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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第354話 女捜査官がレベルアップする件

 本来、レベル上げというものは、人数が少ない方が効率が良い。そのため俺一人がクロサキのレベル上げを手伝う事になり、二人で出発する事になった。女達はクロサキが早くこの雰囲気に慣れるようにと、いろいろ準備を手伝ってくれる。そして、これが良く分からないのだが、タケルがわざわざ新しいバイクを探して来てくれたのだ。


 出発前にタケルが言っていた言葉を思い出す。


「カワサキの750ssマッハⅢって言やあ、すげえ名車だ。カミナリマッパっつうやつだ!」


「カミナリマッパ?」


「いいだろ? しかもこのカラー! カナリアイエローなんて珍しいぜ」


 タケルがテンション高く話しているので、俺も気分が高揚して来た。正直なところ俺は、最新型のハイテクマシンの方が好みではあるが、タケルが俺に説明をしてくれるうちに、こういう古いのも好きになってしまった。


「おお、いい感じだな」


「ペンズオイルぶち込んどいたからよ。ブイブイ言わしてこいや」


「お前が何日もかけて探して来たバイクだ。大事にするよ」


「ゾンビ引き付けるような仕掛けもしてるからよ!」


 実は基地のガレージには、俺とタケルの趣味のバイクが何台も置いてある。だが今回新たな訓練に出る事が決まり、心機一転新しいのを見つけて来てくれたのだ。ぱりぱりとしたエグゾーストノイズになるように、マフラーを付け替えてくれたらしい。この音を聞きつければ、ゾンビを集める事が出来るだろうという、タケルのアイデアだ。


 走るバイクの後ろに乗っているクロサキが大声で聞いて来る。


「こんなに爆音で大丈夫なのでしょうか!」


「むしろゾンビを呼ばなきゃ、レベル上げにはならん。わざわざこのマフラーをつけたんだ」


「面白い事をしますね」


「こんなことを散々やって来たからな」


 そうして俺達はいつしか、セーフティーゾーンを作る事が出来ない、ゾンビゾーンへと突入していた。ゾンビゾーンとは機器の都合や設備の有無、通電の関係でプログラムを設置できない場所である。ゾンビゾーンでは相変わらずゾンビが闊歩し、危険すぎて普通の人間は生きていけない。もちろんこの周辺の生存者は救出したが、ゾンビは放置したままなのだ。


「街中に行くぞ!」


「はい」


 クロサキの装備は拳銃に警棒、背中にはサブマシンガンとやらがぶら下がっている。銃火器でのレベル上げはクキと自衛隊で確証済みだが、剣や棍棒で倒した時より伸びが悪い。だが微々たるレベル上げでも、塵も積もれば山となるため最初は銃で戦い、慣れてきたら警棒で討伐する予定だった。


 街の中心にバイクを止めて、タケルに言われた通りギヤをニュートラルにした。そしてタケルから教わった通りに、俺はバイクのアクセルを握って回す。


 フォンフォンフォンフォフォ! フォンフォンフォフォフォン! フォフォンフォンフォ!


 軽快なエンジン音が、ゾンビの町に声高らかに鳴り響いた。


 すると肩をトントンとされる。俺は一旦それを止めた。


「あの…ヒカルさんって暴走族の英雄だったんですか?」


「なんだそれは? ボーソーゾクの英雄とはなんだ?」


「なんというか、ハイブランドのスーツとは似つかわしくなかったものですから」


「これはな、タケルが俺に教えてくれた、単車コールというゾンビをおびき寄せる方法だ。わざわざこちらから出向いたら危ないだろう? これで集まって来るんだよ」


「わ、わかりました。すみません続けてください!」


 フォフォンフォッフォフォン! フォンフォフォンフォンフォフォフォフォン!


 俺が単車コールをしていると、廃屋のあちこちからゾンビが這い出て来た。それでもまだ距離がある為、俺は単車コールを続ける。


「あ、あの! まだでしょうか? だいぶいっぱい近づいてきましたけど!」


「まだだ」


 ぐるりと周りを囲まれてきたが、まだ距離がある。だがクロサキにとっては恐怖らしく、俺の腕をきつく握って来た。


「大丈夫なのでしょうか?」


「効率よくやる。いいか? 頭を狙える距離になったら撃て。距離があれば狙いが定まらん」


「は、はい!」


 そろそろゾンビ達の顔が見えて来たところで、俺はクロサキに告げた。


「やれ」


 パパパパン! パパパパン!


 流石はクロサキだった。恐怖にかられていても、正確に頭に命中させていく。そして連射し続けると、銃に不良を起こす事を知っているのか小刻みに撃っていた。


 冷静だな。最初に会った頃の仲間達のように動揺はしていない。


 ゾンビがバタバタと崩れるが、その後から次々にやって来る。うち漏らしがだいぶ近づいて来たので、俺がクロサキに言った。


「乗れ」


「はい!」


 バイクの後ろに乗ったのを確かめて、俺はバイクの前面に剣技を振るう。


「推撃」


 びちゃびちゃビチャ! 


 推撃は大きな物をどかす時に使っていたが、ゾンビに使うと吹き飛ばず前に破裂してしまう。だが俺達の進路が空いたので、俺はバイクのアクセルを回して突破する。


「いい感じだ!」


「はい!」


 そしてゾンビの群れから離れ俺がバイクを止めると、それを追うようにゾンビ達がやって来る。


「これを続けるぞ」


「わかりました」


 ゾンビ達が近寄って来たので、クロサキは再びマシンガンでゾンビを打ち始める。数としては一つくらいレベルが上がってもいい頃だが、やはり銃で討伐した場合はそれほど伸びないようだ。


 ぱぱぱカチ!


 クロサキは空の弾倉を捨てて、腰から新しい弾倉を取り出してつける。


「ちょっと銃身が熱せられてます。距離を取ってもらえますか?」


 そう言ってバイクの後ろに乗り込んで来た。


「わかった」


 俺はバイクを走らせて少しゾンビから距離を取った。群れから離れ、ゾンビはまばらになってウロウロしている状態だ。するとクロサキがバイクから降りて、腰の両脇から銃を抜いた。


 するとだいぶ恐怖心が無くなったのか、自らゾンビに近づいて至近距離から眉間を撃ち始めた。クロサキは二丁の拳銃を巧みに使い、至近距離からゾンビの間を歩いて冷静に眉間を撃つ。


「やはり素人とは違うか…」


 その動きに俺は感心していた。しばらくすると首にぶら下げたマシンガンに持ち替えて、しらみつぶしにゾンビを殺して行った。二個目の弾倉が無くなり、一度俺の所に戻って来る。


「マシンガンは終わりました。拳銃のマガジンがあと二つ。出来る限りやります。これをお願いします」


 そう言ってクロサキは俺にマシンガンを渡してくる。拳銃に新しい弾倉を装填して、再びゾンビ達に近づいて行った。一体また一体と倒れていくゾンビ、だが全ての弾を使い終わってもレベルアップはしていない。だがクロサキは拳銃を腰にさして、警棒を取り出した。


 ジャキン! と伸びた警棒で、迫りくるゾンビの頭を振りぬいている。


 ほう…。


 俺は感心していた。さっきまでは動揺していたようだが、冷静にゾンビを狩る事が出来ている。どうやら拳銃でキレイに始末しているうちに、慣れてきたようだ。だが拳銃の討伐速度より遅く、次第にゾンビの群れが増えて来た。


「クロサキ! 戻れ!」


「はい!」


 俺の元に走ってきて、バイクの後ろにまたがる。俺がアクセルをひねりバイクを走らせて、ゾンビの群れから離れて行く。安全な場所まで来て、俺は自分の背負っているリュックから、クロサキの拳銃の弾とマシンガンのマガジンを取り出して補給した。


「少し休むか?」


「いえ。大丈夫です」


「無理はしなくていいぞ」


「私もゾンビの世界でサバイバルをして生き抜いて来たんです。そこまで気を使っていただかなくても大丈夫ですよ。それにいざという時はヒカルさんが何とかしてくれるって、みんなが言ってましたし。私は皆さんの言葉を信じます」


「それは間違いない。大船に乗ったつもりでやってくれていい」


「ではお願いします」


「ああ」


 フォンフォンフォフォフォン! フォンフォフォンフォフォン! フォフォンフォン!


 単車コールにつられて再びゾンビがやってくるのだった。クロサキも先ほどのように動揺はせずに、冷静にバイクを降りてマシンガンを撃ち始める。同じようにゾンビを次々に倒し、拳銃を使って打ち倒して行く。すると拳銃の弾も切れたようで、後退しながら警棒でゾンビを倒して行った。


 その途中。突然クロサキが光り始めるのだった。間違いなくレベルアップした瞬間だった。

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