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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第442話 辿り着いたドバイのファーストフード

 アラブ首長国連邦に来るまでのサウジアラビアの道には、何カ所かの検問所があり暴徒が紛れ込んでこないかのチェックを始めているようだった。だが危険な街から逃げて来た医療関係者だと言うと、身体検査をされつつも速やかに検問所を抜ける事が出来た。どうやら俺達だけではなく、今まで逃げてきた人も全てチェックされていたらしい。


 その事でオオモリが言った。


「暴動を調べるという事になっていますが、ちらほらとゾンビである情報が漏れ始めているようです。そこで各国は半信半疑になりながらも、凶暴性がありそうな人や発熱している人、体調を崩している人を検査し隔離しているようです」


「感染者が流れてくるのを阻止してるという訳か」


「結果的にそうなってるみたいです」


「デマと片付けないだけでも、良しとするしかないな」


「そう思います」


 そしてクキが言う。


「水際対策をしているのは、日本周辺国だけじゃ無くなったという事か」


 クロサキが答える。


「地続きの近隣国家に出た事で、既にデマで片付けられない状況になっているのかもしれません」


「対岸の火事では済まなくなったという事だな」


 それにオオモリが言った。


「流石にベルリンやローマ、イスラエルがやられたとSNSにも氾濫していますからね。ヒカルさんが衛星を破壊したのと、僕のAIウイルスの影響で情報操作できなくなったのが功を奏したと思います」


「世界が真実を知り始めた…という事か。今更だがな」


「未だに僕らが起こした国連の事件は、ニュースにもなっていますしネット上では拡散し続けています。あと僕らが流したファーマー社の情報も、既に消す事は出来なくなってきています。アビゲイル博士の演説や法王の演説も、真実であると認識されつつあるようです。世界各地では、ファーマー社に対するデモやバッシングが始まっています」


 マナが言う。


「凄いわね。今までゾンビはデマと片付けられたり、情報そのものが無かったことにされてきたのに、情報操作の為の嘘のファクトチェックをすり抜けるようになったなんて」


「情報操作なんて僕のAIちゃん達がさせませんよ」


「キモッ」


「えっ!」


 オオモリが傷ついている。


 そしてこれまで検問の度にジョーイの拘束を解いていたが、むしろジョーイは息を潜めてマイクロバスの後ろに隠れていた。殺し屋として捕まったり指名手配されたりすると、組織から消されるという話は本当のようだ。国境も同じように通り抜ける事が出来たので、道を走りながらまたジョーイを縛る。


 そこでクロサキがホッと息をついて言う。


「しかしファーマー社の段ボールを積んでいた事で、医療関係者と認識されたのは皮肉な物ですね」


 ミオがそれに答える。


「憎たらしいけど、そうよね」


「段ボールの薬品が、よく除菌薬としてパス出来ましたよね?」


 するとアビゲイルが笑っていう。


「除菌剤に似せて作ってありますし、検問所などにある簡易な薬品や試験紙では何の反応も出ません。むしろただのアルコール水だと思ったかもしれませんね。感染症などが流行る地域ですから、除菌薬を持っているのはおかしなことではありません」


「素晴らしいです。アビゲイル博士はここまで見込んでこれを作ったのですか?」


「偽装は必ず必要になると思いましたから。あと、本当に除菌薬としても使えますよ」


「そうなんですね…凄いです」


 皆が感心している。


「昔ならこんな薬は作れなかった。私もレベルが上がったのかしら?」


 それには俺が答える。


「作っている時は、レベル二だった」


「なるほどです」


 するとミオが言う。


「作ってる時は? てことは今は?」


「その後もレベルが上がっているようだ」


「寝ている翼と愛菜が光っているのを見たけど、あれはレベルが上がったの?」


 それにタケルも言う。


「そういえば、アビゲイル博士と、エイブラハムの爺さんは二度ほど光ってたな」


 クキが俺に聞いて来た。


「ヒカルよ、どういうことだ? なぜ非戦闘職の人間のレベルが上がったんだ? 移動中は何もしていなかったように思うが?」


「ゾンビ新薬でゾンビが死ぬと、何故か経験値が入るようだ」


 それを聞いてクキが言う。


「銃とは違うのかね?」


「パーティーで言うところの、後衛職が魔法を行使しているのに似ているかもしれん」


「魔法ねえ…。確かに魔法のような効果ではあるが」


「もしかするとだが、アビゲイルはその薬の調合に魔法を行使したのかもしれない」


 そう言うとアビゲイルだけではなく、皆がざわついた。タケルが聞いて来る。


「待てよヒカル。魔法は子供にしか発現しないんじゃねえのか?」


「そうだと思っていたが、アビゲイルが魔法を使ったと仮定しないと辻褄が合わん」


「そうなのか…」


「アビゲイルとエイブラハム、ミオ、ツバサ、マナ、オオモリがレベルアップしているようだ」


「えっ? 僕もですか!」


「そうだ」


「や、やった」


「何もしていない時に上がるのは、今も中東でゾンビが死に続けているという証拠だ」


 するとタケルが羨ましそうに言う。


「なんだよ。なんで俺や九鬼さんが上がらねえんだ?」


「タケルのレベルが上がらないのは、レベルが高いからだ。レベルは上げれば上げるほど上がりづらくなると言ったろ?」


「まあな。ヒカルがレベル千を超えたってのは、マジであり得ねえことなんだろうな」


「前の世界では俺一人だ」


「すげえよ。レベル千なんてとんでもねえ」


「タケルがレベルアップするなら、恐らく試験体をやらないと上がらない」


「なるほどねえ。まあ遭遇したらやってみっか」


「だな」


 そして、それから四時間ほど走り俺達はドバイに到着する。今までの砂漠地帯が嘘のような、超高層ビルが立ち並ぶ近代的な光景が目に飛び込んで来た。それを見てミオが嬉しそうに言う。


「ドバイ…だって。来ちゃった」


「凄いわねえ」


「ほんと、一生に一度は来てみたいって思ってた」


 女達が楽しそうにしている。そこでクキが言う。


「水を差すようで悪いが、そろそろジョーイの事も含めて話をしないといけない。殺し屋に仕事を頼むかどうかをな。もしかしたらみんなの中に、やってる事がファーマー社と変わらないなんて思うやつもいるんじゃないか?」


 だがあっさりミオが答える。


「九鬼さん。全然です。手段なんか選びませんし、もしそれで粛清されるならそれでいい」


 ミナミも頷いて言う。


「そうです。私が刀を振る回数が減ります。あんなに大好きだった日本刀が、もう実用品になりすぎちゃってロマンを感じないわ」


 ツバサも深く頷いて言う。


「誰かにやってもらいたい。ゾンビは良いけど、人に手を下すのはちょっとね」


 マナが目をつぶって大きく頷いた。


「うんうん。ほんとそれ」


 それを聞いてタケルが言う。


「じゃ、いいんじゃね? まあ黒崎さんが嫌じゃ無ければ」


「聞かなかったことにします」


 するとオオモリが言う。


「じゃあひとまず、この人のスマホのバッテリーをチャージしますか?」


「そうしよう」


 オオモリがチャージしてる間に、タケルが外を見て言う。


「おっおい! ドバイにもマク〇ナルドがあるぜ!」


「えー、ドバイにまで来て食べたくないよ」


「おりゃあ食いてえ!」


 すると意外な事にアビゲイルが言う。


「あ、あの…私も食べたいです」


 そうだ。そう言えばエイブラハムが言っていた。アビゲイルが子供の頃に良く一緒に行ったと。それを思い出したので俺も皆に言う。


「俺も食いたいな。あそこにはコーラもあるしな」


 俺が言うと女達が目を合わせて言う。


「ヒカルが言うなら仕方ないわね」


 タケルが唇を尖らせて言う。


「おいおい。随分な差じゃねえかよ」


「ヒカルと武はちがうのよ」


「へいへい」


 するとオオモリが言う。


「マク〇ナルド行くなら、コンセント借りましょうよ。そこでスマホ充電しましょ」


 するとクキが言った。


「お前の拘束を解いてやる」


「助かります! もう体中が痛くて仕方ありません」


 クキがジョーイの拘束を解いて、駐車場に停めたマイクロバスから店内に入る。俺達は席を三つ確保し、ミオとツバサとマナがそれぞれの食べたいものを聞いてカウンターに行った。オオモリがジョーイのスマートフォンをコンセントに繋いで、俺とクキとタケルがジョーイを囲むように座る。


「わたしまで良かったんですか?」


「食わねえでくたばられても困るしな」


「ありがとうございます」


 そしてテーブルにハンバーガーとポテトが並べられ、それを皆で食べ始める。


 エイブラハムが、食べるアビゲイルを見て目を細めている。


「お爺さん。子供の頃よく連れて来てくれたわね」


「お前の親には怒られたがのう。食いたいと言うものは食わせてやりたいじゃないか」


「また、こうしてファーストフードに一緒に来られるなんて」


「夢のようじゃな…」


 二人を見て、俺達は温かい気持ちになる。殺伐としたゾンビ駆除から一転、この平和な時間が俺達の心を救うようだ。だがそんな気分に水を差すように、ジョーイの携帯が突然鳴り出した。


「わ! なんで鳴るんです! 電源は切ってあるはずなのに」


 するとジョーイが言う。


「リモートですね」


「遠隔で電源が入れられるんですか?」


「そうですね。どうしましょう?」


「何処からだ?」


「組織ですね」


「出ないとどうなる?」


「連絡を長い事返さないと、裏切りだと判断されるかと思います」


「スピーカーで出ろ」


「はい」


 そしてジョーイはスマホを取って、スピーカーモードで通話を繋げたのだった。

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