第445話 マフィアのドンからの詫び
ドン・サルバトーレは直ぐに、ローマに居る有能な子分を差し向けると言ってきた。なんでもプライベートジェットを借りて、急いで飛ぶように子分に指示をしたらしい。電話でしつこく詫びていたようで、子分には詫びの品物を持たせると言っていた。オオモリがサルバトーレに対し、殺し屋に出した分を巻き上げた金から返すと言ったがそれも断って来た。
次の日、ジョーイ引き渡しの為にタケルとクキと俺とミオの四人は、ドバイの空港まで来ていた。他のメンバーは、パーム・ジュメイラとかいう土地の高級ホテルに待機している。タケルをリムジンに待たせて、俺達三人がジョーイを連れてドバイ空港の入り口に入った。
するとそこには、これ以上ないくらい強面の男ら四人が待っていた。空港に居る乗客達も、見て見ぬふりをしているのが分かる。恐らく彼らと関わる事は、自分の人生の終わりだと思っているのだろう。その中でも一番恐ろしい、まるで野獣のような顔をしたやつが声をかけて来た。
「大変申し訳ございませんでした。スィニョーレ・ヒカル。ヒカル様のお手を患せるなど、あってはならない事でございます」
「大したことじゃない。コイツが裏切っただけだ」
男らがギロリとジョーイを睨むと、ジョーイの顔から一気に血の気が引いた。野獣の男がジョーイの腕を引っ張る。
「来い」
ジョーイは黙って従い、その野獣のような顔の男が脅す。
「下手な真似をしたら、いまここでバラす。ヒカル様にご迷惑をおかけしやがって、お前は誰を相手にしているのか分かってんだろうな?」
「そ、そんな凄い人だとは…」
「殺すぞ」
気を失いそうになりながらジョーイが俯く。そして野獣のような顔の男が言う。
「こちらが詫びです」
男らが両手にアタッシュケースを持っていて、合計六個のアタッシュケースが俺達の前に置かれた。
クキが言う。
「詫びなどいらないと言ったんだがな、ドン・サルバトーレのせいじゃない」
「受け取っていただかねば、我々のこめかみに穴が空きますよ」
「いただいておこう」
すると、ここまでずっと恐ろしい顔をしていた男らが、突然ニッコリ笑ってミオに握手を求めた。
「あなたが正義の女帝」
「い、いえ!」
「私達はあなたに会えるのを楽しみにしておりました。この世界の救世主と世界を変える正義の女帝にお会いできるなんて、私達は本当に幸運です。もしイタリアに来ることが御座いましたら、ぜひドンには私達を警護につけるように御指名ください。命に代えてもあなたを守り抜く所存でございます」
「あ、あは‥分かりました。次は旅行で来たいです」
「お待ちしております。では、こんなところでお時間を取らせるわけにはいきません。この者の事は私達にお任せいただいて、あなた方の使命を全うしてください。あと、こちら」
そう言って野獣は、俺にUSBメディアを渡して来た。
「ハンジ様からです。では」
そして強面の男達はジョーイを連れて、プライベートジェットの方へと向かって行った。俺達は六つのアタッシュケースを二つずつ持って、そのまま空港を出てリムジンに行く。
「おう。早かったな」
「早々に行ってしまった」
「まあ、あまり長居するといろいろ問題ありそうだしな。てかそのアタッシュケースは何だ?」
「サルバトーレからの詫びらしい」
「ふーん」
そして俺達は皆が待つ高級ホテルに向かう。そこでクキが俺に言った。
「念のため開けておこう。ホテルに持ち込み出来るか分からん」
「なるほどな」
一つ目のアタッシュケースを開ける。そして俺が思わず声を上げてしまう。
「おお!」
クキが苦笑いする。
「こりゃヒカルにだな。ロマネコンティが六本も入ってやがる」
そして次のアタッシュケースを開けると、びっしりと金が入っていた。
「こりゃまた大金だな。おっ、こりゃなんだ」
するとミオが言う。
「メッセージカードね。えーと、ははは…なるほど」
「なんて?」
「大変な仕事をした後なので、ドバイでめいっぱい遊んでって書いてある」
「遊べってか」
「次も開けてみましょうよ」
そして次のアタッシュケースを開けると、そこにはまた酒が入っていた。
「えーっと、ヘネシー・リシャールというお酒で高級なんだって」
「そいつもヒカルにだな」
結局六つのアタッシュケースのうち三つは酒で、後の二つが金で、もう一つにはびっしりとアクセサリーが詰められていた。
アクセサリーにもカードが入っている。
「ジュリオだわ。この度は誠にご迷惑をおかけしました。女神達に、僅かながらの彩を添えられるようにお送りしますだって」
運転しているタケルが笑う。
「スケコマシめ。ヒカルの女達に色目を使いやがって」
ミオが慌てて言う。
「ちょっ! 武! 何言ってんのよ!」
「あ、こりゃ失言」
俺達のリムジンがみんなの待つホテルに到着すると、ホテルの従業員がやって来た。タケルが車の鍵を預け、俺達はアタッシュケースを持ってみんなの所に戻るとミナミが俺達に言う。
「お帰りなさい」
「ただいま」
「そのアタッシュケースはもしかして、例の詫び?」
「そうらしい」
みんなの前で開けると、クロサキが言う。
「三つはヒカルさんね」
皆が頷いた。
「いや。皆で一緒に飲もう」
「みんな少しでいいと思いますよ。九鬼さんと飲んだらいかがです?」
「まあ、そうだな」
そしてオオモリがスマホを見ながら言う。
「うーん。二十クウェートディナール紙幣の札束が二ケースも…、確かに高価値の紙幣ですが使い勝手が…。だからドバイで遊ぶのに使えって言うんですね。お金には困ってないので、出来れば振り込みの方が良かったんですけどね」
「足がつかないようにしたんだろ」
「なるほどです」
だけどマナがニコニコして言う。
「でもいいじゃない! 今私達はドバイにいるのよ! ここにいる時しか出来ない事しましょうよ。ゾンビばっかり見てたから気がおかしくなりそう」
マナの言葉を受けて皆がクキを見る。するとクキが笑って答えた。
「いいんじゃないか? 殺し屋も居なくなった事だし、せっかくのサルバトーレの好意を無駄にするわけにもいかんだろ」
「「「「わーい」」」」
するとツバサが言う。
「ねえ。せっかくだからドレスアップして、高級料理店やアミューズメントに行きましょうよ! 黒崎さんもアビゲイル博士もいいでしょ?」
「いいのでしょうか?」
そこでクキが言う。
「博士。ずっと戦いばかりでは気が滅入るでしょう。あんな大変な思いをしたんですから。ゾンビ破壊薬も厳重な冷暖房完備の倉庫にしまいましたし、今までの逃亡生活を忘れて思い切り羽を伸ばしたらいいです」
するとクロサキがアビゲイルに言う。
「博士、よろしいのではないでしょうか? ゾンビと銃と核弾頭、こんな恐ろしい思いをしたのですから、このくらいの褒美があっても良いのかもしれません」
するとエイブラハムも言う。
「ええのう。とびっきりの服を着て、めちゃくちゃ高級な店でちやほやされてみたいわい!」
「おじいちゃん…」
そしてタケルが言う。
「んじゃ! 決まりだな! ブランドを買い回りしよう! ヒカル! お前の好きなル〇ヴィ〇ンもあちこちにあるぞ!」
「なに! なら直ぐに行こう」
「俺達のリムジンは置いて、運転手付きのリムジン借りようぜ。せっかくだからよ」
するとマナが言った。
「いいねいいね! めっちゃくちゃ豪遊しちゃおう!」
「「「「おー」」」」
みんな心の底から楽しんでいるようだ。そしてオオモリがすぐに車の手配をし、俺達はアタッシュケース二つを持って、ドレスアップする為に買い物に出かけるのだった。




