第362話 リコからの呼び出し
レベル上げをしてからも、しばらくは自分らの身体能力を高めるため、潜入組は自衛隊達と訓練を続けていた。クキもスパイとしての動きを教え、仲間達は日に日にその動きに磨きをかけていく。
訓練を続けていたある日、ハルノが俺達に伝えて来た。
「すみません。凛子さんと大森さんが、工場に来てくれと言ってます」
「工場? わかった」
指令部に戻り、ハルノに通信機を渡される。通信を聞くとリコが言った。
「あ、ヒカルね」
「そうだ」
「実は開発中の装備の試作品が出来上がったんだけど、武と九鬼さんを連れてこっちに来てくれないかしら」
「装備の試作品? わかったそっちに行けばいいんだな」
「待ってるわ」
それを聞いていたタケルが言った。
「開発中の装備? なんだそれ」
「わからん」
「俺も行くのか?」
「そうらしい」
そしてクキがハルノに聞く。
「工場ってどこだ?」
「湘南ですね。ここから一時間ほど行ったところです」
「わかった」
ハルノから地図を渡されると、ミオが聞いた。
「私たちも行っていいのかしら」
「特に何も言われていないからいいんじゃないですか」
「じゃ、行きましょう。ずっと訓練ばかりでちょっと飽き飽きだわ」
「それもいいでしょう」
俺達、海外潜入組は、ずっと訓練に明け暮れていたので気分転換も必要だろう。一旦訓練をやめて、自衛隊が用意してくれた車に乗っていくことにした。車に乗り込むとき、タケルが車を見て言った。
「めっちゃ厳ついな」
ハルノが笑って答える。
「ブッシュマスター装甲車ですよ。オーストラリア製です。いちいちゾンビがいたら倒すのも面倒でしょう? これならガンガン潰して行けますから。悪路も難なく進めます」
「気が利くねえ」
俺達がそれに乗り込み、富士の訓練場を後にする。
「開発って一体なんだろうな」
「行って見ればわかるだろう」
クキが言った。
「御殿場のインターチェンジから高速に乗った方が良さそうだ」
するとマナが言う。
「出来るだけ満喫していきましょう。日本の空気を吸えるだけ吸わなくちゃ」
「愛菜の言うとおりね。日本を離れたらいつ帰って来れるか分からないし」
「でしょ?」
そして俺が言った。
「また、この季節が来たな」
「紅葉が始まってるわね」
するとタケルが言う。
「ヒカルと出会ってから、もう三年くらいたつのか」
「あっという間だった」
「だよなあ!」
ミオも嬉しそうに言った。
「セーフティーゾーンもかなり拡大したし、少しずつ蘇りつつあるね!」
「それもこれも、ヒカルのおかげだがな」
それを聞いて俺が首を振る。
「皆が一緒じゃなかったらこんな風にはなっていないさ」
「そう言ってくれるのは嬉しいけどな。俺達だけなら多分滅んでた」
「そうならなくて本当によかったと思う」
「ああ」
ミナミが車の天井ハッチを開けると、涼しい風が車内に吹き込んで来た。俺達はその風を感じながら、今までの事に思いを馳せる。
今はそれぞれが、それぞれのなすべき事をしていた。
そうして一時間後、俺達は目的の工場へと到着した。このあたりはセーフティーゾーンになっているが、先に行けばゾンビの地域になる為、人は住んでいない。工場は思いのほか広く看板を見てタケルが言う。
「大手の自動車工場だぜ。リコとオオモリはこんなところで何してるんだ?」
車が入っていくと、自衛隊達が数人走り寄って来る。
「お疲れ様です! 凛子さんがお待ちしております!」
クキが窓を開けて返事をする。
「わかった。なら車を頼む」
「了解です」
俺達が車を降りて、自衛隊に案内されて工場に入っていく。工場内のゾンビは片付けられており、奥に進んでいくと機械が動いているのが見えて来る。それを見てクキが言った。
「工業用ロボットを動かしてんのか?」
「はい。我々が発電装置を設置して、動かしています」
自衛隊に誘導されて俺達が入っていくと、それに気が付いたオオモリが来た。
「ヒカルさん!」
「呼ばれたから来たぞ」
「ちょっと凛子さんを呼んできますね!」
オオモリがリコを呼んで来た。
「あ! 来てくれたんだ。ゴメンね訓練中に」
「気分転換も必要だからな」
「そっかそっか」
「で、どうした?」
「レベルが上がってから突然閃いたのよ。ちょっと見てもらいたいものがあって」
俺達が顔を合わせると、タケルが笑って言う。
「なんかわくわくすんな!」
「きっと、面白いと思うわ」
俺達はリコに連れられて、隣の部屋に移るのだった。隣の部屋には、鎧の一部のようなものが置いてあり、リコがそれを手に取って俺達に見せる。
「これを作ってたの」
俺が聞く。
「籠手か?」
「まあそんなところだけど。武君と九鬼さん用なの、重さが解決できなくて」
「どういうことだ」
するとリコがタケルに言う。
「武君。ちょっと腕を出して」
「こうかい?」
「それでいいわ」
タケルがそれに腕を入れて、拳が反対側に出て来る。
「緩いぜ」
「大丈夫」
リコが籠手を触ると、ピッピッ! と音が鳴った。
シュッ!
「お! なんだ!」
「どうかな? 大森君がセンサーを開発してくれたから、ぴったりになるはずなんだけど」
「ああ、きつくはないし、ぴったりとフィットしてる。意外にずっしりくるな」
「でもフィット感はでてるみたい」
リコが喜んでいた。そして今度はオオモリが言う。
「腕の外側をスライドさせてください」
タケルが腕の外側を、触ってスライドさせるとそこに画面が出て来た。
「なんだこりゃ? スマホ?」
「操作パネルです」
「操作パネル?」
「えっと」
そう言ってオオモリがパネルをピッピッ! と押した。
ジャキン!
手首先に鉄の爪が現れる。
「な、なんだこりゃあ!」
「チタンだから丈夫だと思う。じゃあ…」
と言ってリコが、そこに置いてあった箱を拾ってタケルに投げる。タケルが慌てて腕を突き出すと、ストッ!と箱が爪に刺さった。
「す、鋭でえ!」
「隠し武器よ」
「なんだって?」
オオモリがタケルの腕を取って、ピピッと操作すると爪が引っ込んだ。なんとリコとオオモリは、この工場で新しい武具の開発をしていたのだった。




