表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

389/661

第389話 わが青春の混浴温泉計画

 AIハッキングの技術により、オオモリが贅沢な部屋を数日確保してくれた。そこで隊長であるクキが、次の日は休息を取った方が良いという判断を下す。ここまでの人目をしのびながらの旅路と、ファーマ―社支部での極限の戦いで、気づかぬうちに神経が消耗しているというのだ。


 そこでデータを一通り見た女らが、寝るために部屋に戻り、男だけになったところでクキが言った。


「大将は、休みなんざ要らねえんだろうけどな」


「クキも必要ないだろう?」


「まあ、今まで極限の修羅場を超えて来たからな。タケと南あたりも、まだなんとかなりそうだが、休めるうちに休んでおいた方が良いという判断だ。休むのも仕事ということだよ」


 するとタケルが言う。


「マジで? 俺は、まだ行けるぜ?」


 だが、そこでオオモリが言う。


「僕は…すいません。結構、限界かもです」


「はあっ? 軟弱野郎が! 鍛え方がなってねえんじゃねえか?」


「すいません…」


 だがクキが言う。


「おいタケよ。そいつはお前とは頭の出来が違うんだ。オーバーヒートを起こしたら、使い物にならなくなるかもしれんのだぞ。いざという時に集中力を欠いたら命取りになる」


「へいへい、九鬼隊長に従いますよ」


 それに俺も言う。


「タケルの気持ちは分かる。日本に置いて来たユミの事を思うと、居てもたってもいられないんだろう? はやる気持ちは分かるが、皆の命がかかっているんだ。ここは黙ってクキに従おう」


「まあ…ヒカルに言われちゃ仕方ねえな。図星だしよ」


「とにかく、みんな気晴らしをしておけ」


 なるほど…。ならば。


「じゃあ、タケルとクキは俺の酒にとことん付き合え」


 だがタケルが言う。


「いやいや、ヒカルにがっつり付き合ってたら俺も九鬼さんも死んじまうぜ。おまえ何本飲んでも、ほとんど酔わねえじゃねえか」


 クキがそれを聞いて笑った。


「大将は全部が規格外すぎるからな。だがせっかくいい酒が飲めるんだ。俺達も少しは付き合ってやろうじゃないか、まあ…ほどほどにな」


「んじゃ、飲みますかぁ」


 やはり高級な酒は美味かった。前世ではこんな洗練された酒を飲んだことがないし、仲間と飲む酒は格別だった。タケルもクキも、こっちの世界の人間の中では酒が強いそうだが、俺に付き合う事は出来ないらしい。それでも、一緒に酒を酌み交わしてくれることが嬉しかった。


 そして俺達が酒盛りをしている間も、オオモリは隣でパチパチとパソコンを叩いていた。酒を飲んで俺達が談笑していると、オオモリが突然声を上げる。


「おお!!」


 俺達が驚いてそちらを振り向き、クキがオオモリに聞いた。


「どうした? ファーマ―社の機密でも暴いたか?」


「いえ。全然違います…」


 タケルが訝しそうな顔でオオモリに言い寄る。


「ん? お前…なんか、悪い顔してやがるな?」


 するとオオモリがにやりと笑って、本当に悪い顔をした。


「ふふふ。武さん…わかります?」


「さしずめ、なーんか思いついたような顔してるぞ。なんだ? 金か? ハッキングでやらかしたか?」


「そんな事はしてないです。でも…それ以上のデータかも」


 オオモリが俺達のテーブルに、パソコンを持って来て見せた。そこには何らかの施設が映し出されている。それに対してタケルが尋ねた。


「なんだこりゃ? 銀行か?」


「違いますよ。もっと凄い場所です」


「なんだよ」


「これは…温泉です」


「「「はあ?」」」


 俺達は何の事か分からず、半分呆れたような声を出した。タケルが食ってかかるように言う。


「それのどこが凄い情報なんだよ! アホか!」


「驚きますよ」


「なんでだよ」


 すると、オオモリは本当に悪い顔をして言い放った。


「この温泉施設は、カイザー・フリードリッヒ・テルメって言うんですけど、なんと全てが完全混浴らしいですよ」


 タケルの目の色と口調が変わった。


「…ほう。大森君。詳しく聞かせてくれたまえ」

 

「えっと、十六歳以上しか入れないらしいですが、廊下を歩く時以外は…」


「歩く時以外は?」


「全裸なんです」


「どう言う事かね?」


「なんと入浴やプールやサウナ、全てにおいて水着やタオルは禁止だそうです」


「女も男もかね?」


「その通りです。誰も水着やタオルをつけちゃいけないらしいです」


「すばらしい! なんと言う素晴らしい情報だ! 大森君!」


 俺とクキは黙ってそのやり取りを聞いていた。だがオオモリとタケルは、くるりと俺達に顔を向けて言う。


「やっぱり休息は必要ですよねー! 特に温泉なんかいいですね」

「俺も大森君の言うとおりだと思うね。こういう時は温泉だ」


 クキが真剣な顔で言う。


「お前ら行きたいのか?」


 二人がコクコクと頭を縦に振った。クキも酔っぱらっているからか、からかい半分なのか笑いながら言う。


「なるほどな。どうせ誰も知らない土地だしな…ヨーロッパ女…いや失敬。裸の付き合いというのも悪くないかもしれんな」


 オオモリが言う。


「隊長ー! 流石です! それでは作戦を実行するでありますか!」


「いいんじゃないか?」


 するとタケルが俺に言う。


「もちろんヒカルも行くよな!」


 こいつらと一緒に温泉に入るのは面白そうだ。断る理由が無かった。


「温泉なら悪くない。体を温めにいこう」


 何か、男四人で悪い事をしている気分になって来る。


「決まったんならさっさと寝ようぜ!」


 クキも俺に言う。


「大将。酒はまた今度にしよう」


「わかった」


 そして…。次の日の朝になる。


 俺達が温泉に行く準備をしていると、コンコン! とドアがノックされた。オオモリが出ていくと、マナが部屋に入って来る。


「おはよう」


「お、おお。早いな愛菜。今日は休みだぞ」


「てか…どこ行くの? 準備なんかしちゃって」


 タケルが目配せをして、俺に”言うな!” と主張してくるので黙った。だが残念なことに、オオモリが白状してしまう。


「温泉に行こうと思ってました!」


「えっ! 自分達だけで?」


「まあ…そうです。女性陣は、みんなお疲れだと思いまして」


「ずるいわ! 私達も行く! てかみんなも行くって言うと思う!」


「えっ! そ、それは…」


「ちょっと言って来る!」


「ちょっ! ちょっと! 愛菜さん?」


 マナは出て行ってしまった。


「わわっ! ど、どうしましょう!」


 だがタケルが、一段と悪ーい顔をしてオオモリに言った。


「大森よ。おまえの憧れの愛菜さんが行こうって言ってくれたんだぜ? 皆まで言わなくてもわかるよな?」


「…なるほど…」


 するとクキがタケルに言う。


「お前…由美さんというものがありながら…」


「それとこれは別の話だよ。隊長」


「まあ武士の情け、墓場まで持って行ってやるか」


「ありがたきお言葉」


 待てよ…。と言う事は…彼女らも一緒に…。全裸。


 俺はうっかり想像してしまう。しかし直ぐに女達が荷物を持ってやって来てしまった。


 ツバサが言う。


「さあ! 行くよ! 何処? どこに行くの?」


 クロサキまでが準備をしてやってきた。


「温泉なんて、贅沢ですね! 早く入りたいです!」


 タケルがそれに答えた。


「そうだな、休息も仕事のうちだぜ! 行こう行こう!」


 結局全員で、カイザー・フリードリッヒ・テルメにいく事になった。女達は浮かれてワイワイとはしゃいでいた。それに対して、男達はただ黙って歩いて行く。


「うわあ! 気分いい!」

「風光明媚な街で温泉かあ!」

「やっぱり休息と言ったら温泉よねえ」

「それそれ!」

「安らぎますよねー」


 女達の楽しむ声を聞いていると、だいぶ後ろめたくなってきた。そこで俺がタケルに言う。


「タケル、中止したほうが良くないだろうか?」


「ん? 何言ってんだ? ヒカル。彼女らは自分から行くって言っているんだぜ。彼女らの権利を阻止してはいけないなあ」


 そしてオオモリも言う。


「そうですよ。ヒカルさん。九鬼隊長もおっしゃったじゃないですか! 休息も仕事のうちだって!」


 そんな話をしていると、ミオが俺に聞いて来る。


「なーに話してるの?」


「いや…本当に温泉に入るのかなと思ってな」


「そりゃ入るわよ。何言ってるの?」


「…なんでもない…」


 男も女も皆が楽しそうに、カイザー・フリードリッヒ・テルメに歩いて行く。そしてオオモリが指をさして言った。


「ここです! ここが! カイザー・フリードリッヒ・テルメです!」


「よし! みんな! 入ろうぜ!」


 タケルの掛け声に、女達がはしゃぐ。


「「「「「わーい!」」」」」


 そして。


 クキが受付に行き、施設の係員に聞く。ここを越えてしまえば、風呂では水着やタオルは禁止…。俺はミオ、ミナミ、ツバサ、マナ、クロサキの顔をそれぞれ見て、だんだん申し訳なくなってきた。彼女らは何も知らず入り、そして全裸に…。


「九人だが入れるか?」


 すると、係員がクキに答える。


「大変申し訳ございません。毎週火曜日はレディースデーになっておりまして、男性は入場禁止となっております」


「「「「へっ?」」」」


「恐れ入りますが女性だけ…」


 するとミオが言った。


「ごめんなさいねー。じゃあ私達だけ入って来るから、ヒカルたちはどこか探してみてね。一時間後にこの前で待ち合わせしましょう」


 オオモリとタケルがガクッと肩を落として言う。


「「はふー」」


 女達が行ってしまった。するとタケルが言う。


「大森ぃ! おまえちゃんと情報見たのかよ!」


「す、すいませぇぇぇぇん!」


 それを見てクキがめちゃくちゃ大笑いする。


「くあーっ、ははははははは! ひーひー! こんなこったろうと思ったよ!」


 俺達の作戦は初めて失敗に終わったのだった。だが…これで良かったのかもしれない。変な遺恨が残ってしまったら、この後の冒険が苦しくなったかもしれないからだ。俺は残念に思いつつも、ホッと胸をなでおろすのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ