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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第369話 忍び寄る世界破滅の音

 俺達はバラバラのチームに分かれ、シベリア鉄道の駅に入る。既にクキやクロサキのチームは中に入っているはずで、ホテルにチェックインする時の順番のまま、俺たち三人が一番最後に搭乗する事になっている。


 すると日本では動いたのを見た事がない電車が止まっており、その脇に黒い乗り物が置いてある。


「あの黒いのはなんだ?」


「昔の蒸気機関車よ。今は電気で走るの」


「ほう。よくわからんが便利になったという事だな?」


「そうよ」


 ツバサがチケットを見ながら言う。


「私達の車両は前のほうね」


 よくわからないのでミオについて行く。他にも沢山の旅行者がいるみたいで、見送りの人らが結構いるようだった。平和な表情で見送られている旅行者を見て、その平和な光景に俺は目を細めた。そして目的の車両についたのでそこから乗り込む。


「部屋を探さなきゃ」


 ドアをぬけて中に入ると細い通路が続いていた。その奥に扉が続いており部屋のようになっていて、俺達は一つのチームとしてこの部屋のどれかに泊まる事になっている。


「本当は四人部屋だから、もう一人客が入るらしいんだけど、四人分ずつ取って部屋を独占しているんだって」


「オオモリはそんな事も出来るのか?」


「朝、大森君に少し聞いたんだけど、世界はネットワークが普通につながっていて『ハッキングし放題です!』とかめちゃくちゃテンション高かったわ」


「やはりアイツがいないと、行動は厳しいんだな」


「皆助かってると思う。この部屋だわ!」


 そのドアを開けると、小さな空間になっていた。それを見てツバサが言う。


「ベッドが上に二つとしたに二つ。下はソファになっているのね」


「ならば、ミオとツバサは上に寝ろ。万が一の時に下の方が対応しやすい」


「「わかった」」


 荷物を適当に置いて座りミオが言った。


「そろそろ発車時刻よ」


 電車が走り出すとドアがノックされた。警戒しながらドアを開けると、ふくよかな女が袋に入った白い何かを持ってくる。それを見てミオが言った。


「シーツと枕カバーよ」


 俺がそれを受け取ると、直ぐにその女は隣の部屋へと移って行った。ツバサが部屋を見て言う。


「DVDやテレビもあるんだね」


「テレビ?」


 ツバサがそれをぱちりとつけてくれた。すると画面に映像が流れて、何かを話しているような映像になる。それを見たミオとツバサが感嘆の声をあげた。


「うわあ…テレビだって…」


「しかもニュースだわ」


 だが話している言葉が良く分からなかった。それを見ながらミオが解説してくれた。


「凄いわ」


「なにがだ」


「世界的に軍事バランスが崩れてきて各地で紛争が起きており、情報も錯綜しているんだって。でも…恐らく各国は軍事衛星の破壊の情報は流していないみたい」


「多分牽制し合ってるのね」


「なるほど」


 そうしているうちに、画面は戦っている場面に移る。それを見て俺が聞いた。


「これは架空の事か?」


「いえ。今日起きた本当の出来事よ」


「戦争が流れるのか?」


「戦場カメラマンっていう、戦地を専門に撮影する人がいるの。ジャーナリストとか呼ばれてたり。あとはSNSっていうネットの仕組みで撮った動画を流したり」


 次々に移り変わる映像を見ていると、明らかにおかしな映像が映った。それを見てミオが言う。


「暴動って言ってる…けど…」


 ツバサが呆れて言う。


「メディアって正直に言わないのね。明らかにゾンビだわ」


 そう、俺達が見ている映像にはゾンビが押しよせ、それを軍隊が撃っている映像が映っていたのだった。どうにか軍隊が堰き止めているようだが、ゾンビが増殖しているようだった。


 そのニュースが告げた言葉にミオが固まる。


「ロシアと戦争している国があるんだけど…どうやらそこのようね」


 ツバサが慌てて、オオモリが改造したスマートフォンをポケットから取り出して見た。


「モスクワに近いわね」


 俺がツバサに聞く。


「モスクワとは何処にある?」


「この列車の終着駅よ」


「なに…」


 そこでミオが言った。


「私達はイルクーツクで降りるからそこまではいかないわ」


「だがこの電車は行くぞ」


 俺の言葉を聞いてツバサが言う。


「でも国境地帯で起きている事だからまだ…」


 ミオもスマートフォンを取り出して見だした。二人がしばらく沈黙してスマートフォンを見ているが、いろんな情報があるようで本物を見極めるのに時間がかかっていた。


 ミオが言う。


「モスクワまでは来ていないみたい」


 そう言ってテレビの画面を見た。


「モスクワのライブ映像でも普通に暮らしているみたいだし」


 それを聞いてツバサが言った。


「でも…高島教授が言っていたのは三週間…。この電車が付くのは十日後…」


 俺達は一瞬沈黙する。このまま列車が到着する十日後には下手をすると、モスクワにもその影響が出ているかもしれなかった。この電車にもたくさんの人が乗っており、皆がそこに行くことになる。


「他の面子とコンタクトを取れるか?」


「まって」


 そしてミオがスマホをいじると、直ぐに返事が帰って来た。


「二十一時半に、食堂車にだって。九鬼さんと黒崎さんのチームも気づいたみたい」


「行こう」


 そして俺達は部屋を出て鍵をかけ、通路に出て食堂車に向かう。


「五号車と六号車の間に食堂車があるらしいわ」


 俺達が狭い通路を歩いて行くと、何人もの人とすれ違った。その人らは、これから行く場所が危険だとは思っていないだろう。


 俺達が食堂車に着くと、先にクロサキのチームが来ていた。クキ達のチームはまだ来ていない。俺達は知らん顔でクロサキ達の隣りに座った。


 他人のような顔でミオが言う。


「空いているのね。時間帯かしら?」


 するとそれを聞いたクロサキが、また他人のようにタケルに言った。


「ロシアの人は部屋に食事を持ちこんで食べるようね」


 そしてミオが車両の外を見ながら言う。


「ここは平和そのもの」


 そこにようやくクキ達のチームがやってきて、俺に聞いて来た。


「すみません。ここは空いてますか?」


「どうぞ」


 少しすると周りの乗客が部屋に戻っていく。食堂車は俺達だけになった。するとクキが言った。


「見たか?」


「ああ」


「こちらも確認してます」


「やつらが繁殖してきている」


 それにミオが言う。


「この列車の乗客だけでも助けられないですかね?」


「到着は十日後だ。俺達が降りるのは二日とちょっと、その時に仕掛ければいい」


「どうすれば?」


 するとクキが俺を向いて言う。


「百パー、ヒカルに頼った方が安全だ。やる事は決まっている」


「何をするの?」


 するとクキが頭を寄せて来て小声になった。


「行きと帰りの電車が通れないようにするんだ。しかも復旧が不可能なくらいにな」


 俺が頷いて言った。


「何をすればいいか分かった。とにかく二日後だ」


 そんな話をしていると、オオモリが言う。


「えっと、僕達だけで話し合う用のアプリを作ったので、皆さんのスマホにインストールします。ちょっとテーブルの上に出してもらえますか?」


「そんなもん作ってたのかよ!」


「ネットがつなぎ放題なもんで。とにかくやりましょう、ここで話し続けるのはまずいでしょ」


 そしてオオモリは自分のスマホをいじる。すると他の全部にピピッと何かが入った。


「これで話が出来ます」


 するとクキが頷いてみんなに行った。


「じゃあ、戻るとするか。念のため警戒を解かないようにな」


 皆が頷く。


 すると、突然そこにロシア人がやってきて何かを話した。それを聞いたクキが言った。


「まあ…そうだな。じゃあ飯でも食って行こうか」


 それを聞いてクロサキが自分のチームに言う。


「お金持って来てます?」


 マナが頷いた。そしてミオが俺達に言う。


「私達も食べて行きましょう」


 それぞれのテーブルで料理を注文し、バラバラに食べる事になった。しかし皆がスマートフォンを見ているので、俺も覗き込むと、どうやら皆はそこで話をしているようだった。


 俺がミオに聞く。


「話をしないのか?」


「乗務員に聞かれてたみたい。まあ日本語だから理解はしていないと思うけど、念のためここで話すという事に」


 人に聞かれずに会話ができるとは凄い物だ。だが皆が静かに飯を食いながら、置いたスマホをただ眺めているのは不気味だ。誰一人話をしていないのだが、実は話をしているという奇妙な光景に、俺はつい笑ってしまいそうになるのだった。

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