第374話 機動隊の強襲を回避せよ
飛行機の通路を後ろに走りながら、クキが俺に聞いて来る。
「ヒカル! 先は行き止まりだぞ」
「そんなことはない」
飛行機の後部座席まで来た時、前方の方から物音が聞こえて来た。
「機動隊が突入してきちまったぞ」
「問題ない。それより傾くぞ」
「は?」
「大龍深淵斬」
飛行機の胴体をぐるりと回るように剣撃を走らせた。
「駆け上れ」
「おっと!」
飛行機の胴体が切れた事によって、そこを境に谷になるように落ちていく。俺達二人はそのまま後部に駆け上がっていった。どうやら前方から叫び声が聞こえて来る。
「うわああ」
機動隊が突然壊れた機体に慌てているようだ。俺達はそのまま突き当りの壁につかまった。
「機動隊の奴らが慌ててるな。これからどうする」
「気を付けて降りるんだ」
「わかった」
急な坂になった床を降りて、俺達は地面に足をつけた。割れた飛行機の胴体の向こうに、機動隊の車両が見える。
「機体が急に斬れたんだ。そりゃ驚くだろうな」
「騒ぎは大きい方が良い」
「で…」
クキが何かを言おうとしたが、俺はクキの首根っこを掴んで機動隊たちがいる方向とは逆に飛んだ。飛行機に隠れながらも水平に飛んでいき、コンテナ車両の陰に飛び込む。するとクキが咳込んでいる。
「ご、ごほごほ!」
「静かに」
「し、死ぬかと思った」
「しっ!」
俺が注意深く飛行機の方を覗き込むが、さらに多くの車両が囲み人だかりができていた。
「よし、まだ飛行機を探っているようだ」
「空港に侵入するぞ」
「ああ」
そして俺達はそのまま、空港の壁に沿って走る。すると中に入れそうなドアがあり、俺がそこをこじ開けて中を確認するが人の気配はないようだった。
「入るぞ」
「ああ」
俺とクキが中に侵入すると、そこは何か裏口のような場所だった。
「バックヤードだな」
そしてクキがスマートフォンを取った。それを見たクキが言う。
「大森から連絡が来ている」
❘ハッキングデータの調整済み。お客様カウンターを通過済みとした。現在位置からルートを算出しました。合流地点をお知らせします❘
「なんと言ってきている?」
「大森から、合流しようという連絡だ。俺達は普通に飛行機を降りたことになっているそうだ」
「すぐに行くぞ」
「ああ」
クキが画面を見ながら、迷いなく空港を進んでいく。だがその先から声が聞こえて来た。
「隠れろ」
二人がスッと機器の後ろに隠れた。すると向こうから人が歩いてくる。何かを話しながら俺達の前を過ぎて奥へと歩いて行った。
「ここの従業員だ。どうやら施設を管理している人らだな」
「そうか。少し油断していた。気配感知をしながら進む」
「ああ」
俺とクキがそのまま進んでいくとドアがあり、そこから出るように誘導されているようだ。スッとドアを開けると、その先はエントランスのようだった。
「人がいない」
「近くで暴動が起きてるという情報だ。恐らく空港にいる乗客は鮨詰めで外にゃあ出られねえだろ」
「いくぞ」
「まて。マスクを取れ」
「わかった」
俺達は目と口だけが出ている帽子を捨てて、エントランスに出て皆が待っている場所に向かって歩き出す。
「俺達しかいないから目立つな」
「このまま行っていいのか?」
俺達が気にしていたことが起きた。向こうの方から制服を着た二人組がこちらに走ってくる。
「どうする?」
だがクキは冷静に言う。
「どうもしない。何もするな」
俺は念の為、スーツのボタンをしめた。上手く日本刀を隠してはいるが、これが見つかったらハイジャック犯だとバレてしまう。
俺の前でクキと制服が話をしている。そしてクキが俺に言った。
「トイレに行こうとしてたと言ったら、パスポートを見せろと言われた」
パスポート…。そう言えば飛行機の中にバックごと置いて来た。俺とクキはこめかみに汗を流しつつ、どうするかを考えていた。クキが制服に振り向いて何かを言った。
「ついて行くぞ」
「ああ」
俺達がついて行くと、客が集まっているところに連れていかれる。するとクロサキが俺に手を振っている。俺は何食わぬ顔で手を振り返した。
「おかえりなさい」
クロサキが俺に言う。俺はクロサキに顔を近づけてこっそり言った。
「パスポートは飛行機の中だ…見せろと言われている」
「大丈夫」
そしてクロサキが俺を連れて行くと、俺のバックがそこに置いてあった。どうやら降りるときに一緒に持って来てくれたらしい。俺はその中から、パスポートを取り出して制服に見せた。すると納得してそこを離れていく。
クキの方を見ると、マナがクキのパスポートを渡しているところだった。どうやらそちらも問題なく通過したようで、俺達は無事に仲間達と合流できたのだった。そこには一緒に乗っていた乗客たちがいるが、俺達が犯人だとは気が付いていないらしい。
「無事で何よりです。飛行機が斬れちゃいましたね」
「脱出した時にな」
「みんな揃ってます。ベルリンを救いましょう」
「そうだな」
そして俺達は、空港から出る方策を練り始める。今は他の乗客と共に、ここに留まるように言われているらしく、周りを係の人間達に囲まれている状況だった。クロサキが言った。
「戒厳令が敷かれてるんです」
「どういうことだ」
「外が危険だと判断されてるんですよ。もしかすると私達が想像するより、拡大が早いのかもしれません」
「急がないとな」
するとその時だった。空港の明かりがぱっと落ちて、赤いランプが回り出した。警報が鳴り響き、乗客たちは騒然とし始めるのだった。




