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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第373話 正義のハイジャック勇者

 飛行機の乗客がざわつく中で、俺達はスマートフォンを使いどうするかを話し合っていた。もちろん俺はあまり使えないので、クロサキが俺の隣りで画面に集中している。そんな時にもう一度機内の放送が鳴り、皆がそれに聞き耳を立てた。


「万が一は戻るみたいです」


「戻る?」


「モンゴルにです」


 それはいただけない話だ。だが、それを聞いて不満なのは俺達だけではないらしい。あちこちの席で、客が乗務員に対して文句を言っているようだ。それを見てクロサキが言った。


「本来は行かない方がベストですけどね。ここにはあなたがいますから」


「それでも行かない方が、乗客の為には良いだろうがな」


「始まったばかりのパンデミックであれば、ヒカルさんなら止められますよね?」


「止められる」


 騒然としていた機内で、クキが俺の隣りを過ぎる時に肩に手を置いた。スッと肩に手を乗せると、紙が渡されトイレに来いと書いてある。そのまま立ち上がり、トイレに行くと前でクキがまっていた。


「手みじかに」


「ああ」


「万が一は強行するかどうかだ。恐らくここで行かなければ、ベルリン入りはかなり困難になる」


「強行とは?」


「ハイジャックだ。なんとしてもベルリンに飛ばすように脅す」


「誰をだ?」


「パイロットだ」


「どのタイミングで?」


「引き返すと決まった時。なんとしてもベルリンのパンデミックを止めよう」


「わかった」


 そうして俺達はそれぞれの席へと戻る。スマートフォンで皆に通達が流れ、万が一は他の顧客と一緒に全員が逃げるように表示された。俺とクキがこの飛行機をハイジャックする事となる。


「出来る事なら穏便に済ませたいところですけどね」


 だがその願いは叶わず再び放送が流れ、やはりモンゴルに戻る事になってしまった。


「ふう…ダメでしたね」


「クロサキはみんなと逃げろ。俺はクキと一緒に行く」


「わかりました」


 そんな話をしていると、マスクと眼鏡をかけたクキが俺の所に来る。


「行くぞ」


「ああ」


 俺はバッグから、するりと日本刀を抜いた。それをスーツの上着に隠して、クキと一緒に客席を前に歩いて行く。放送を聞いた客たちが騒いでおり、乗務員が慌てて説明をしているところだった。ある男が怒鳴り声を上げており、周りの客もそれに合わせて大声で騒いでいる。


「構うな」


「分かってる」


 俺達はそのまま通過していく。前方のカーテンを開けて入ると、制服を着た女がクキに慌てて何かを言ってきた。


「なんて言ってる?」


「お客様困ります、と」


 俺はすぐに乗務員の意識を刈り取り、スッと抱きしめてゆっくりと座らせた。


「いつも感心するが見事すぎる」


「力加減が重要なんだ」


「今度教えてもらうか」


 そして先に進むと、鍵のかかった扉があった。クキが懐から何かを取り出して俺に渡してくる。


「これをかぶれ」


「わかった」


 クキがそれをかぶると、目と口だけが出る帽子だった。俺も同じようにかぶり顔を隠す。


「鍵を斬って開けてくれ」


 俺は日本刀を出して、扉の隙間に沿って振り下ろす。


 キン!


 鍵が切れてクキが開く。その部屋には三人が乗っていて、クキが隠し銃をジャキっと出し英語で言った。


「死にたく無ければ、このままベルリンに向かえ」


 中の一人が動きそうだったので、俺が日本刀を突き付けて動きを止める。


「へんな動きを取らない方が良い。コイツはクレイジーだからな、神の為なら道連れにするぞ」


 すると中の三人が手を挙げた。そしてクキが更に言う。


「もしベルリンに降りなければ、この飛行機は爆破する。既に爆弾が仕掛けれられているからな、従うか従わないかを答えろ」


「従う」


 そして飛行機はそのままベルリンに向かう事になった。俺達がそこでパイロットたちを見張っていると、パイロットの一人がクキに言う。


「トイレにいかせてくれ」


「垂れ流せ。俺達は気にしない」


「頼む」


「ダメだ。あと三時間かそこらだろう?」


 すると黙って座る。パイロットたちは極限に緊張をしているようだが、俺もクキも至ってリラックスしていた。もちろん爆弾など無いし、万が一モンゴルに戻られても他の方法を探るしかない。しかしそうしてしまえば、ドイツや周辺地域はゾンビで壊滅してしまうだろう。


 そして三時間。


 どうやらパイロットたちは素直にベルリンに向かってくれたようだ。飛行機の窓から見える先の町では、あちこちで煙が上がっており、何かが起きているのが分かる。


 パイロットがその光景をみて叫んだ。


「みろ! 暴動が起きているんだ! お前達は、取り返しがつかない事をしたぞ!」


「ここまで来たら戻れないだろ」


「何をしたか分かってるのか!」


 クキはニヤリと笑って言う。


「世界を救った」


 それを聞いたパイロットたちは頭を抱える。しかしもう着陸するしかないらしく、旅客機は滑走路に降りるのだった。そして飛行機が止まった時、クキがパイロット達に言った。


「乗客を全て降ろすように放送しろ。そして出来る事なら、直ぐに発着できる旅客機でここを離れるんだ。燃料を補給している暇はないかもしれん。あの暴動に巻き込まれたくなかったら、俺達の言う事を聞くんだ」


 パイロットはすぐにマイクを取って、機内にその事を伝えた。そしてパイロットが言う。


「乗客は降ろした。私たちも解放してくれ」


「もちろんだ。降りて良いぞ」


 そしてパイロットたちを先に行かせる。俺が気絶させた乗務員を目覚めさせ、パイロットたちにその身柄を渡した。そして開いたハッチから、パイロットと乗務員たちが出て行った。


「皆も降りたようだな」


「俺達も行こう」


 そして俺とクキがハッチを出た時だった。ランプのついた車が旅客機の下に何台も止まっており、制服を着た奴らがこちらに向かって銃を構えている。俺達は一旦機内に戻り、クキが俺に言った。


「機動隊だ」


「どんな奴らだ」


「黒崎みたいに法律を守る番人だよ」


「善人と言う訳か? 俺達を捕えに来たんだな?」


「そうだ。だから殺すわけにはイカン」


「降りて行けばどうなる?」


「俺達は逮捕されるだろうな」


「参ったな」


「プっ! 参ったな、なんてもんじゃない。乗客もいないんだし、間もなく機動隊の奴らが雪崩れ込んで来るぞ」


「問題ない。こっちに来い」


 俺とクキは飛行機の後方に向かって走るのだった。

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