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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第439話 正義の女帝の宣戦布告

 ヨルダンのアンマンにも大きな被害が出ていたので、早速ビルに登って新型ゾンビ破壊薬を撒く作業を繰り返した。アビゲイル曰く、この土地にもファーマー社の薬が入り込んでいたらしいが、市民達の中には拒絶した人も多かったらしい。


 俺達はビルの屋上から、アンマンの町を見下ろして話をしていた。


「だから、辛うじて生存者がいるという事か?」


 俺が聞くと、アビゲイルが答える。


「国民の六割は、ファーマー社の薬を取り込んでしまっているという情報でした。日本やイスラエルは百パーセントに近かったので、その辺りに差が出ているようです」 


「にしても壊滅に近い」


「日本が陸続きであったなら、韓国や中国にも大きな被害が出ていたと思います」


 それを聞いてミオが言う。


「結局は政府が受け入れたかどうかなのよね」


「そうです…」


 俺達が話をしている時に、縛られているジョーイが言う。


「すみませんが、もう解いていただくわけにはいきませんかね?」


 クキが睨む。


「何故だ?」


「出来心だったんですよ。もういいでしょう?」


 そのあまりの軽薄さに、俺達は相手にするのを止めていた。コイツは恐らく自分のやったことが分からないのだろう。


「黙れ」


「日本人はとても優しいと聞いています」


「どういうことだ?」


「アメリカや近隣国家に良いようにされても、文句も言わずに応える民族ですよね?」


 するとみんなが静かになった。クキがつかつかと近づいて、グっとジョーイを踏みつけながら言う。


「貴様。逆撫でするなと言っただろうが」


「い、いや。争いを好まず、何も言わない国民だと…」


 だが、そこでクロサキが言った。


「確かに日本人には、そう言う一面もあったと思います。そのせいで他国や外国企業につけ入れられ、結果あのような惨劇が起きてしまった。日本人が、戦わな過ぎたと言うのは間違っていない。ですが、それは昔の話です。壊滅的な地獄を見て、皆が目を覚ましたのです。だから勝手な事を言わないでください。九鬼さんじゃなくても、私が殺しますよ」


 普段こんなことを言わないクロサキが、冷たい目をしてジョーイを見下ろしている。


 そしてミオも言った。


「あなたの考え方では人類が滅ぶわ。このチームにあなたを許す人は一人もいないと断言する。全員があなたの命を握っている」


「そ、そこのパソコンオタクもか?」


「僕ですか? 別にあなたが死んでもなんとも思いませんけど? まあ自分でやるのは嫌なので、そこは武さんか九鬼さんに任せようと思ってますけど」


「おいおい。なんで自分でやらねえんだよ」


「だってキモいです。他に理由は無いです」


「あ、ある意味、大森が一番怖え気もすんぜ」


「言えてるかも」


 だがジョーイが言った。


「どうやら私は焼きが回ったようです」


「どういう事かしら?」


「こんな状況だというのに、ふわふわしてまるで恐怖を感じていないような人達だ。私はてっきり平和ボケしているものだと思っていた。あまりのギャップに、あなた方を舐めきっていたようです」


「今やっている事が、どれほど危険な事かなんて皆が骨の髄まで知っているわ」


 そんな話をしていた時だった。


 プルルルルル! プルルルルル!


 ジョーイの携帯が鳴った。


 オオモリがパソコンを見ながら言う。


「ハッキングで逆探知しましたが不明ですね。この誤魔化し方は明らかにおかしいです」


 それを聞いてジョーイが言う。


「まさか…」


「なんだ? ファーマー社の代表電話でまともに取り扱われなったから、折り返し来るとは思っていなかったか?」


「そうですね…」


 ピッ!


 あっさりとミオがスピーカーにして繋いだ。


「どちら様?」


「恐れ入りますが、イスタンブール支社にお電話を下さった方ですか?」


 男の声だった。


「そうです。あなたは?」


「ファーマー社のコールセンターのものです」


 ミオがオオモリを見るが、オオモリは否定するように首を振る。


「そう。わざわざ折り返していただいてすみませんね」


「いえいえ。当社はカスタマーを大切にする企業でございますので」


「カスタマーを大事に? そうですか。では、いい情報があるのだけどお聞きになる?」


「なんです?」


「御社がゾンビを生み出す薬を売っているという、確たる証拠を掴んだのよ」


「御冗談を。ゾンビなど架空の化物です」


「なら、どうしてゾンビの事について連絡した電話に折り返して来るのです? 普通なら、悪ふざけか冷やかしと思って電話なんかしないでしょう? 天下のファーマー社が、世界中から連絡が来るその一本に折り返ししてくるはずがないじゃない」 


「……」


「切るわ。話したい事があるならまたかけて来て」


「まってください。お客様はザ・ベールという名前を聞いた事はございますか?」


「さあて、どうだったかしら?」


「全く困った組織なのですよ。ありもしない事実をでっちあげて、当社に妨害工作をしてくるのです。もしかしたらそちらの組織の方なのかと思いましてね。それでしたら、国際手配をして捕まえてもらわないといけないものですから」


「捕まえてみると良いわ」


「あなた。正義の女帝と言われて、いい気になっている人ですね? 声紋照合が出来ました」


「おっそい! 今ごろ? 我々の組織では、一秒もかかるかしら?」


「…面白い」


「ジュネーブの研究所では残念でした。間抜けなあなた達の事だから、さぞ慌てふためいた事でしょうね。あんなデカ物をいくら作ったところで、私達には通用しないというのに」


「貴様…待っていろ。必ず捕まえてやるぞ」


「どうぞやれるものならやってみてください。穴だらけで無能なあなた方に、私が捕まえられるとは思えませんけど。せいぜい努力なさってはいかが?」


「女狐…」


「あら? そろそろ忙しいので切りますわね。急用でも出来たら、また電話して来たらどうかしら? まあこれからは火消しで大変になると思いますけどね。あなた方の一人でも、生き延びる未来があればいいわね」


「この!」


 プープープープー。


 ミオが電話を切ると、仲間達が一斉に拍手をした。


 クキが言う。


「凄いものだな…本物じゃないか」


「えっ?」


「マジで鳥肌立ったぜ! 美桜!」


「何が?」


「凄すぎます。絶対的な自信と華麗な話術! 相手は相当焦っていたようですね」


「黒崎さんまで?」


 そして俺がミオに言う。


「よくやったミオ。これで奴らは血眼になって俺達を探すだろう。ゴーストのような俺達を見つけられればの話だがな」


「ひ、ヒカル…」


 そしてオオモリがジョーイに言う。


「これで分かりましたか? あなたは誰を敵にしたか分かってないのです。時に真の実力者というものは、こんな優しい女の子だったりするんですよ。殺し屋なんて小さな世界に閉じこもっているから見えないのです。残念ながら、あなたのようなクズにサルバトーレの金はもったいない。僕らが有効に使ってあげますので、心置きなく」


「ま、まて! どういうことだ!」


「あなたの口座の残金はもうすぐゼロって事ですよ。あしからず」


「う、嘘だ…嘘! 死に物狂いで人を殺して稼いで来たんだぞ! 危ない橋を渡りまくって、稼いだ金なんだぞ!」


「うーん。僕らを危険に晒した慰謝料です。足りないですけど」


「ううう……」


 意気消沈してしまったジョーイを俺が担ぎ、俺達は次のビルを目指して動き出すのだった。ファーマー社を挑発した事で、必ず奴らは動き始めるだろう。だがそれに対して、むしろ皆が軽く笑みを漏らしている。いよいよ敵との本格的な戦いが始まった事に、確かな手ごたえでも感じているかのように。

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