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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第368話 この世界に来て、一番平和な夜

 ホテルの部屋は三人が寝れるようにベッドが三つあって、とりあえずミオとツバサがベッドに腰かけた。俺の後ろから暖かい風が吹いており、部屋の中は温まっているようだった。


「軽くエアコン入っててよかったわ。寒かったよね?」


「うん。日本とは、こんなに気温が違うんだね」


 ミオとツバサが話をしている。東京で俺達がアジトとして陣取っていたホテルよりも質は良くないが、かといって悪い事もない部屋だ。しかもランプや蝋燭じゃなくて電気が灯るのがいい。俺はすぐに窓際へ行って、周辺におかしなものが居ないかを確認する。


 コンコン!


 ドアがノックされた。


「はい」


 ミオが返事をするが、俺が先に出て言う。


「俺が出る」


 入り口に行って鍵を開け、扉を開くとクロサキとクキが立っていた。直ぐに二人を迎え入れて鍵を閉める。


 クキが俺達に言った。


「遅かったな、酒か?」


 どうやら俺達の臭いで分かったらしい。それに俺が答える前にミオが言う。


「ロシアの情報が何か取れるかと思ってね。あと寒くて避難したって言うのもあるわ」


「それでどうだった?」


「情報は何もなかった。それより暴漢に襲われたわ」


「……さっそく揉め事か?」


「ごめんなさい。誤算だったの」


「どういう状況だ?」


 そこでミオは経緯を話す。それを聞いてクロサキが言う。


「不可抗力ですね。おそらくはバーで声をかけてきた連中がグルなんでしょう」


 クキが言った。


「いったい、どんな飲み方をした?」


 それにミオが説明をする。そしてクキが言った。


「ハイブランドのスーツを着て、そんなに酒を飲んだらそうなるだろ。泥酔した外国人が襲われる事なんてよくある事だ」


「なるほど…」


 どうやら俺の姿と振る舞いが良くなかったらしい。だがこれだけは譲れない事だ。


「ウォッカを一本と五杯ほど空けただけだ。あと水色の酒とビール」


「普通なら酔っぱらう量だろ」


「いや。全く変化は無かったぞ」


「完全に暴漢の誤算だな。いずれにせよ外国人は目立つからな、なるべく目立った行動は慎んだ方が良い」


「ごめんなさい」

「すみません」

「悪かった」


 ミオとツバサと俺が謝った。


「まあいいさ。思いの外、寒かったしな。そりゃ薄着で外を彷徨うのは酷ってもんだ」


「みんなは?」


「もう寝たよ。流石にくたびれたみたいだ。明日も時間差でチェックアウトだし、お互い他人同士という事で出る事にしよう。まずはみんな休んでくれ、ヒカルも警戒は解いて良いと思うぞ」


「わかった」


 そしてクロサキが言う。


「ではお疲れ様でした。明日からもよろしくお願いします」


「よろしく頼む」


 そして二人は部屋を出て行った。暖かい部屋は心地よく、窓の外の喧騒もそろそろ落ち着いてきたようだ。そしてミオが言う。


「シャワー浴びようかな。海から来たから髪がゴワゴワ」


「そうしましょ」


「ヒカルは?」


「俺は別にいい」


「あら? 汚くしてると女の子に嫌われちゃうわよ」


「一日だけだ」


「ふーん。じゃあツバサが先にどうぞ」


「わかった。じゃあお先に」


 そう言ってツバサがシャワー室へと入っていった。直ぐにシャーっと水が流れる音が聞こえて来て、俺とミオが部屋に二人になる。


 ミオが聞いて来た。


「どう? この世界の文明に触れた気分は?」


「珍しい」


「そうよね。ほんとは日本にもこんな日常があったのよ」


「そうなんだな。早く取り戻したいな」


「人口も思いっきり減っちゃったし、元に戻るかどうか分からないけど」


「それもそうだが、早くしないと世界の人がいなくなる」


「そうよね」


 そう言ってミオがバフッとベッドに寝ころぶ。


「こんな暖かいホテルの部屋でベッドに寝てるなんて不思議、普通の事だけどとても幸せに感じちゃう。そばにいるのがスーパー〇ンも真っ青のヒーローだし、こんなに安心して眠れるなんて…」


「さっき聞いたロックも面白かったしな」


「ヒカルは初めてだもんね」


「ああ」


 少しの沈黙が流れ、俺は外を意識しつつミオに言う。


「明日は電車という奴に乗るんだよな?」


「……」


「ミオ?」


 ミオを振り返ると、スースーと寝息を立てて眠ってしまっていた。


「寝たか…。シャワーは浴びないんだな」


 俺はミオの所に行き、靴を脱がせて毛布をかけてやった。するとそこにツバサが出て来た。ツバサは白い服に着替えており、頭にタオルを巻きつけていた。


「美桜。いいよ」


 俺が答える。


「寝てる」


「そっか。疲れちゃったんだね」


「そうだな」


「じゃあヒカルが入ってきなよ」


「俺は…」


 さっきミオに言われた言葉を思い出す。


 汚い男は嫌われるんだったか…。


「やっぱり浴びて来る」


「お湯が出るよ。来て」


 そして俺はツバサに連れられて浴室に行く。


「これをこっちに回して下げるとお湯。こっちに回して下げると水」


「自動で出るのか?」


「そうよ」


「便利だ」


「じゃ、ごゆっくり」


 俺がシャワーの蛇口をひねると、温かいお湯が出て来た。直ぐに服を脱いでシャワーを浴び始めるが、なんとも言えない心地よさだ。潜水艦でもシャワーは出るが、こんな水量じゃない。あっという間に体を洗い、そこに置いてあったタオルで体を拭きとる。


「ふう」


 俺が部屋に戻ると、ツバサも寝てしまっていた。俺の体はほとんど眠らなくてもいいので、そのまま部屋の周りを見る。


 これがこの世界の普通か。


 初めて平和な場所に来て思うが、ウラジオストクに生きている人たちは、日本の状況を知っているんだろうか? むしろバーではその事を聞いてみたかったが、自分らが日本人だとバレるわけにはいかないので聞かなかった。


 海外にも日本人はいると言っていたし、どこかで日本人に会う事もあるだろう。その時に、今の日本の現状を知らせたらどうなるだろうか? 真実として捉えるか、デマとして捉えるかは分からない。


 そして夜は過ぎ、電車に乗る日の朝日が昇るのだった。

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