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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第351話 親友からの衝撃の助言

 俺達は自衛隊に隠れ、偵察と称しては破壊された銀行からドル札を集めまくった。回収したそれらは、自衛隊達が絶対に立ち入らない俺の部屋に隠してある。冗談半分で話していた事を、実践する為に本気で集め始めたのだった。


 俺の部屋にはタケルがおり、クローゼットに積み上げられたボストンバッグを見て酒を飲んでいる。


「やっべえよな。完全に犯罪者だ」


「俺だけが悪い訳じゃない」


「分かってるよ。仲間はみんな同罪だ」


「なんで俺の部屋なんだ?」


「正直な所、バレたとしてもヒカルに物申せる人は一人も居ねえからだよ。だれがお前を逮捕出来る?」


「なんとも後ろめたいな」


「でもみんなでやるって決めたんだ。行きつくとこまで行こうぜ」


「お前もたいがいだな」


 そう言って俺はタケルのグラスに酒を注いだ。するとタケルが瓶を取って俺のグラスにも注ぎ返す。琥珀色のその酒は、ドル札を集める時についでに回収して来た物だ。なんと俺達は、集めたドル札を肴にして酒を飲んでいるのだ。


「なんつうか、ハリウッド映画の悪役になった気分だぜ」


「悪党か…世界から見たら俺達はそうなるのか?」


「いや、むしろ見て見ぬふりして、日本という一国を滅ぼした連中の方がずっと悪い。まあ、それでも正義のようにふるまうだろうがな。まるで自分達は何も悪くないってツラでよ」


「見方を変えれば、という奴だな」


「そうだ」


 それは元傭兵だったクキが良く言う事だ。場所と立場が変われば、どちらが正義かは変わって来る。それに関してはこちらの世界も、俺の前世も変わりない。俺は世界を救う為に魔王ダンジョンを攻略しようとしていたが、結果、世界を滅ぼしかけていた。


 タケルは、一口くぴりと酒を飲んで言う。


「しかし大森ってさあ…、あんな気が弱そうなのに、考える事はエグいよな」


「面白い奴だ」


「ヒカルもそう思うか?」


「きっと仲間達が全員ゾンビになって死んだからな。その恨みが大きいんだろ」


「IT系の奴ってのは、もっとドライなんかと思っていたが、アイツは意外に情に厚いんだよな。その怒りも消える事はねえし、怒らせたら怖い奴なんだろうよ」


「まったくだ。だがこんな面白い事を考えていた」


「アイツなりの復讐なんだろ」


「そうだな」


 そして、その大森の気持ちには仲間達も同意している。人間ここまで徹底的に痛めつけられると、その復讐の念が強くなるのは当然だ。


 そんな話をしていると、タケルが唐突に話題を変えた。


「話は変わるけどよ」


「ああ」


「ヒカルは惚れてる女はいないのか?」


 意外な言葉に、俺は次の言葉を失った。


「…タケルは酔ってるのか?」


「まあ酔ってるけどよ。酔わねえと、こんな事こっぱずかしくて聞けねえだろ」


「なんで、今そんな事を?」


「いや、な…。皆がこの戦いの後を考え始めてるじゃねえか。マジでみんな取り返そうとしてるっつうか、ヒカルも戦いの先の事を考えた方が良いんじゃねえかなって思ってな」


「そうだな…」


「ヒカルは前の世界で、幼いころから戦い続けてたんだろ? この世界に来てからもずっと戦いに明け暮れてるじゃねえか。そんなのあんまりだと思ってよ、俺はお前には幸せになってもらいてえんだよ」


 酔っぱらってはいるが目は真剣そのものだ。まるで勇者パーティーのレインやエルヴィンのように、俺の身を心配してくれている。だが俺は気にしている事をタケルに打ち明けた。


「俺はこの世界の人間からすれば普通じゃないだろ?」


「はあ? なんだよそれ」


「俺が所帯を持つ相手は、こんなバケモノ相手じゃ嫌じゃないだろうか? バケモノを旦那に持ったと言われる相手の気持ちを思うとな」


 するとタケルが真顔で言う。


「お前をバケモノだ、なんていう奴は俺がぶん殴ってやるよ」


「いや、今のお前がぶん殴ったら普通の人間は死ぬ」


「ヒカルをバケモノなんて言う奴は死んで当然だ」


「そんなことはないさ」


「あるね。マジで殴ってやっからよ、そん時は言ってくれ」


「分かった…」


「それによ。ヒカルをバケモノだなんて思ってるやつは仲間にいねえし」


「それは伝わっている」


「だろ? そんで、もしどっかでバケモノだなんていう奴がいても、お前に惚れてる女らは全く気にしねえと思う。そいつに対して怒る事はあったとしても、嫌気がさして逃げ出す奴はいねえよ」


 それを聞いて俺は申し訳なさでいっぱいになる。確かにそうだろうと思うが、内心は嫌な思いをさせてしまうからだ。


「嫌な思いをさせたくない」


 するとタケルがにやりと笑って言った。


「ほんっっっとに、ヒカルは優しいよな。だからクキに優男って言われるんだぜ」


「だが…」


「だがもへったくれもねえ。そんなのは、なってから考えればいい」


「そうか…」


 煮え切らない俺の肩に腕を回して、タケルが耳打ちした。


「つうかよ、一人なら嫌な思いするのは辛いだろうけどよ…。いっぱいなら、嫌な事言われたとしても心強いと思わねえか?」


 一瞬タケルが言っている事が分からずに聞き返す。


「いっぱいって?」


「一人なら嫌だろうけどよ、四人も五人も六人も関係ねえと思わねえか?」


「何を言ってるんだ?」


「ヒカルに惚れた女を全員幸せにしてやるってのはどうだ? むしろみんな喜ぶかもしれねえぞ」


「何を冗談言ってる」


「いや冗談じゃねえ。つうか、そんな事をユミが言ってたんだけどな。女達の間でそんな事を話しているらしいぜ?」


「……」


 困惑して俺が黙っているとタケルが言う。


「まあヒカルの気持ちもあるからよ。それはお前が決めて良い事だ」


「混乱している」


「だろうな。俺も困惑すると思う、だが実は、ユミから伝えてくれねえかとも言われてたんだ」


「どう考えたらいいか分からん」


「まあ、今日初めて聞いた事だからな。だが、そんな事も頭の片隅に置いておいてくれ」


「…わかった」


 するとタケルがすっくと立ちあがって言う。


「んじゃ、今日はもう寝る。だけどそんな事もあるんだって、マジで考えておけよ」


「まあ、そうだな。もう寝ろ」


「ああ」


 そしてタケルが部屋を出て行った。だが俺はタケルに言われた事で頭がいっぱいになっていた。一体どういうことなのだろうか? みんなを幸せにしてやれ? まだ理解が追い付いていない。タケルに言われた意味は分かるが、感情がついて行かなかった。


 俺は手に持った酒瓶に残った酒を、一気に飲み干すのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 戦闘マシーンに感情が芽生えようとしているのですね!
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