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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第392話 ファーマ―社の監視を引き寄せる

 クロサキ達と別れた俺はルクセンブルクの街中を歩き、最初に見つけた服屋の店頭から帽子を拝借する。それを深々とかぶって腰を折り曲げ、爺さんのふりをしてとぼとぼ歩いた。気配感知にも反応があり、ようやく敵が餌に食いついてくれたようだ。


 監視者の気配は一つや二つではなく、あちこちに散らばっている。


 それにしても、この町は美しかった。同じような背丈の建物が立ち並び、綺麗な石畳の通りを人々が行きかっている。犬を散歩する老人、道の真ん中で立ち話をする若い男女、足早に歩いて行く女性。きっとそれぞれに人生があり今日の暮らしがあるのだろう。


 自衛隊が読み取ったデータからすれば、この人達すら7G回線でファーマー社の意のままに操られる未来が待っている。このような美しい街並みを、奴らに支配させるわけにはいかない。


「派手に騒ぎを起こして、破壊したくは無いな…」


 彼らの今の暮らしを壊すわけにはいかない。ベルリンのような惨状を起こして、平和な日常を壊させるわけにはいかなかった。


 ん?


 そんな事を考えて歩いている時、俺は足を止めてしまう。


「こんなところにも…あるのか…」


 それはル〇ヴィ〇ンだった。マークだけはしっかり覚えており、ショーウインドウにはバッグや靴が並んで、奥には服も売っているようだ。俺はそちらに一歩足を進めかけて止まる。


 まて…今の俺は爺さんだ。よれよれの服を着た爺さんが、この店に入ったら変装がばれてしまうかもしれない。


 グッと堪えて、俺はその店の前を立ち去り西に向かった。しばらく歩いていると、今度は背の高いビルが見えて来る。東京にあるような高層ビルではないが、ここが都会である事は分かる。


「なんだ?」


 今度は道路の上を列車が走って来た。俺はそれを眺め、意味もなく走り去った方向に向かって歩き始める。細心の注意を払い、あくまでも爺さんとして遅い歩をすすめていく。乳母車を押す若い夫婦とすれ違った時にも、赤ん坊にニッコリ笑いかけて爺さんのふりをする。


「見られてるな」


 俺のほうが監視者たちの監視をしながらも、空から見られている気配を感じとった。伸びでもする様な仕草で空を見るとドローンが飛んでいて、それが俺を監視しているようだった。この服装は日本刀を隠せないので、今は持ってきていない。何かで、あれを撃ち落とす必要がある。


「さて」


 俺は腰をトントンと叩くふりをして、スッと道横の縁石に腰かける。植え込みにあった小石を拾って、ドローン迄の距離を計算した。


「八十メートルと言ったところか…」


 ビシッ!


 全く体を動かさずに俺の手から射出された小石は、上空のドローンを破壊する。石が命中したドローンは、ひらひらとどこかに落ちて行った。俯瞰して監視され続けると、知らずに仲間が近寄ったりした時に、危険に晒してしまう恐れがある。出来るだけすぐに落としてしまおう。


「さて」


 目の前に橋が見えているので、俺はその脇にあった階段を下りて河川敷に向かった。橋の下には遊歩道があり、俺はその道を進んでいく。すると監視者の気配が再び俺を追い始めた。とにかく俺は人のいない方を選んで、奴らをおびき寄せる事にする。


 雑木林と岩場に差し掛かり俺は足を止めた。そこにベンチがあったので、俺は座って膝に肘をつけ手を組みながら地面を見た。気配感知は常に発動させており、河川敷に降りてきた人数を確認する。


 六人。


 その人数はたったの六人だった。


 六人でいったい何をするつもりなのか…、いや今の俺は老人だから六人で十分と言う事か。少し遅れて再び空にドローンが現れたので、地面の小石を拾ってすぐに撃ち落とす。


 ビッ!


 空からの監視は要注意だ。今度は六人の気配が狭まってきて、俺からも見える位置までやって来た。俺が俯いたままにしていると、二つの足音がカツカツと近づいて来て視界に二組の靴が移る。


 そいつらはドイツ語で話しかけて来た。俺も多少は理解出来る。


「こんにちは。今日はいい天気ですねえ」


 だが俺は無視をして下を向いている。


「ははは。ずいぶん遠くまでお散歩されているようで」


 俺は顔を上げる事なく聞いている。


「おや? 無視ですか。ドクター・エイブラハム・スミス」


 そろそろ限界だろう。


 俺は帽子を取って顔を見せて言う。


「人違いだ」


「な!」

「!」


 男らは俺を見て驚いている。どうやら本当に気が付かずに、俺を追いかけて来たらしい。


「誰だお前は!」


「誰だも何も、散歩しているただの老人だ」


「お前のようなジジイがいるか!」


「で、何の用だ?」


 一人の男がスマートフォンを取り出して、どこかに連絡をしている。俺が立ち上がって立ち去ろうとすると、もう一人の男が声をかけて来た。


「まて! 動くな」


「知らん」


 立ち去ろうとする俺の肩に手をかけて来たが、スッとそれを躱した。


「えっ」


 躱された事に驚いているのを尻目に、俺はそのまま立ち去る。すると周辺に散らばっていた、他の男達が駆けつけて来て道を塞ぐ。だが、俺はそれも瞬間的にすり抜けた。


「!」

「な!」

「どうなって…」


 電話をしていた奴が、走ってきて全員に声をかける。


「捕まえろ! そいつを!」


 六人中、ゾンビ化は一人。あとの五人は訓練を受けた軍人だ。


「止まれ! 止まらんと撃つぞ!」


 …金剛…。


 俺が無視して歩いて行くと、指示をする男が言った。


「足を狙え!」


 パンパンパンパンパン!


 おいおい。爺さんのズボンが破けるだろ。


 とりあえず俺は撃たれたふりをして(現に撃たれているが)、フラフラと雑木林に突っこむ。


「やったぞ! 捕まえろ!」


 ここならドローンで撮影されていたとしても分からない。ざざざざ! と二人が飛び込んでくるも、俺は木の上に足でぶら下がって瞬間的に二人を釣り上げた。殺して木の上に絡みつけるように放置する。


「ど、どこにいった?」

「いません!」


 次に来た二人が、後ろの奴に報告している。


「奥だ! 追え!」


「「は!」」


 次の瞬間、俺はそいつらも釣り上げて殺した。最後の二人が飛び込んで来たが、俺はそいつらには手を出さなかった。


「ど、どっちに行った?」


「わかりません」


「とにかく追え!」

 

 そいつらが走り出したので、俺は木から木へと飛び移り後を追いかけていくのだった。

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