第348話 優しい奴ら
俺達はクロサキのアジトから、パソコンや物資を回収し基地に戻って来た。そのほかのパンッパンに詰め込んだ買い物袋の束を、皆が持っているのを見てカブラギが聞いてくる。
「ど、どうしたんですそれ!」
そう言われて、ハルノと部下の目が泳いでる。だがそれにユミが堂々と答えた。
「黒崎さんが潜伏していた場所がショッピングセンターだったんです。ここには子供達もいますしね、仲間達の着替えも無いと困るので回収して来たんですよ!」
「そう言う事でしたか! して情報はどうなりました?」
「先に大森君のデーター室に運んでます。閲覧をしたい時はデーター室にどうぞ」
「わかりました」
そうしてカブラギは部屋を出ていく。それについてハルノと部下達が出ようとした時、ユミが彼らを呼び止めてこっそり言った。
「あとで部屋に取りに来て」
「分かりました。ありがとうございます」
仲間達が親指を立てて笑顔で合図をした。それを見てハルノ達も親指を立てながら部屋を出ていく。
そこでミナミが言う。
「行けなかったみんなと、子供達も呼んでくるね」
そう言って部屋を出ていった。俺達がテーブルの上に荷物を置いて待っていると、タケルが俺に言う。
「ヒカルは残念だったな」
「まあ仕方ないさ」
それを聞いたマナが言う。
「ル〇ヴィ〇ンにはアウトレット無いのよね。値引きはしないブランドだから」
「まあ仕方ねえさ! また今度どっか探しに行こうぜ!」
「わかった」
それを聞いていたクロサキが、俺に聞いて来る。
「ヒカルさんの、それって…こだわりなんですか?」
「これは仕立ても良いし、なんと言っても見栄えが良い。なんというかやる気が出てくるんだ」
「…プッ!」
クロサキに笑われる。俺は何かおかしなことを言っただろうか?
するとミオが言う。
「確かにね。最初に見る人は違和感があるわよね」
ミオまで言った。俺は自分の体を見下ろして、どこに違和感があるのかを探してみる。だが何処からどう見ても、とても見栄えのいい形をしている。
「どこがだ?」
タケルが苦笑いして言う。
「あんまヒカルを困らせんなよ。俺はカッコいいと思うぜ! こんなスタイリッシュな奴がいるんだなって感心したもんだ」
するとミオが慌てて言う。
「私だってカッコ悪いとは言ってないわ! もちろんカッコイイと思ってるし!」
あまりにも大きな声を出して言うものだから、みんなが唖然としてミオを見ると、ミオはハッとしてみるみる顔を赤くした。
クロサキがミオに言う。
「うふふふ。可愛らしいです」
「いえ、そんな」
「本当に。でもヒカルさんの服が本人のこだわりだったなんて。私はそのせいで…」
と言いかけて口をつぐむ。俺はその先を促した。
「言ってくれていい」
「ごめんなさいね。そのせいで教祖様だと思ったんです」
「この格好のせいで?」
「そう。だって御伽噺の英雄は、ハイブランドのスーツなんて着てるわけないし。そもそもハイブランドのスーツで身を固めているイケメンなんて、胡散臭いと感じたんです」
それを聞いていた仲間達が、みんな大きく頷いている。どうやらそれに関しては、皆が共感を持っているようだ。
「でも悪い気持じゃないです。きっとあなたのような年齢で、そのブランドを着ている事が違和感だったんです」
そしてタケルが言う。
「まあ、確かにそう思うのも無理はないか。どう考えても高級ホストか、青年実業家かって感じだもんな。まあでも、カッコよくないっすか? こんなスタイリッシュな奴が、少年漫画のヒーローのような力を持ってるんですよ?」
「それはわかります。カッコイイなって思います。本当にスタイリッシュで」
「脱ぐともっと凄いんだぜ!」
「ははは、そうなんですね…」
するとユミがタケルの頭を叩く。
「セクハラ! 黒崎さん困ってるじゃない」
「だってよう、本当の事だし! みんなで一緒に風呂に入った時なんざ、お前ら全員ほれぼれして眺めてたじゃねえかよ!」
「あら? でも…それは…美しいものを見たらねえ、美桜?」
「わ、私は…」
「み・て・たよねー」
「み、見てた…」
そんなやり取りを聞いていたクロサキが言う。
「なんか、すっごくいいですよね。みんな変に気を使う訳でもなく、思った事を話せる関係性で」
そしてユリナが答える。
「だって、戦友ですから。ここにいる皆が、日本を復活させるために戦って来た戦友」
「私も仲間に入れますかね?」
「もちろんですよ」
そこにミナミが、仲間達と子供を連れて来た。そこでユリナがみんなに言う。
「みんな! 新しいお洋服だよ! 好きなのえらんでいいよー!」
「「「「「わーい!」」」」」
広い食堂のテーブルを繋げて、その上に回収した服を広げていく。子供達が一斉に群がり、それぞれの気に入った服を取って行った。テーブルが片付いたところでユリナがもう一度言う。
「じゃあ今度は大人の番だよー」
そう言ってテーブルに服が出され、皆が気に入ったものを選んでいくのだった。クロサキもそれに混ざり、自分が回収した服を手に取っている。これから一緒にやっていくうえで、こういうことは非常に重要な事だ。楽しみも苦しみも一緒に分かち合う事で絆が強まっていく。
と、俺達がワイワイやっているところに、オオモリが飛び込んで来た。
「ヒカルさん! 皆さん! 来てください! 黒崎さんの情報にかなり有益なものがありました!」
するとタケルが言う。
「ばーか。今いい雰囲気だったんだぞ。お前空気読めっつーの!」
そう言ってタケルは、オオモリの頭をわきの下に挟んでぐりぐりするのだった。




