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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第419話 マフィアが人を助ける理由

 ドン・サルバトーレはなかなか本題には入らず、ずっと国連本部の話を我が事のように話している。特にミオの言葉が気に入ったらしく、ここに本人がいるのに楽しそうに語っていた。


 そして俺もこの場所が気に入っている。何故ならば、さっきから次々と美味い酒が出てくるからだ。食い物もさることながら、飲み干すそばから次々と注いでくれる。


 ドン・サルバトーレが豪快に笑う。


「いい飲みっぷりだなあ兄ちゃん。うちの酒樽を全部空にしていけ!」


 それを聞いたクキが苦笑いしていう。


「ドン・サルバトーレ。それは冗談にならないぞ、ヒカルは全部飲んじまう」


「いいじゃねえか! なあ! こんな優男が、いい漢ぷりだ!」


 そしてもう一人、苦笑いをしているのが息子のジュリオだ。


「親父がこんなに上機嫌なのは珍しいぜ。いつもはここに皺を寄せて静かに言うだけだ」


 そう言って眉間を指さしている。


「バカ野郎。こんなすげえ奴らは、これまでに会った事がねえ。俺は気に入ったね! 特にシニョリーナ・ミオ! こんな可愛い顔して世界にタンカをきりやがった! しかも実際に会ってみれば、心根の良いお嬢さんだと来たもんだ。いいか! ロッソファミリーはこの人の味方だ!」


 ミオがニッコリ笑ってそれに答える。


「ドン・サルバトーレ。マフィアだなんて言うから、どんな怖い人かと思ってたけど、なんて陽気な人でしょう。それにヒカルの事を凄く良く言ってくださって、私達は本当にうれしいのです」


「あの怪物を見ただろ! 俺達は直に見てねえが、あれをやったつうんだからな! そしてそんな男はきっと病的な殺し屋かと思っていたが、ただの酒好きじゃねえか! ははは、飲め! 飲め!」


 またいい酒が追加されてきた。俺はすぐさまそのグラスを空にしていく。


「底なしかよ! あははははは!」


 そこでクロサキが聞いた。


「ちょっとお尋ねしても?」


「ああ、何でも聞いてくれ!」


「なぜ、ザ・ベールの活動を支援しているのです?」


 すると笑い顔が急に真剣になった。その変わりようはちょっと驚く。


「そりゃ共通の敵だからよ」


「ファーマー社がですか?」


「その名を聞くだけで酒がまずくなる。だがその通りだ、ファーマー社…あれはイケねえなあ。人間の大事なものをぜーんぶ、ぶっ壊すじゃねえか。そりゃ俺達もいろんな事をして来たがな、カタギに手を出したことは一回も無いぜ。俺たちゃオリーブやブドウや酒の輸出をしているだけで、あんな得体のしれねえ薬物を売ってねえ。もちろん俺たちのビジネスもシロってわけじゃねえ、法外な取引をふっかけたり、違法ルートで輸入禁止のものを売りさばいたりもする」


 すると慌ててジュリオが言う。


「お、親父! ちょっと飲み過ぎてねえか?」


「はん! 俺が今話している相手は、国際指名手配を受けようかという連中だ。俺らのちっぽけな金儲けを咎めるよりも、人類の命が大事って人らだぜ」


「だけどよう…」


 そこでタケルが言った。


「ジュリオさんよ。親父さんの言うとおりだ。俺たちゃそんな小さいことは気にしちゃいねえ」


「ち、小さい事って」


「マジでよ。マフィア同士の殺し合いだってあるだろうが、正直なところそんな小さい争いはどうでもいいんだよ。敵は巨大組織や軍隊や国家だからな、それが証拠にそこの警察官がなんも言ってねえし」


 するとジュリオがびっくりする。


「サツがいんのか?」


「私ですね」


「あんた。サツだったのかよ!」


「まあ日本の秘密警察のような部署に居ましたが、イタリアは管轄外。しかも日本に迷惑をかけている訳じゃありませんから、全くの無関係ですよ」


「なんか…スッゴイな」


「くっあーはっはっはっはっ! ジュリオ! てめえはもっと、世界に目を向けなきゃならんなあ。この世界は白か黒だけじゃねえってこった!」


「分かったよ親父」


 そしてクロサキが続けた。


「共通の敵という理由だけで支援を?」


「まあ…それだけじゃねえな。日本の警察の人」


「では?」


「まあ、こりゃ息子のジュリオにも言ってねえ話だがな。俺が駆け出しのころ、敵対組織に命を取られそうな時に匿ってくれたお人がいるんだ。その人の言葉に感銘を受けてよ。ま、ひん曲がって理解したかもしれねえが、金のない人を苦しめるなって事だ。無実の人を食い物にしてはいけないって事。そこでいろいろ話を聞いて、俺はそれからずっとそれを守っている。それが仁義ってもんだし、そもそも無実の人間を苦しめるなんざあ、人としてやっちゃあいけねえことだ」


「なるほどです…。それをファーマー社は合法でやってしまっていると言う事ですね?」


「その通りよ。そんな事がまかり通っていいはずがねえだろ? 金儲けの為に無実の人の命が大量に奪われるなんて、俺達よりどれだけ悪い奴かって事だ。そんな仁義に反したことをしている奴らが、世界を殺そうとしてるって言うんだ。こんな時ぐらい、俺達の出番じゃねえだろうか?」


「わかりました。ドン・サルバトーレ、素敵なお話を頂きありがとうございます」


「ははは。日本の警察官ってのは物分かりが良いねえ! 飲んでくれ!」


 そんな話をしていると唐突にノックして人が入って来た。


「馬鹿野郎! てめえ! 気分よく飲んでいる時に!」


 だが入って来たサングラスの男が言う。


「ドン。重要な事です。テレビをお付けしても?」


「なんだ?」


 そいつがリモコンを取ってテレビをつける。するとテレビには、あちこちから火が上がっている都市が映し出される。


「ど、どういうことだ?」


「ローマで暴動が起きたようです」


「なんだと!」


 するとそれを聞いていた、オオモリがスッと立った。


「テレビにパソコンを繋いでもいいですか?」


「やってくれ!」


 映し出されたのは、一般市民が撮影したネットの映像やテレビの映像が並んだものだった。


「ゾンビです」


「なんだと…」


 俺達の酒は一瞬で冷め、テレビに映し出された逃げ惑うイタリア市民に釘付けになる。するとドン・サルバトーレは立ち上がって言った。


「こ、こうしちゃいれねえ! おい! ファミリーに招集をかけろ! ローマに行かなきゃならねえ!」


「どうしたのです?」


「さっきの話だよ! 若い頃の俺を助けてくれたお人があそこにいらっしゃるんだ!」


「助けてくれた人?」


 すると画面に、安否の確認を急ぐという音声が入り。そこに老人達の顔が映し出された。


「このお方だ」


 それを見てエイブラハムが言う。


「ローマ法王…」


 ドン・サルバトーレは、違う顔になって部下に指示を飛ばしている。そこで俺がドン・サルバトーレに言った。


「俺を今すぐにここに連れていけ。すぐにだ」


「なっ…」


 忙しく動き始めたマフィア達が固まった。そしてドン・サルバトーレが言う。


「あ、あんたなら助けられるのか?」


「まだ生きているのならな」


「た、頼む! どうかあのお方を助けてくれ!」


 クキがドン・サルバトーレに言う。


「悪いが俺達から取り上げた兵器を返してくれ」


「わかった! おい! ジュリオ! すぐに手配しろ!」


「あ、ああ!」


 ロッソファミリー達が慌ただしく動き始め、ニ十分後には俺達の装備が全て戻る。すると俺とツバサの耳にヘリコプターの音が聞こえて来た。


「サルバトーレ。ここからローマまではどのくらいだ?」


「い、一時間だ! ヘリコプターなら一時間で行く!」


「なら急ぐように伝えてくれ」


「わかった」


 凄いもので、十機ほどのヘリコプターがやって来た。俺達とロッソファミリーはヘリコプターに乗り込み、ゾンビパンデミックを起こしたローマへと急行するのだった。

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