第443話 殺し屋組織の監視
ファーストフードの片隅で、ジョーイがスマートフォンをスピーカー通話状態にした。俺達はそれを囲んで、ジョーイが言っている事が真実かどうかを探る事にする。
「はい」
「ジョーイ。随分長い事、電話に出なかったな。仕事は上手く言ったんだろう?」
電話の向こうの男が言う。それに対しジョーイが答えた。
「ああ。問題ないですよ。無事に運びました」
「そうか。まだ仲介料が支払われてないようだが、どうしたんだい?」
「電源が切れたんですよ。スマートフォンの電源がようやく入ったのです」
「……ふむ。それで、仲介料はいつ払われる?」
ジョーイが一瞬困って俺達を見た。するとクキが自分のスマートフォンを表示させてジョーイに見せる。それを見てジョーイが答えた。
「すぐに手配します」
「早くしろ。裏切りかと思ったじゃねえか」
「まさか」
「こっちにはいつ帰る?」
「イスラエル周辺は非常に厳しかったんです。だから別ルートで戻る事になりそうです。そうですね、一週間もすれば戻れるかと思います」
「次の仕事の事もある。早く戻れよ」
「はい」
そして通話がきれた。そこでジョーイが言う。
「直ぐって言いましたから、これで振り込まなければ私は消されます」
クキがオオモリに言う。
「入金操作出来そうか?」
「こちらからの振り込みではなく、ジョーイの口座にいくらか戻します。金額を教えてください」
「十万ドルです」
するとクキが睨みつけて言った。
「嘘じゃないな?」
「ここにきて嘘なんかつきません」
「だそうだ」
「わかりました」
そしてオオモリが操作をする。
「口座に十万ドルとちょっと入れました」
少ししてから、ジョーイがスマホを取って言う。
「送金の操作をしても?」
「どうぞ」
ジョーイが送金の手配をすると、ホッと一息ついた。
「ふう…針のむしろでしたよ。裏切りだと思われかけました」
「俺達の事は、簡単に裏切ったのにな」
「すみません」
だが、すぐにオオモリが険しい顔で言う。
「スマホを貸してください」
「はい」
オオモリがスマートフォンをチェックして、小さなため息をついた。
「ふう。今の通信衛星じゃないです」
「なんだと?」
「恐らくは履歴で、この周辺のモバイル局舎に足跡がつきましたね」
クキがジョーイの胸ぐらをつかんだ。
「貴様…」
「わ、ワザとではありません! 衛星通信からだと銀行側のサーバーでシャットアウトされるんです。安全な回線経由じゃないと、送金の処理が出来ませんよ」
クキがオオモリを見る。
「そうなのか?」
「残念ながら、その人の言う通りですね」
「だが、これでコイツがドバイに居る事は組織にバレたという事か」
「そうなります」
「ここじゃ周りの目もある。一旦バスに戻った方が良いな」
皆が頷いてトレイを片付けマク〇ナ〇ドを出た。バスに乗り込んですぐに、殺し屋への依頼について話し合いが始まる。
クロサキが言う。
「危険ですね。まさか電源を切ったスマートフォンを、リモート操作して来るとは思いませんでした」
オオモリが頭を下げた。
「すみません。そこまでチェックしていませんでした」
「大森君のせいじゃないわ」
そこでクキが手を挙げる。
「いずれにせよだ。ジョーイのスマホは捨てた方が良いだろうな。電波が繋がる所に居れば、こちらの位置を掌握できるという事だ。いや、それよりもこいつをどうするかだ」
「裸に剥いて捨てよう」
「そうだな。ヒカルの言うとおりだ」
「ちょ、ちょっと待ってください! ドバイに裸で捨てられたりなんかしたら、警察に捕まってしまいますよ。そうしたら、私は組織に消されてしまう」
突如、俺の気配感知に不穏な気配が伝わって来る。俺は運転しているクキに行った。
「クキ! 何処か遮蔽物のある場所に車を入れろ」
俺の言葉にクキが瞬間で判断し、交差点を右に曲がった。
射線が途切れたか…。
「どうした? ヒカル?」
「監視されている」
「もう…か」
すると窓の外を見ていたミオが言った。
「九鬼さん。大きなショッピングモールがあります!」
「よし」
俺達の車は、ドバイのショッピングモールの立体駐車場に入り込んだ。そこに入るとタケルが口笛を吹いた。
「ひゅー。高級車だらけだぜヒカル」
「フェ〇ーリもラン〇ル〇ーニもあるな」
「ここ、ショッピングセンターの駐車場だぜ。やっぱドバイはすげえや」
駐車場にマイクロバスを停め、クキがジョーイに聞く。
「どういうことだ? 何でもう監視されてるんだ?」
ジョーイが答えた。
「監視? 何の事です?」
「既にこちらの所在がバレてるようだぞ」
「なぜそんな事が分かるんですか?」
「分かるんだよ! お前…こうなる事を分かっててやったな?」
「か、監視などされていないでしょう? 何かの間違いだと思いますよ」
だが俺が首を振って言う。
「なら監視している奴を殺してくる。問題ないな」
「こ、殺すって、何処に居るか分かるんですか?」
「ああ。監視者を殺したら、お前がどうなるか楽しみだ」
俺がバスを降りようとすると、ジョーイが慌てて言う。
「ちょ、ちょっと! 監視なんて嘘でしょう? そんな事が分かるわけがない!」
「いや。遠距離から狙われた」
「遠距離…勘違いではありませんか?」
「悪いが、俺の気配感知はお前の認識を超えている」
「気配感知って何です?」
「とにかく監視者を片付けて来る」
「わかりました! まってください! ちょっと話をしましょう!」
するとクキが拳銃を抜いて、ジョーイの眉間に突き付けた。
「お前の口車に乗った俺達の失態だ。やはりイスラエルに置いて来るべきだった」
「まって、殺さないで!」
俺は出ていくのをやめて、ジョーイからスマートフォンを取り上げた。
「これは捨てないでいてやろう。俺が預かる」
「ど、どうするつもりです?」
「丁度、この街を見物してみたいと思っていたんだ。タケル! 俺が散歩している間に、代わりの車を調達しろ」
すると代わりにオオモリが言った。
「なら買いましょう。幹線道路に高級車ディーラーがいくつも並んでました。ドバイではやらなければならない事もあります。郷に入っては郷に従えという言葉もありますので、それなりの物を用意しておきますよ。盗んだ車だと何かと都合が悪いですから」
「頼んだぞ」
「合流は、ヒカルさんの位置を確認してこちらからします」
「よし」
そして俺がジョーイに言った。
「服とサングラスをよこせ」
「えっ」
「早くしろ」
するとクキとタケルがジョーイの服を脱がせ始める。
「ちょ、ちょっと!」
俺は自分のスーツを脱いで、ジョーイの服を着始めた。かなりきつめだがパンパンになりながらも着る事が出来た。ちょっと動けばビリっとイキそうだが、特に問題は無い。ジョーイは下着とパンツ姿になって、床に転がされた。
パソコンを触りながらオオモリが言う。
「スマホで決済ができるようになっています。ドバイを散歩するなら、お金いっぱいいりそうですからね。いくら使っても全く問題ないですよ。ヒカルさんが使い方分からないと思いますので、使う時になったらスマートフォンに顔を見せて、ヘイオオモリ! って言ってください。そうすればリモートで全て対応します」
「わかった。じゃあ行って来る」
俺が出て行こうとすると、ジョーイが大声を出した。
「まってください! やめてください!」
その言葉を無視し、俺はジョーイのスマートフォンを持って駐車場を出た。一区画ほど走っていくと、どうやら監視者が俺の位置を確認したらしい。
「よし」
俺はあえてゆっくりと歩き始める。周りを見渡し先にある一番高いビルを目指す事にするのだった。




