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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第367話 普通の暴漢に会う日

 突然声をかけて来た男達は、俺達が旅行者だと思っているようだ。俺達は言葉が分からないので、ミオが一人で対応している。俺は思考加速と詠唱理解を発動し、相手が言っている内容の概要を掴もうとしていた。どうやらいろいろとミオに素性を聞いているらしい。そして目線が俺に向いた。


 ミオが言う。


「ヒカルが凄い高級なスーツを着ているから、実業家じゃないかって言ってる。まあ酔ってるみたいだから、半分は冗談みたいな感じだけど」


 ル〇ヴィ〇ンの良さが分かるとは、なかなかに目の付け所が良い連中だ。


「なんて言ったんだ?」


「ヒカルの事は、環境保護団体の人だと言ったんだけど、そんなに金持ちな訳ないって疑ってる」


「そうか。何かいい情報は知ってそうか?」


「このあたりの人らしくて、飛行機が頻繁に飛ぶねって聞いたら、世界情勢が怪しくなっているからだろって」


「少しゆっくり話してくれるように伝えてくれ。感覚でつかめるかもしれない」


「わかった」


 ミオが丁寧に男らに伝えると、笑ながらも頷いている。そして俺に話をしてきた。


「Если у тебя бабло есть, не хочешь рискнуть?」


 なるほどさっぱりわからない。だがなんとなく何かを誘っているように感じる。俺は身振り手振りをしながら、日本で仕込まれたフランス語で答えた。


「ケス・ク・チュ・フェ?」


 すると今度は男達が、手をひらひらさせて分からんとジェスチャーして来る。そこでミオが言った。


「なんか、お金ありそうだし、ギャンブルに興味はないかって」


「ギャンブルとはなんだ?」


「賭けごと。お金をかけて減らしたり増やしたり?」


「どうすればいいか聞いてくれ」


 そのままミオが話をする。


「あ、ダメだわ。何でも近くのカジノは全て閉鎖になってて、近くても車で一時間だって」


「断ってくれ。そろそろ帰るとしよう」


 ミオがまた男達に話すと、若干食い下がられている。なので俺はミオに言う。


「ウォッカをひと瓶頼んでくれ」


「ん? わかった」


 そしてテーブルにウォッカが届いたので、俺は男達にそれを渡して言う。


「ビュヴェ、シル・ヴ・プレ」


 男達が分からないようで、ミオが説明をした。


「飲んでくれって」


「Спасибо, ты норм!」


「なんて言った?」


「あんたいい奴だな。だって」


「メルシー 」


 そして俺達は金を払いバーを後にした。外に出ると更に気温が下がっており、俺がミオとツバサに言う。


「ホテルまでそのままだと寒いぞ」


「服入ってたからとろう」


「そうね。人通りも少なくなったし」


 そう言って二人はバッグを開け、中から服を取り出して羽織った。


「カーディガンとか入ってるなんて、分かってるね」


「ほんと。コートにはまだ時期が早いみたいだし、ちょうどいいわ」


 そう言って二人は重ね着をした。俺達はそこから移動し始め、細い路地に入り込む。少し入り組んだ路地の先に大通りがあり、その先を進んでいくと宿泊場所が見えてくるはずだ。


 だがその裏路地を歩いている時だった。前の建物の影から二人の男がぶらりと出て来た。


 俺が言う。


「気を付けた方が良いな」


 するとミオも言う。


「攻撃的な気が漂ってるね…」


 ツバサが言う。


「回り道しましょう。いざこざは避けたいわ」


 だがミオが言う。


「多分それも無理」


 振り向けば後ろからも、二人の男がこちらに歩いて来ている。ミオはその気も感じ取っていたのだ。もちろん俺は既に分かっていた。


 そして俺が言う。


「本職じゃない。クキやカブラギのそれとは違う」


「ただのチンピラ…ね。よかった、ファーマ―社じゃなくて」


 俺達は構わず進み、前の二人が俺達の方に寄って来た。そこそこ屈強な男二人で目が据わっている。どう考えても、こう言う荒事に慣れているやつらだ。


「У тебя, что, денег куры не клюют?」


「なんて?」


「お前は金が余ってるのか? だって」


「揉め事は避けたい。いくらほしいか聞いてくれ」


 ミオが聞くと、男二人が顔を合わせて大笑いをする。いつの間にか後ろの二人も追いついていた。どうやら四人はグルのようだ。


「Все, что у вас есть, теперь мое!」


「なんて?」


「全部だって」


 それはダメだ。このバッグの中には金と服だけじゃない、俺達の機密が入っている。


「全部は無理だ」


 すると相手が懐から何かを取り出した。どうやらナイフを携帯していたらしい。まあ子供だましの武器ではあるが、ミオとツバサだけだったら怪我をしていたかもしれない。


 ミオが無理だと相手に伝えると、また男達が笑い出して言う。


「Не вам судить!」


「お前らが決めるなって」


「そうか残念だな」


 次の瞬間、俺は縮地で目の前の男達の後ろに周り、首筋に手刀を落とし意識を刈る。ぐらりと崩れ落ちる前に、後方に飛び二人の男の間を抜けて手刀を繰り出した。四人同時に崩れ落ち、ミオたちを中心にして四方向に倒れた。


「また綺麗に倒しちゃって」


「汚れるのも避けたい」


「まあ、そうね」


 ツバサが言う。


「さっきの飲み屋の連中から連絡が入ったとしか思えないわ。私達の事を明らかに狙っていた」


「まあどうでもいいさ。霧も出て来たし冷える前に帰ろう」


「うん」

「そうね」


 誰も目撃者がいない事を確認し、俺達は霧のウラジオストクを歩きだす。他愛もない奴らではあったが、平和そうに見えるこの町にもこんな悪がいるという事が分かった。日本人とは全く違うらしい。これからの旅路で経験するであろうことを、こんなに早く経験できたことは、俺にとって僥倖だったかもしれない。


 大通りに出て少し進んでいくと、仲間達が泊っている宿泊場所が見えて来る。入り口から中に入ると、クキがエントランスのソファーに座って新聞を読んでいた。どうやら俺達の帰りが遅くなったので、気にして出てきていたらしい。


 だがもちろん声をかける事はない。クキは俺達をチラリと見ただけで新聞に目を落とした、俺達はクキの前を素通りし、ホテルのフロントでミオが従業員に声をかけるのだった。

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