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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第350話 未来にかける、したたかな夢

 自衛隊が監視衛星を使い、クロサキが保有していたデータの確認を急いでいる。地図に標されたファーマ―社の秘密拠点を衛星にて探索するらしい。


 その説明をヨシズミがしている。


「現在はっきりした情報はつかめておりません。ですが敵拠点を確定させたとしても渡航するのは危険です。海沿いから拠点まで陸路を行く事になりますと、あちこちで起きている紛争地帯を抜けねばなりません。また、各国の軍事衛星を破壊したとはいえ、レーダーは生きていますので航空機での侵入も危険です」


 それにクキが答えた。


「現状は仕方あるまい。まずは紛争地帯で暗躍するファーマ―社の痕跡を追うしかないんじゃないか」


「その通りですね」


 そこで俺が手を上げて聞く。


「ヨシズミ。もしどこかの陸地に上がったら、必ず紛争地帯を通らねばならないのか?」


「はい。例えば中東のここです」


 地図を指して言う。


「ここは周りが紛争地帯に囲まれており、恐らくファーマー社はここで実験しているのだと思います」


「なるほど。他には?」


「ヨーロッパの中央付近です。前から戦争をしていますから、格好の隠れ蓑になっていると思います」


「前から戦争を?」


「大国と小国が戦争状態になっていますが、小国のバックに大国が付いているため膠着状態に陥っています。大国が兵器を援助する際に、ここに入り込んでいるものと思われます」


「他には?」


「大国の深部にあるようです。どちらも紛争地帯ではありませんが、紛争地帯より潜り込むのは難しいでしょう。対空兵器が大量に待ちかまえていて、軍用機や不明機が近づけば撃墜されます。行くなら民間航空機を利用する事になります」


「わかった。ありがとう」


「いえ。では報告は以上です。何か見つかりましたらすぐにご報告いたします」


 ヨシズミの報告は終わった。俺達が部屋を歩いていると、ミオが俺に行って来る。


「ヒカル。どうにかして行こうと思ってる?」


 ミオは見透かしているようだ。


「そうだな。位置の確定が出来たら、すぐさま現地に飛びたいところだ…が…」


「どこに行けばいいか分からない?」


「そうだ。日本ですら知らない所は皆の世話になる事が多い。一度行ったところはだいたい覚えるが、標識とやらを見てもちんぷんかんぷんだからな」


「なら行くときは言って、私が道しるべになるから」


「海外は危険だ」


「ヒカルとなら大丈夫でしょ?」


「何が起きるか分からんぞ」


「なんと言っても私はヒカルを助ける」


 それを聞いていたツバサが言う。


「ちょっとー! 美桜。抜け駆けはいけないなー、ねえ南?」


「そうよ。もちろん私達も一緒って事よね?」


「それは…」


 するとマナが言う。


「現地で、ITを扱うのは誰がやるの? 必須でしょ?」


「確かに…」


 なぜか四人の女達は俺を囲んで話を始めた。それを見ていたクキが言う。


「旅行じゃないんだがな」


 するとそれに外野のユミが言った。


「あら? 世界はまだゾンビに汚染されて無いんでしょ? だったら旅行がてら行くのはありじゃなーい?」


「何処に敵が潜んでいるか分からないのにか?」


「でも…だれも私達が日本の破壊工作員だなんて分からないんじゃない?」


「確かに…どっからどう見ても、日本のチャラついたねーちゃんだもんな」


「チャラ付いたは余計よ!」


 するとクキはしばらく考えて言う。


「いや…まてよ。それありかもな、本当に観光客としていくのはありだろ」


「日本人だってバレたら大変かもだけど」


「いや、世界にも日本人は散らばってるし二世だっている。アジアのどっかの国の人間だっていったら、海外じゃ誰もわからんぞ。日本人に出くわさなきゃな」


「なるほど」


 そこでオオモリが言った。


「とはいえ、ファーマ―社秘密拠点の位置を、完全に確定しないとかなりのリスクですよ」


「そいつは自衛隊に任せるしかないだろ」


「まあ、そうですね…。あ…」


 オオモリが何かを思いついたようだ。それを聞いてマナが言う。


「なに? 今、なんか良からぬ事考えたでしょ?」


「いえ…忘れてください」


「なによー、言いなさいよ。面白そうなこと考えてたでしょ?」


 いつの間にかオオモリがみんなに囲まれている。


「な、なんですか? 学生時代のカツアゲ以来ですよこんなの」


「ほら。白状しちゃいな」


「わかりましたよ。怒らないでくださいね」


「誰も怒らないから」


 オオモリは気まずそうに話し出す。


「今…日本って完全に金融破綻してるじゃないですか? 銀行なんてあってないようなもんだし、だれも金を稼ごうとはしていませんよね?」


「そうね。生存者達は皆、復興の為、ボランティアのように自給自足をしているわ」


「いまなら、核攻撃された東京や周辺地域の銀行って、誰も管理してませんよね?」


「たしかに人は入れないわね」


「この先日本が復活したら、ネットワークも金融機関も復活するんじゃないですか?」


「するでしょうね」


「銀行のデーターベースが復活したら、お札のナンバーは控えられると思うんです。ですから今のうちに関東周辺の銀行からドルを大量に集めて、それを持って海外に行けば金やダイヤなどが買えます」


 皆がオオモリが何を言っているのか分からないらしい。そこでユミが聞いた。


「えっと、結論を端的に言ってほしいんだけど」


「現物をとにかく大量に保有してですね…」


 オオモリが悪い顔をする。


「なによ」


「僕が開発したAIウイルスで、世界の金融システムを破綻させるんです。データ上の金なんて価値を無くしてしまって、現物を持っている人らが有利な世界にしてしまうんです。日本のドルを持ち出して、マテリアルに交換してしまうというのは面白いかなって…」


 しばらく女達が沈黙して、ツバサが言った。


「わっるう! あんたそんな悪い事考えてたの?」


「ご、ごめんなさいい! 日本が復活した暁には、僕らは大富豪になっているという妄想をしてしまいました! 良くないですよね! 忘れてください!」


 だが皆はすぐに否定しなかった。そこでリコが言い出した。


「えっと…悪くないんじゃない…」


 するとそれを聞いたユリナもぼそりという。


「そうねえ…、私達こんなに大変な思いさせられたんだから、今後の人生は優雅に暮らしたってバチはあたらないかもしれないわ」


 ミオが困った顔で言う。


「ちょっと友理奈まで?」


 だがマナが言う。


「えっと、というか金融破綻させなくても、それはそれでお金持ちになれそうなんですけど」


 ツバサがうんうんと頷いている。そしてミナミが言う。


「そうよね…、既にヒカルも私も国宝の刀を私有化しているし、それと何ら変わりないかも。あとみんなで回収したお揃いの腕時計だって、めちゃくちゃ高級品よね」


 するとオオモリが元気になってきた。


「でしょ! 日本の店から取るのは悪い気がしますけど、海外から持ち帰るのは悪い気しませんよね?」


 そしてタケルが言った。


「大森ぃ!」


 オオモリの肩を組んで顔を近づける。


「は、はいぃぃ!」


「たまには、いいこと言うじゃねえか! 将来的には日本の為になるかもしれねえしな」


「あ、そうですか? まあもちろん僕の妄想ですけどね、もっと日本に良い事なにかあればなんでもいいんですがね」


 ヤマザキが最後に言う。


「大森君の言う通りかもしれん。復興後の日本を考えて、何が出来るかを考えるのは悪い事じゃない。それが個人的にお金儲けしたいという欲でも、日本の未来のためなら大いに結構じゃないか!」


 皆が賛成するのだった。


 だがミオが俺にぼそりという。


「ヒカル…正常な世なら犯罪なんだからね。正常じゃなくても犯罪だけど」


「そうか。だが皆が楽しそうにしているぞ」


「あくまでも想像で楽しんでいるだけだから」


 だが俺にはそう見えなかった。皆が口々にあれやこれやと、金儲けになる事や私利私欲を満たすのにどうしようかの話をしている。だが俺はそれでいいと思う。俺も前世の魔王ダンジョンでは、希少な魔獣の素材を売りさばいで大金を稼いでいた。ようはあれと同じ原理だ。


 こうやって皆が、将来の夢を声高らかに口にするようになった。それが俺は無性に嬉しく思わずにやにやとしてしまう。それを見たタケルが言う。


「なんだ、ヒカルもそう思うか?」


「この服や、美味い酒も手に入れたいな」


「大いに結構じゃねーか! その時はその場で酒盛りしようぜ!」


「ああ」


 俺はそこで初めて気が付いた。


 ゾンビで滅びかけた日本が、前世で言う所の魔王ダンジョンにあたり、ダンジョンの外の平和な世界がこちらでは海外みたいなものだ。だがその外の世界が今ゾンビの脅威に晒されている。その脅威を取り除く為にも、俺達はファーマ―社を止めなければならないのだ。


 ポータルがあれば、直ぐに外に行けるのだがな…


 俺は一人そんな事を考えるのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 寄ってたかって日本をぶっ壊しておいて、いざ自国が壊されるのはダメなんて主張は通りませんよね まー発想がテロリストですが、みんなでポストアポカリプスしようぜ!
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