を潜入はさせないさ。というかアビゲイル博士とエイブラハム医師以外は、ファーマー社に面が割れていない。一緒に来た社員と言う事なら問題あるまい」


「誰が一緒に?」


「それなんだがな、俺達が中国や韓国人で押し切れるかどうかだ。日本人とバレれば、アイツらは拘留しようとしてくるだろう。ヒカルはボディーガードとしてついて行くとして、他に誰が行くかだな」


 そこでクロサキが言う。


「英語をネイティブに話せる人じゃないとダメですね」


「なら俺か美桜か黒崎だな」


 そこで俺が言う。


「クキはダメだ。軍人の気配がする」


「そうか?」


「ああ。どうやらそれは消せないようだ」


「なら私が」


 クロサキが言うと、ミオがそれを制した。


「いえ。私が行きます。相手がタミル語やヒンディー語を陰で話した時、ある程度なら聞き取れます」


 するとシャーリーンが言う。


「ならば行くのは、ミスターヒカルとミス美桜という事でよろしいですか?」


 皆が顔を見合わせて頷いた。


「それでいい」


「じゃあ。私とミスターヒカルとミス美桜ですり合わせをしましょう。普通の商談になるように、カリム様の医療会社の内容を頭に叩き込んでください。今回は感染症の薬品の買い付けに来たという事で、アラブ首長国連邦の承認を取り付けるようにカリム様に連絡します」


 それを聞いてクキとクロサキが顔を見合わせて言う。


「凄いな。ダミーでは無いという事だ」

「そのようですね。今までとは全く違うやり方です」


「少しでもお役に立てると良いのですが」


 そう言ってシャーリーンは俺達に情報を公開した。ミオがそれを読み上げて俺に聞かせ、その間にシャーリーンがカリムに連絡を取っている。


 しばらく時間を取って俺とミオが終わると、シャーリーンが俺達に言った。


「承認を取り付けました。それではプリンターで二人の名刺を作ります」


 するとオオモリが言う。


「現物あります?」


「これです」


 シャーリーンが出すと、それをオオモリがスマートフォンのカメラで撮影し、キャンピングカーに備え付けのプリンターにつないだ。


「名刺用の紙ってあります」


「プリンターの下の引き出しに」


 シャーリーンに言われ、オオモリが紙を取り出してプリントアウトした。それを俺達に渡して言う。


「切れ目に沿って分けられるみたいです」


 俺達は名刺を分けた。


「名刺入れはこれを」


 俺とミオはそれを入れる皮のケースを渡される。それを見てクキが言う。


「随分と用意周到だ」


「想定して補給時に入手させました」


 その手腕に皆が驚いている。流石に俺もびっくりした。


「凄いな」


 俺が言うとシャーリーンが答える。


「皆様がムンバイで情報を入手してくださったおかげです。あとはカリム様の息のかかった人が、インドのあちこちにおりますので可能なのです」


 クキも頷く。


「いや、相当優秀だ。流石はカリムさんの秘書だっただけはある」


「これくらいの事をやってのけねば、彼の秘書は務まりませんでした」


「そんな秘書を惜しげもなく出すんだからな」


「ははは。渋られましたよ。ですが私の家族の事を知って、二つ返事で送っていただいたのですよ。彼らはそう言う人達です」


「いい人らだな」


「はい」


 そしてシャーリーンはすぐに違うスマートフォンを三つ取り出した。それも補給時に提供されたようで、本当に医療会社で使っている物を持って来たらしい。


「万が一取り上げられても、これなら問題ありません」


「スゴ…」


 入念に計画されていたかのように準備は進み、最後にシャーリーンが言う。


「既にアポイントは取れています」


 皆が驚愕の眼差しでシャーリーンを見た。


「アポ取ってんの?」


「昨日のうちに」


 俺達はどうやら思い違いをしていたのかもしれない。彼女はスパイのプロで間違いない。俺達の方が一歩も二歩も遅れていて、もしかすると彼女は、もどかしさすら感じていたのだろう。


「いつだ?」


「明日の朝、先方の事務所に出向きます」


「わかった」


 もうすぐ夕方なので、俺達は一旦チェンナイの町に視察に行く事にした。大型の車両を預けられる駐車場にキャンピングカーを預け、俺達はチェンナイの町に繰り出す。食料を買いこんで町の情報誌や新聞を買い込み、オオモリが周りを見て言う。


「めっちゃ美味そうな匂いしません?」


「なら食っていくか」


「あ、それでは、カリム様の息のかかったレストランのチェーンがあります。そちらは地元の料理を出しますので、そちらに参りましょう」


「はは…凄いな」


「極力情報が漏れない場所がよろしいかと」


 シャーリーンがどこかに連絡をして俺達をその場所に連れて行く。待つことなく店に入り、インド料理を注文した。皆が町で買った情報誌や新聞を読み始め、それを見ていたクロサキが言う。


「なんでしょうね…これ」


「ああ」


「ですね」


 皆がそれぞれに新聞を見ているが、同じ記事を目にしているようだった。そこで料理を運んで来た店員に、シャーリーンが尋ねた。


「あの、この記事を知っていますか?」


「はい? ああ、それ」


「これはどういう事なんです?」


「なんか都市伝説みたいなものだと思うんですが、湖で人魚を見たとか言う人がいるんです。その人魚に人がさらわれたとか書いてありますよね?」


「本当なのでしょうか?」


「まさか! 人魚なんている訳ないじゃないですか!」


「ですよね。すみません」


 そしてクキが言う。


「都市伝説ねえ…」


「まあ記事も小さいですし、本当に都市伝説的なものかもしれませんけどね」


 だがそれをタケルが遮った。


「つうか食おうぜ! めっちゃいい匂いする小鉢がならんでるのを、ただ眺めているのかい?」


「そうだな。まずはいただこう」


 そして俺達はインド料理を食べはじめる。


「いい香りだ」


「インドって感じよね。美味しいわ」


 俺達はインド料理を堪能し店を出た。その後、俺達はキャンピングカーに戻りそれぞれが休み始める。だがクキとクロサキとアビゲイルが、まだ先ほどの人魚の記事について話をしていた。


「なんか信憑性があるんだよな」


「そうですよね。どの記事を合わせてみてもデマには見えない」


「気になりますね…」


 だがその話も終わり、俺達は一晩をキャンピングカーで過ごす。


 次の日の朝、キャンピングカーにはシャワーもついており、シャーリーンとミオがシャワーを浴びて準備を始める。俺はそのまま行こうと思っていたが、皆に進められてシャワーを浴びる事になった。


 シャワーを出ると、シャーリーンが俺にスーツを勧めて来る。


「すみませんが、これをお召しになっていただいてもよろしいですか?」


「いや。俺はいつものでいいが?」


 それには、シャーリーンじゃなくクロサキが答える。


「潜入するのに、シャーリーンさんの部下がル〇ヴィ〇ンのスーツを着ているのはあり得ません。TPOをわきまえた格好をするべきです」


「てぃーぴーおー?」


「時と所と場合をわきまえるという意味です」


 それを聞いてタケルが笑った。


「ヒカルは戦闘のTPOをわきまえてねえけどな。軍隊やゾンビと戦うのにル〇ヴィ〇ンだぞ。そりゃ言われてもピンと来ねえわな。だけどヒカル。流石に黒崎さんの言うとおりだ」


「わかった」


 俺はシャーリーンに薦められたスーツを来た。


「いまいちだ」


「すみません。ミスターヒカルに似合うスーツをもって来させたのですが、社員という事でそれほど高いものではないのです」


「いいんだ。とにかく怪しまれないようにすればいい」


「それでは、ミスターヒカルとミス美桜に眼鏡です。カメラで撮ると反射して目が隠れます」


「わかった」

「ええ」


「はい。では参りましょう」


 俺とシャーリーンとミオは、キャンピングカーを下りて歩きだす。するとファーマー社研究所が見えて来たので、入り口でシャーリーンが名乗った。門が開いて、俺達は普通にファーマー社の研究所に入り込むのだった。

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