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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第414話 モナコのアジトへ向かう

 偽装工作で国連本部を脱出した俺達は、救急車両を乗り捨てて一般車両に乗り換えていた。ザ・ベールのジュネーブ支部は既に撤収しており、スイスを出てフランス国内を走っている。


 ハンジが言う。


「今ごろファーマー社は、空き家に突入している頃でしょう」


 それに対して、俺が気になった事を聞いた。


「マークされたザ・ベールの仲間はどうなった?」


「ミスターヒカルはお優しい。大丈夫ですよ、既に全員がマークを外れて逃亡しています」


「それなら良い」


 クキがハンジに聞く。


「それで何処に逃げるんだ?」


「モナコ公国に向かっています。アビゲイル博士はファーマー社だけでは無く、国家警察からも国際指名手配されるでしょう。モナコに潜伏している構成員に接触して博士を逃がします」


「段取りが良いな。よほどの協力者がいるようだ」


「そうですね。その協力者に会いに行くためにも、まずは急ぎモナコに行く訳です」


「捜査の手が及ばない所へ…か」


「はい。ここから六時間ほどかかりますが、それまでは細心の注意が必要です」


「了解だ」


 俺達は二台のワゴン車に分かれて走っており、俺が乗っている車にはクキ、ミオ、オオモリ、アビゲイル、エイブラハム、ハンジが乗っていた。運転席にいるのはザ・ベールの構成員。もう一台には、クロサキ、タケル、ミナミ、ツバサ、マナそしてザ・ベールのクワタが乗っている。そちらもザ・ベールの構成員が運転していた。


 夜の高速道路は比較的空いているが、警察に呼び止められる事の無いように法定速度で走っているそうだ。運転している構成員はどちらもフランス人らしく、呼び止められたとしてもそれほど問題にはならないと言う。さらにクキが言うには、日本の高速道路よりもスピードを出して良いようだ。


 そんな中…俺の隣りでは…ミオが顔を覆って丸まっており、なぜかアビゲイルが必死にミオを慰めているという、不思議な光景が繰り広げられていた。


「大丈夫でしたよ! ミス美桜。おかしい所は一つも無かったです!」


「でも、世界に向けてあんなこと言っちゃったぁぁ!」


「仮面で隠れてますし、変な事は言ってませんから!」


「なんかカッコつけすぎだったぁ! あの時は興奮してたからぁ!」


「いえ。素晴らしい言葉でした! ミス美桜の演説は世界に届きます!」


「それが…恥ずかしい…」


 さっきからこの調子である。もともとアビゲイルは大きな記者会見や、世界に放映された事が何度もあるらしく、別にそれほど気にしていないらしい。それに対してミオは元々苦手な事らしく、人前で話す事にも抵抗があるらしい。それで、こんなことになっているのである。


 すると前に座っているオオモリが言う。


「そんな事言わないで見てくださいよ! 美桜さん! カッコイイっすよ! 美桜さんの演説! ネットでめっちゃ話題になってて、めちゃくちゃバズってます! コメントもたくさんあって、正義の女帝あらわる! 世界の闇を知る女! 陰の実力者降臨! どうです! 凄すぎです!」


「いやあああああ! やめてぇ」


 するとアビゲイルが言う。


「ミスターヒカル! なにこの人! ちょっと止めさせてください!」


「だが、インターネットに出ている事実じゃないのか?」


「そう言う問題ではなくてですね!」


 俺がオオモリに言った。


「オオモリ、もっと他に情報があるだろう?」


「いや…それがですね、世界全てのランキングにおいて美桜さんがトップです」


「いやあああああああ!」


「ミスターヒカル! この人をどうにかしてください!」


 だが、それにハンジが言う。


「いや。これでいいのです。象徴的な存在であるからこそ、インターネットでは際立つ。今はミオさんのこの演説が先行していますが、その分博士のコメントも見てもらえるわけですから。それらが拡散されればされるほど、インターネットから消える事は無くなります。これからずっとこれがインターネットに残り、そして人々に浸透していく訳です」


「いやあああああああ! やめてぇぇぇぇ!」


 アビゲイルは今度はハンジに言う。


「ハンジ! だから! 今はそうではなくて!」


「いずれにせよ大成功です。今、世界がこれに注目している。じきに風化してしまうかもしれませんが、今は最大限に利用するしかないです」


 それを聞いたクキが言う。


「美桜。大丈夫だ。仮面をつけているのだから誰も分からないし、そもそもが美桜は美桜として入国しているわけではない。中国の大手企業に勤めるリファ・シェンミンとして入国しているんだ。万が一何かあったとしても、日本人が生きているとは誰も思っていないだろ?」


 それを聞いてミオが言う。


「そうか…そうだわ。私じゃない」


 そしてアビゲイルが言う。


「それに、ミス美桜はザ・ベールの人間ではないわ。日本の普通の女の子、誰も同一人物だとは思わないわ」


「そ、そうね。そうだわ…アビゲイルありがとう」


 ミオも少し落ち着いたらしい。そしてオオモリが言う。


「でも、既にファーマー社や利権関係者が火消しに走ってますよ」


 クキが言う。


「奴らも必死だ。こんなことが明るみに出たら、会社の存続どころか国際犯罪を起こすテロリスト認定されるからな。なんとしてもデマだとしたり、世論を操って偽の情報を流していくだろう。残念だが、また世界は本当の情報を見失うだろうな…」


 だがオオモリがにやりと笑って言う。


「いいえ。そうはさせませんよ」


「どういうことだ?」


「既に僕のAIウイルスが世界各地にまわっています」


「それでどうなる?」


「まあ…そこで、ハンジさんに相談なんですけど」


「なんです?」


「モナコに付いたらノートパソコンを用意してほしいんです」


「わかりました。スペックは?」


「24コア32スレッド仕様のCPU、メモリ256GB、GPUメモリ32GB、バッテリーも強化してください。そして替えのバッテリーも三個、そのスペックなら何でも」


「用意させましょう」


「あと六時間後でいけますか?」


「オッケー」


 オオモリには何か考えがあるらしい。そうして六時間後俺達は無事にモナコへと入国した。すぐにザ・ベールのアジトへ通されたが、またも豪邸であった。車を降りて皆が集まる。


「すっごい豪邸…」


「むしろこの方が怪しまれないのです。まずは中へ」


 ハンジに言われて中に入ると、豪華な調度品で飾られた室内だった。そのまま地下に通されたが、ジュネーブと同じようなモニター室になっていた。そこでは国連本部で起きた事件の映像や、各国の反応、そしてデータが所狭しと映し出されている。


 ハンジが入っていくと、すぐに構成員が箱を持って来た。


「ミスター大森。要望通りのスペックのパソコンです」


「すっご! 五時間くらいでもう用意できたんですか!」


「ザ・ベールの組織力です」


 オオモリは床に座ってすぐに箱を開け始めた。俺達はモニターに映し出される映像を見ている。


 マナが言った。


「かなりの効果だわ。既にファーマー社や国家が動いているみたいだけど…。大森君! 本当に大丈夫なんでしょうね?」


「はい。今準備しています」


「早くして!」


「い、今、いろいろとインストール中でお待ちください!」


「もう!」


 なぜかオオモリはマナにめちゃくちゃこき使われている。いつの間にか師匠と弟子のような関係になっているのだが、本来の能力からすると逆な気もする。だがオオモリもすんなりとそれを受け入れているようだ。


「できました!」


 するとハンジが言う。


「専用ネットワークにつなぎますか?」


「いいえ。衛星を使います」


「わかりました」


 マナが衛星回線につないで、オオモリがパソコンを操作し始めるのだった。

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