第358話 ついでのレベル上げツアー
この世界には他の国に行く場合のルールがあるらしく、パスポートで身元の確認をして貰わないといけないらしい。しかも俺達は各国の人間に成りすます予定の為、現地のパスポートで無いとダメらしいのだ。そこでそのパスポートの原本とやらを入手する必要がでてきた。
「すみません。偽造するにしても原本は本物じゃないと」
オオモリが申し訳なさそうに言った。それにクキが答えた。
「どこかの国に潜入する時は、潜水艦で不正入国だがな。そこから移動するとなるとどうしてもひつようになる。中国人やフランス人が日本のパスポートって訳にゃいかん」
「潜入してしまえば、ハッキングでデータの改ざんは出来ると思います。ただ目視で見せるパスポートだけは」
そこでミオが言う。
「日本のならどこでも入手できると思うけど、今回はフランスと中国、韓国、シンガポールだからね。ある所は決まってる」
それにヤマザキが答える。
「しかし東京は核で燃えたな」
「探しました」
そういってミオがノートパソコンをひらき、地図を俺達に見せてくれた。
「比較的、近くに揃ってます」
赤い丸が付いた場所を見てマナが言う。
「名古屋だ」
「そうです」
クキが、そこにいるカブラギに言った。
「ヘリを借りるぞ」
「はい」
現在ヘリコプターは自衛隊が管理しているため、使う場合は確認が必要なのだ。もちろん貸さないという答えは来ないだろうが、少ない燃料の管理もしているため必要らしい。
「富士山を越えてすぐだから、それほど戻りは遅くならん」
「了解です」
俺達は今、富士の自衛隊駐屯地にいる。ここからだとヘリコプターで一時間もかからない。ただ名古屋は、どこかで電線が切れているのか全体に通電されない場所だった。そのため局舎への電源供給がされないところもあり、完全にセーフティーゾーン化出来ていないのだ。自衛隊は危険だと判断し、未だに生存者が戻る事を許してはいない。
そこで自衛隊はゾンビ破壊弾を装填した銃を配布し、ヘリコプターにゾンビ破壊薬散布ドローンも積み込む。
だが、そこで俺が提案をする。
「ちょっと聞いて欲しいんだがいいか?」
仲間達がこちらを振り向いた。
「なんだ?」
「今回、クロサキが短期間でレベルアップをした。かなりの数のゾンビを討伐したが、二人でやったことによって効率よくレベルアップできたんだ。ゾンビ破壊薬で消滅させるのも良いが、いい機会だから大量ゾンビの討伐をしてみないか?」
もしかしたら反対されるかもしれないと思いつつ提案してみるが、ミオを含めた女達もタケルも賛成してくれた。
クキはその提案にニヤリと笑い、カブラギにいう。
「悪いがそう言う事だ。少し帰りが遅れるぜ」
「それは構いませんが、充分気を付けてください。油断は禁物ですよ…って、私は誰に対して言ってるんでしょうね」
「まあ忠告はもらっておく。だがそろそろ国内全体を掃除するのもいい機会だろ。手始めに名古屋を掃除するのは悪くない」
「そう言う事であれば、食料を積み込んでいってください」
「すまんがそうさせてもらう」
そして急遽、自衛隊達が食料を詰め込んだリュックを持ってくる。
「戦闘糧食中心です。まあ美味しいかは分かりませんが、足りない時は名古屋で調達してください!」
「すまんな。じゃあみんな行くぞ」
「「「「「「「了解」」」」」」」」
新しく加わったクロサキも一緒にヘリコプターに乗り込み、ローターが回転し始めて一気に空中に舞い上がった。富士山の半分は俺が起こした異常気象の為に、この時期でももう真白になっている。
クロサキが言った。
「綺麗ですね。遠くから見ていましたが、結構積もっていますね。これをヒカルさんがやったなんて、ちょっと前だったら絶対に信じてませんでした」
「普通は信じられないわ」
「はい」
富士山を越えて森林地帯を飛ぶと、あっという間に町並みが見えて来た。
「空自の小牧基地に下ろす。そこで車両を調達し、名古屋へ向かう事にしよう」
クキがそう言って、俺達のヘリコプターは小牧基地に到着した。そこに来て俺達はようやく思い出す。
タケルが言った。
「そう言えば吊るした連中が居るか…」
それを聞いてツバサが気味悪そうに言う。
「そうだった…」
ヘリコプターから見下ろしてみると、俺が屋上からつるした奴らがいた。もぞりもぞりと動いているようで、どうやら吊るされたままゾンビ化してしまったようだ。まあ女を犯し続けていた奴らの末路なんてあんなもんだ。
飛行場へ、ヘリコプターを下ろしクキが操縦席からやって来て言う。
「さて、行くか」
「そうだな」
俺達がヘリコプターを降りると、どうやらどこからか入り込んだゾンビ達が、わらわらとこちらに向かってやってきた。それを見て俺が言う。
「さて、みんな用意は良いか?」
タケルが笑って言う。
「久々で血が滾るぜ」
「みんなでこの基地を綺麗にしてから出発するとしよう」
「「「「「「「「おー!」」」」」」」」
仲間達が自分が得意な獲物をするりと取り出して、ゾンビを見据えている。今ではあの小心者のユンですら、ゾンビなどなんてことはない。そして既に戦いのスタイルが出来上がっており、それぞれがそれぞれの役割をこなしながら次々にゾンビを倒して行った。
それを見てクロサキが言う。
「ははは…私は舐めていたのかもしれません。皆さん…凄すぎる」
「そうだ。もっと恐ろしい敵とも戦った事があるからな、ゾンビなどなんとも思っていない。以前は大量討伐は俺の仕事だったんだ。クロサキと一緒にレベルアップ訓練をして、これを思いついたんだよ」
「…見える範囲のゾンビはもう居なくなったみたいです」
皆は直ぐに俺の所に戻ってきて、ミナミが言った。
「ここはゾンビが少ないわ。早く街中に行った方がよさそうね」
「だな! 俺も物足りねえわ」
「これじゃレベル上がんない!」
そして俺はクキに言った。
「ミナミもタケルもツバサも物足りんそうだ。さっさと車両を見つけよう」
「だな。ゾンビ討伐ツアーの始まりだ」
そう言って俺達は車庫に向かい、自衛隊のトラックを見つけて全員が乗り込むのだった。




