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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第415話 運命共同体にする

 オオモリがパソコンを操作すると目の前のモニターに、仮面をかぶって演説しているミオが映し出される。それは国連本部での映像だった。


「ちょ、ちょっと。大森君!」


「あ、大丈夫ですよ。もう、ミオさんに話してもらう事は無いです」


「そうじゃなくて…」


 すると突然モニターに映ったミオの背景が変わる。夜の国連本部だったバックが、どこかの部屋の中に代わったのだ。俺達がそれを見ていると、そこに映った仮面のミオが勝手に動き出した。


「なに? 私、あんな動きして無かったわよ」


「これは全てAIによるものですよ」


 それを見ていたエイブラハムが言う。


「なんじゃと? こんな本物そっくりなのに?」


「僕が開発したAIは、その辺の代物とは訳が違います」


「ほほぉぅ…」


「話も出来ます。ちょっとまってください」


 オオモリがパソコンを操作する。するとモニターに映った仮面のミオが言う。


「あえて言おう! カスであると!」


「えっ!えっ!えっ!えっ!」


 ミオが目を丸くして焦っている。


「どうです?」


「ちょ、ちょっと! 私そんな事言わないし! 私の声だし! 雰囲気も私じゃないよ!」


「そうです。世界を救う正義の女帝です」


「ま、まってまって! なんで私をそんなことに!」


「今、世界で一番注目を浴びている人間だからです」


「うそでしょ…」


 するとクロサキがポツリとつぶやいた。


「これも…犯罪だわ。なりすまし…」


 それを無視しつつ、マナがアビゲイルに言った。


「あのー、世界の首脳に向けての告発文を書いてもらえますか?」


「わ、わかりました」


 オオモリがパソコンをアビゲイルに渡した。アビゲイルが文章を書き始めたところで、ハンジがオオモリに聞く。


「ミスター大森。これから、どうするつもりです?」


「ハンジさん。ショーはあれで終わりではないですよ。これからが本番です」


「それは分かりますが…」


 俺達がしばらく待っていると、アビゲイルが言った。


「まずは…このような形で」


 その文章をオオモリとマナが見て頷き、オオモリがパソコンを操作する。


 すると…。


 画面に映ったミオが、身振り手振りを交えながらアビゲイルの告発文を話し始めたのだった。


「凄い…」


「リアルだわ」


「や、やめて…って」


 だが、だれもミオの言葉を聞かなかった。


「じゃ、これを世界に流します」


 パチン。


 オオモリがパソコンを弾くと、画面の偽ミオが告発文を読み始めた。その内容はこれまでのゾンビ因子による経緯と、ファーマー社が行った実験の地域などだった。


 ハンジが聞く。


「ミスター大森。これは、どこに流れてるんです?」


「だから世界です」


「世界中に?」


「はい、世界の百九十六か国です」


 流石にハンジだけじゃなく、ザ・ベールの構成員たちもざわついた。


「こんな情報はすぐに遮断されるんじゃないですか?」


「いえ。既に僕のAIは世界中に散らばっています。切ってもネットを辿ってどこかで出ます。どうしても映像を切断したいのならば、世界の人口分のテレビやインターネット、それを見れるメディアの電源をぬくしかありません」


 そう説明をしつつも、またオオモリがパソコンを操作し始める。


「こ、今度は何を?」


「世界中のネットに、これを否定的にするテキストや動画、デマだとするテキストや動画が出たら速攻削除します。その裏を突くような情報開示サイトも全てです」


「そ、そんな事が出来るのか!」


「はい」


「だが、その中にも本当の情報があったら?」


「僕のAIが正確に判定したうえで、そう言った情報は削除しません。ですが…」


「ですが?」


「超高性能ファクトチェックが働きますので、これに限らず他のデマ情報や、間違った情報は全て同時に消されてしまいます」


「「「「「……」」」」」


「これで世界は真実を知る事になるでしょう」


 ハンジやクワタが自分の体をさすっている。オオモリをバケモノでも見るような目つきで見ていた。


「お、恐ろしい…」

「…なんでこんな人が…」


 するとクキが笑って言った。


「鳥肌が立つだろう? 大森は確かに凄いが、俺達の全員が何かしらの能力を持っているんだよ」


「どうしてそんな…」


 だが、それには他でもないアビゲイルが答えてくれた。


「私は見ました。ヒカルさんと彼らの遺伝子情報を、それこそ分子レベルでです。その結果は、今の言葉を裏付けるような内容でした。彼らの遺伝子は既に我々のものとは違うのです」


「我々と違う?」


「はい。言わば超越した人類だと言えるでしょう」


「そんな…」


 しかしそれを聞いたエイブラハムが言う。


「とはいえ、彼らはいい奴らじゃよ。それに、その能力が無ければ破滅した日本からこんなところまでたどり着けんよ。まあ言い換えてしまえば、ファーマー社の恐ろしい計画の裏で生まれた、これまた副産物的な人間じゃろうな。もちろんファーマー社は彼らの能力を想定していないのじゃ」


 部屋の中を沈黙が漂う。モニターでは偽ミオが告発文を読み続けている。


 そしてハンジが静かに聞いた。


「それはあなた方だけですか?」


 クキが首を横に振る。


「他にも?」


「日本の生き残りは、ほとんどがヒカルの恩恵を受けている。それも幼い子供に如実にその効果は現れているようだ。詳しい事は研究中だが、人知を超えた力を発現させ始めている」


 そう言うと、アビゲイルがそれに喰いついた。


「そ、それは聞いておりませんでした! 日本のほとんどがあなた方のような身体になっていると?」


「そのとおりですよ博士」


「何人くらい生き残っているのです?」


「俺達が日本を離れるまでに、一千万はいたと思う」


 アビゲイルの目がキラキラと輝いて来る。


「奇跡の国…まさに奇跡だわ! 間違いなく世界を救う鍵を握っているわ」


「そうですか?」


「ええ」


 そんな話をしている時、ミナミが俺に耳打ちした。


「あれって、日本人にしか使えない訳じゃないよね?」


「そうだ。だが、ゾンビ因子の影響を受けていない人に使うのはどうかと思うが?」


「いいえ、違うわヒカル。ここにいる皆は、この秘密を知ったのだから強制よ。運命共同体だわ」


「強制って…」


 だがそれを耳にしたアビゲイルが嬉しそうに言う。


「ま、まってまって! 私もそうなれるの?」


「そうだ。施術をすればそうなる」


「やってほしい! 今すぐ!」


 だがザ・ベールの人間にはこの話が浸透している訳でなく、ハンジやクワタ以外は顔を見合わせて焦っている。


 するとそれを見たハンジが笑い始めた。


「そうか、そうですね…。我々は世界の秘密も、そして不思議な真理も全てを知ってしまった。諸君! ここにいたのは不運か、それとも幸運か! いずれにせよ、既に運命共同体ということだよ!」


 クワタが言う。


「ハンジさん。ちょっと怖いですよ…。でも言っている事は分かります。俺も日本人、日本から命がけでやって来た彼らと運命共同体になるってのも悪くない。みんな! 残念ながら腹をくくってもらう!」


「ちょ、ちょっと!」


 構成員には慌てている奴もいるが、ハンジが俺に向かって言った。


「ミスターヒカル! やってくれ!」


「わかった」


 シャアアアアアアン!


 部屋が光で真っ白になる。それが収まると皆が眩しそうに目をつぶっていた。


「終わったぞ」


「えっ?」

「はっ?」

「うそ?」


 そう。俺は全員に、ゾンビ因子除去施術と改変を行ってしまったのだ。だが先ほどと何も変わった様子はなく、皆がただ唖然としている。そこでアビゲイルが言う。


「えっと、変わった? これで?」


「そうだ。あんたらは元々ゾンビ因子を有していないから、変わったように感じていないだけだ」


「なんか現実味がないわ…」


 だがハンジが言う。


「ミスターヒカル。これをこの館内にいる全員に施せるか?」


「もうやった」


「建物全部?」


「そうだ」


 それを聞いてハンジが言った。


「これで…狙われるのは彼らや日本人達だけではないな! 今日この場所にいた全員がその対象となったという事だ。みんな! おめでとう! 今日という日はザ・ベールにとっての記念日になるだろう」


 そしてクワタが聞いて来る。


「これで特殊な力が身につくんですね!」


「いやそれは違う。ゾンビを大量に倒すか、軍隊と戦い続けるかしかない」


「えっ?」


「体が変わったからと言って、レベルが上がらなければ何も変わらない。ただゾンビに変わらない体になったと言うだけだ。死ぬときは死ぬし、しいて言えば病気にかからないくらいだろう」


「そうなんだ…」


 それを聞いてザ・ベールの人間達は少し残念そうな顔をした。だがそれにクキが答える。


「世界のあちこちで、ゾンビパンデミックが始まろうとしているんだ。あんたらの活躍する場所は腐るほどあるさ」


「分かりました…覚悟という事はそう言う事ですね」


「そう言う事だ。付け加えて言うと、あの映像に映っていた試験体ってやつな。あれ一匹で相当なレベルアップになるぞ」


「あれを…倒す?」


「そうだ。ただし近代兵器を使うとレベルの上りは著しく遅くなる。だから皆、それぞれの得物を持っているって訳だ。銃じゃあまり意味がないからな」


「あなた方はどうやって?」


「愚問だよハンジさん。日本には一億からのゾンビがいたんだ。そいつらを掃除しているうちに日本人はレベルが上がったのさ。だからあんたらは、世界に噴き出るこれからのゾンビを掃除してくれ。そうすれば、あんたらも俺達と同じような能力を得るだろうよ」


 再びザ・ベールが沈黙したが、クワタが声を上げた。


「って事だな! ザ・ベールのみんな! 俺達はぬるま湯につかっていたという事だよ! 一億のゾンビ…それらを前にして生き延びて来た人らが言うんだ。もし力をつけたかったら俺達も戦おう!」


「桑田君の言うとおりだな。我々ザ・ベールはこれから真の戦いをする事になるだろう。今日ここにいたみんなは、ザ・ベールの精鋭部隊となる。我々の組織に属する時に、その覚悟は決まっていたはずだ。どうだ?」


「ああ、そのとおりです!」

「そう! こんな非道な事を許してはおけない!」

「俺達は戦います!」


 そしてハンジが俺に向く。


「ミスターヒカル。あなたがやってくれた事を、いつか必ず良かったと思えるようにします」


「いばらの道だ」


「覚悟の上です」


 そうしているうちに、偽ミオの演説が終わった。既にオオモリがファクトチェックの指示をAIに出し、真実を隠そうと金を使って奔走する奴らを封じ込めたらしい。


 するとそこに構成員が入って来た。


「お客様です」


「おいでなすった。では皆さん! 上の応接室に来ていただけますか?」


 そう言ってハンジは、俺達を連れて上の階へと歩いて行くのだった。

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