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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第447話 アラブの石油王に接触

 ホテルを後にしてリムジンに乗り込んだ俺達は、マフィアに渡されたメディアの情報に従って、ある場所に来た。メディアにはプロテクトがかかっていたが、オオモリが解除して内容を解読する。


 到着したのは白い船が停泊している小さな港で、俺達がリムジンから降りると数名のサングラスをした男が近づいて来る。男達が左右に分かれると、その後ろから西洋系の美しい女が出て来た。


「こんにちは。シャーリーン・ロマノワと申します」


「名乗られたら名乗らないといけないか?」


「いえ。私は秘書ですので、私に名乗りは必要御座いません」


「これを」


 クキがマフィアから預かったメディアを渡すと、その隣に居た男がシャーリーンにノートパソコンを渡した。そのUSBメディアをパソコンにさして、シャーリーンがニッコリと笑う。


「確かに間違いありません」


「そうか」


「ではこちらへ」


 俺達は誘導されて、大きな白い船に乗せられた。特に身体検査される事も無く、サングラスの男達に囲まれて海に出ていく。


「どこに行くんだい?」


 男達は何も話さず、サングラスをしているから表情も見えない。だがシャーリーンがすぐに答えた。


「すみません。彼らに聞いてもお答えしません」


「すまない」


「ワー〇ド・ドバイです」


 するとミオが言う。


「うっそ! 行ってみたかった!」


 それを聞いたシャーリーンが優しそうな笑顔で答える。


「それは良かったです」


 直ぐに船が到着して、俺達は島に降ろされる。だがそこは雑木林で、女達がそこを見て話し出した。


「えっ? ここ?」


「雑木林を行くの?」


「建物とかないの?」


 シャーリーンはそれを聞いて笑いながら言う。


「こちらです」


 シャーリーンが行く先について行くと、そこにはバカでかい大豪邸が建っていた。


「うわあ…」

「ホテル?」

「じゃない?」


「違います。彼の家です」


「「「「「家!!」」」」


「もちろん別荘です」


「「「「「別荘…」」」」」


 声が揃う。


 玄関に行って、シャーリーンが上のカメラを見上げるとドアが開いた。中にも人がいて、俺達は誘導されるままに入っていく。さらに大きな扉があり、それを開けるとそこは広い部屋だった。入り口で男達が立ち止まり、シャーリーンだけが入っていく。そしてシャーリーンは振り向いて俺達に言った。


「どうぞ」


「ああ」


 その部屋に入ると、今度は下に続く階段が見えて来た。シャーリーンが降りていき、俺達も一緒に地下に降りる。するとそこはガラス張りの部屋で、外は海の底だった。


「えっ! 海の部屋?」


「だね。魚いるし」


 するとシャーリーンが言った。


「適当におかけになってお待ちください」


 俺達がソファーや椅子に座ると、シャーリーンがもう一つの扉を開けて出て行く。階段の上から女達がやってきて、飲み物やつまむ物を運んで来た。


「どうぞ」


 女達に進められて、その飲み物を飲んでいると扉が開いてシャーリーンが男と女を連れて来る。男は白装束で女が黒装束、二人ともとても顔立ちが整っていてゆったりした雰囲気だった。


「いらっしゃい」


 皆が立ち上がって礼をする。


「さすがは日本の方、礼儀正しい」


 クキが言う。


「ハンジから言われて来ました」


「こんにちは。私はカリム・アル・サラーフと申します」


「日本から来ました。九鬼修平ともうします」


「ミスター九鬼ようこそ。そしてこちらが妻のファティマ・アル・サラーフです」


「こんにちは。ファティマ・アル・サラーフです」


「ご丁寧にありがとうございます」


 クキの言葉に皆が頭を下げるので、俺も右に倣えで頭を下げる。


 するとカリムが俺に近づいて来て、手を取って言った。


「あなたが…救世主」


「救世主?」


「法王やドン・サルバトーレが言っておりました」


 するとファティマも言う。


「シャルロットも言っておりましたわ」


 どうやら、俺達が世話になって来た人達と繋がっているらしい。


「昨日はお楽しみだったようで」


 カリムからそう言われて、俺達は一瞬ドキッとする。


 クキが聞いた。


「なぜそれを?」


「あなた方が使ったショッピングモールも、レストランも、レンタルのリムジンも、ヘリコプターも、そしてホテルも全て私の所有です」


「なるほど…」


 これには流石のクキも度肝を抜かれたらしい。


「すみませんね。別にスパイのような事をしたわけでは無く、従業員からあなた達が立ち寄ったと聞いていただけです」


「わかりました」


 するとファティマの方が聞いて来た。


「なにか、お困りごとはありますか?」


 それを聞いてオオモリがいう。


「あ、あの。ドン・サルバトーレからお金をもらったのですが、余らせてしまって…。まさか処分する訳にもいかないですし」


「お金。なるほどお店でお使いになったようですね。ですが私達もお金は必要がない、どうしたものでしょう?」


 言われたカリムも困った顔をしている。


 まあ…これだけの財を成しているのだから必要はないだろう。


 それにクキが答える。


「出来れば、我々の活動の為に生かしたいのですが、クエートディナールではなく、米ドルの方が各地で使いやすい。換金できればと思うのですが、我々は公には動けないのです」


 するとカリムが答えた。


「わかりました。ではこちらで何とかいたしましょう。シャーリーン」


「はい」


 そうしてオオモリは、金の入ったアタッシュケースをシャーリーンに渡した。


「他には?」


「可能であれば。コンパクトに収納できるドローンが欲しいのです。組み立て式で、薬剤を散布できるような農業用のドローンが必要です。持ち運びができるようになっていれば尚ありがたい」


「ご用意いたしましょう。他には?」


「なんでもいいのですか?」


「はい。可能な限りではありますが」


「では。人数分の新しいパスポートと、大型ヘリコプターのシコルスキーS92は可能でしょうか?」


「可能です。他には?」


「ドバイの冷蔵倉庫に薬品を預けています。運搬する為の車とドライバーがいれば後はいりません」


「お安い御用です。シャーリーンいつまでに用意できる?」


「明日迄には」


「それでいかがでしょう?」


「素晴らしい。一週間はかかるかと思いました」


 だがカリムは笑って言う。


「もちろん今、聞いたらすぐには無理でした。ですが既にハンジからそのような連絡が入っております。直ぐに準備できるようにしておりましたから」


「すばらしいです」


「では。ここまでのあなた方の活躍をお聞きしたいのですが、お食事でも一緒にいかがですか? 五つ星のシェフを呼び寄せております」


「よろこんで」


 とんとん拍子に話が進んで行く。一体この夫婦は何者なのだろう? これほどの事が出来る人間が、なぜザ・ベールに与しているのか分からなかった。


 シャーリーンに案内されて、俺達が食堂に行くとスーツを着た男と女が数名いた。俺達の椅子を引き、俺達が座りやすいようにしてくれる。テーブルの向かいにカリムとファティマが座り、俺達はゆったりした椅子に座って彼らと向かい合った。


 俺がじっと見ていると、カリムが俺に言う。


「救世主様。なにかお尋ねしたい事でもございましたか?」


「悪いが、俺は言葉遣いがなっていない」


「かまいませんよ」


「あんたは何者なんだ? なんでそこまで俺達に良くしてくれる?」


「なんだ、そのような簡単なご質問でしたか」


「簡単だったか?」


「はい。私達は世界が壊れるのを良く思っておりません。ですが、いくら財力があろうと、壊れていく世界を救う事が出来ないのです。それほどまでに、あの会社は狂っている。それを止める事はザ・ベールやドン・サルバトーレやモナコの王族と言えども敵いません。そして私達にもそれを止める事は出来ない。おそらく世界の軍隊に任せていては、世界は破滅してしまうでしょう。ですが法王とサルバトーレは言ったのです。世界を救う事が出来る、神の子が現れたのだと。その神の御業を実際に目にし、間違いなくこの世界を救うでしょうと」


「それが俺」


「そう言う事です。そして一目見て分かりました。あなたはこの世界を救うでしょうね」


 まるで賢者のような言い草だが、恐らくは法王やサルバトーレを信じているのだろう。


 そしてクキが言った。


「人を大量に殺して財を生もうとしている、あの会社を滅ぼしてほしいと言う事ですか?」


「そうです。私達がこのような暮らしが出来ているのも、ドン・サルバトーレが商売をしていられるのも、世界に平和に暮らす人々がいるからです。もし世界の全てがゾンビになってしまったら、もう私達は誰にも必要とされないでしょう。ですから私達はあなた方に賭けたのです」


「わかりました」


 道理が通っている。確かにゾンビだらけの世界になってしまったら、日本のようになり、商売も何も成り立たなくなってしまう。俺達がサルバトーレからもらった金も、意味をなさなくなるし、新しい酒もスーツも作られる事が無くなる。


 世界の金持ちが躍起になって、ファーマー社を潰そうとしているのは、自分達の生計が成り立たなくなるからなのだ。それから俺達は、カリムとファティマに対してこれまでの経緯を話すのだった。

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