第386話 焼き尽くすレーザーの恐怖
俺達はファーマ―社フランクフルト研究所の深部で、更に厳重に管理をされている部屋を見つけた。鍵は開けられないので、俺が剣技でドアを斬り中に入りこむ。だが部屋に入ってすぐ、おかしな罠が仕掛けられているのを見つけた。
「不用意に近づかない方がいいだろうな」
クキに言われるまでもなく、皆が足を止めて警戒している。部屋中に青い光の線が張り巡らせられているのだ。
それを見てオオモリが言う。
「まあ…セオリー通りなら…」
ポケットから紙の金を取り出した。光の線にその札を近づけると、ボッ! と一瞬にして消える。
「レーザーですね。このまま行けばバラバラです」
タケルが言った。
「ここに、よほど知られたくないものが隠されてるんだろうよ」
「だろうな」
「でもどうします? 近づけませんよ」
そして俺がオオモリに聞く。
「解除できないのか?」
「うーん。解除する為の端末は多分この奥でしょうね。恐らく時間でセットして、出たらレーザーが張り巡らせられるようになっているんだと思います」
「そこまで分かっているのにか?」
「さすがにここからでは、どうにもなりません」
それを聞いてクキが言う。
「そもそも、そんなに簡単に解除できるような作りにはなっていないだろう。このレーザーを掻い潜る事は出来んだろうし、今までの部屋のどこかに、解除の仕組みがあったのかもしれん」
「うへえ。流石に戻ってくまなく探すなんて無理だぜ」
「諦めるしかないのかしら」
「ここまで来てこれは悔しいわ」
「敵も、はいそうですかと情報を渡すことは無いか」
それはともかく、レーザーとはそれほど危険な代物らしい。しかしミオが俺に聞いて来る。
「ヒカルはどう?」
「結界。金剛」
俺は身体強化を施して、無造作にレーザーとやらに手を突っ込んだ。
タケルが慌てて言う。
「おい! ヒカル!」
だがレーザーは俺の手を焼く事は無かった。完全に結界と金剛で守る事が出来るようで、全く熱くもない。クキが聞いて来る。
「大将…大丈夫なのか?」
「なんともないが…行けないな」
「ん?」
「ル〇ヴィ〇ンのスーツが焼けるだろ」
「脱いだらどうだ?」
「…だな」
俺が服を脱ぎだすと、ミオが俺から受け取って畳み始める。俺は靴を脱ぎズボンを脱いでワイシャツと下着も渡す。最後に残ったパンツに手をかけた時、ミオが慌てて言う。
「ちょっ! ちょっ! ちょっ! ちょっ! まってまって! パンツも脱ぐの?」
「…確かにな。替えは車に積んであるからいいか」
「そう。買えるし!」
「よし」
「これを持って行ってください」
オオモリが俺になにか小さなものを渡してくる。
「これは?」
「USBの通信デバイスです。奥の端末に挿す所があればいいのですが」
「わかった」
俺はそれを握りしめ、そのまま無造作にレーザーの中に進入した。だが進入した事で、レーザーがより複雑な編み目になりほとんど隙間など無くなった。
「だ、大丈夫か?」
「問題ない」
俺が一歩一歩先を進むたびに、レーザーは変化をし進入されないように必死なようだ。必死と言っても機械がする事だから、気持ちなど無いのかもしれないが。
そして俺は十メートルあるレーザー地帯を抜けた。
「抜けたぞ」
「凄すぎんだろ! ヒカル! レーザーが効かねえって…ありかよ!」
「ありだ」
するとオオモリが言う。
「その辺りに端末が無いですか?」
「ある」
「どこかに、挿し込み口は無いですかね?」
俺が探すも見当たらなかった。だが光るパネルが見える。
「光るパネルがあるぞ!」
「なるほど…」
「どうする?」
「一度戻ってもらえますか?」
「ああ」
俺は走ってレーザー地帯を戻る。すると皆が声をあげた。
「きゃっ!」
「うわ!」
「ははっ」
「ちらっ!」
女達が顔を赤らめている。クキが半笑いで言った。
「おいおい。レディーの前だぞ」
「ん?」
下を見ると俺のパンツは跡形もなくなっていた。どうやらレーザーできれいさっぱり焼けたらしい。
「すまん」
手で股間を隠した。そしてオオモリが言う。
「隠れてませんね。いやあ…ヒカルさんのアレ見ると、すっごく自信なくなっちゃうんですよね」
クキが言った。
「タケのもそこそこだが、大将のそれはヤバすぎだな」
俺がクキに聞く。
「ヤバいとはどういうことだ?」
「デケえってこったよ。女らが色めき立ってんだろ!」
「そ、そいつはスマン」
オオモリが言う。
「ていうか、今はそんな場合じゃないです。ヒカルさん! これを持って行ってください!」
オオモリに渡されたのはスマートフォンだった。
「わかった」
俺はそれを握りしめて、再びレーザーを潜って向こうに行く。やはり髪の毛一本も焼ける事は無さそうだ。
「どうする?」
「まず。動画モードにしてあるので、その機械を撮影してください!」
「了解だ」
俺はスマートフォンをかざして機械を撮影していく。
「止めてください!」
「ああ!」
「その端末の画面の右側に、スマホを置いてもらえますか?」
「置いたぞ!」
そしてしばらく静かになり、スマートフォンが勝手に動き出す。どうやら向こう側でオオモリが操作しているらしい。
ピッ! ププ! ピピッ!
スマホから音が鳴りだし。画面に大量の数字と文字が表示されていく。構わず待っていると、向こうから声が聞こえた。
「あれ! 試験体じゃない?」
マズい! 俺がみんなの元へ戻ろうとすると、オオモリが叫ぶ。
「そこに居てください! 最初からになります! 画面に文字盤が表示されます!」
オオモリが言うとおりに、壁の機械に文字が浮かび上がった。
「どうする!」
「押してください! いいですか!」
「ああ」
「5、5、3、9、A、O、#、6、I、F、V、V、0!」
俺がオオモリに指示されるように画面を押していった。
ビーーーーーー! ガシャン!
レーザーがふっと消えた。その事でみんながこちらへ走り込んで来る。すると部屋の入り口の壁をぶち破って、エビのような物に人間の足が生えたバケモノが入って来た。
「試験体だ!」
クキが叫ぶ。俺が剣を構えてそいつに向かうと、オオモリが言った。
「大丈夫です」
ピッピピピピ!
オオモリが制御盤を操作した。
「来たぞ!」
走って来た試験体に対し、俺がヘルフレイムフラッシュを撃とうとした時だった。
ジュッ!
エビの試験体は一瞬で消えた。オオモリが制御盤を操作して、レーザーを照射したのだ。塵も残らずに試験体は消滅したのだった。
オオモリがニッコリ笑って俺に言う。
「日本刀を労わらないといけませんよ。帰りの道が怪しくなります」
「そうだな。助かった」
「はい」
そしてマナが機械の側にあるスマホに、コードを指してパソコンにつなげた。そして別の機械を取り出し操作していった。
「衛星にリンクするわ」
「了解」
「リンク完了。データを送信するわ。大森君お願い」
「すぐに」
オオモリが作業をして、その場で待つことになった。レーザーのおかげでこの場所の安全は確保されている。俺達はしばらく何もせずに二人の作業を待った。
「結構な量になります。三十分はかかるかと」
「レーザーが守ってくれている」
「あ、ヒカルさん。帰りは消すんで、服着てもらっていいですよ」
よく考えたら前を隠すのも忘れて、試験体を警戒していた。パンツは無いものの、俺は下着とシャツそしてスーツを着込んだ。靴を履いて身だしなみを整える。
ツバサが言った。
「あー、目のやり場に困った」
ミナミも言う。
「本当にね」
するとタケルが苦笑いして言う。
「いやいや…目の保養になったろうが」
「な、なにいってんのよ」
「確かに」
「まあね…」
三者三様の答えが帰って来る。それから三十分後、オオモリが言った。
「データを吸いあげました。これはかなり楽しみですね」
それを聞いたクキが言う。
「見るのは後にしよう。これ以上の滞在は危険だ。脱出して偽装工作をするぞ」
「「「「「「了解」」」」」」
「じゃあ、レーザー切ります。行きましょう」
オオモリが操作してレーザーを切る。レーザーは切れたが、突然大きく警報が鳴った。
そして電子音が鳴る。
「試験体の脱走を確認しました。基地を消去いたします。消去まで六十、五十九、五十八」
それを聞いてタケルが言う。
「またかよ。東京基地とおなじ仕掛けか…」
「急ぐぞ! ついてこい!」
俺達は急いで部屋を出て、一気にエレベーターホールへと向かい通路を走り出すのだった。




