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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第344話 謎の女の正体

 謎の女は自分の事を、『モグラ』だという。俺には何の事か分からないが、自衛隊員達も良く分からない表情をしている。だがクキがポツリという。


「潜入か?」


 女は一瞬どう言うか迷ったのか、少し間をおいて言った。


「そう」


 俺がクキに聞く。


「クキ、潜入とはどういうことだ?」


「スパイって事だ」


「詳しく教えてくれ」


「それは、これからこいつに聞いた方がいいだろうな」


 自衛隊員もクキも俺も、ただ黙って女の次の言葉を待つ。


「私はあなた達を完全に信用はしていない。だけど、他国の諜報と言う訳でもなさそうだし、何から話したらいいか迷っている」


 迷う女に、カブラギとハルノが言う。


「ならまずは自己紹介をした方が良いだろう。私は自衛隊空挺団の鏑木二佐だ」

「私は自衛隊第一空挺団の春野三尉です」


 順番で女の目がクキに止まったので、クキがそれに答えた。


「あー、俺は元自衛官だ。傭兵をやっていたがな」


 それを聞いた女が言う。


「…傭兵…ですって?」


「そうだ。元自衛隊の特殊作戦群だったが、やめて傭兵になった」


「!」


 女は一瞬、表情をこわばらせてクキをじっと睨みつける。


「なんだ? 俺の事を知っている素振りだな」


「なんで、あなたがこんなところにいる? あなたがここにいるって事は、この人達は傭兵なんじゃない?」


「いいや。俺はこの人らとは直接関係がない。彼らは現役の自衛官で、俺は元だからな」


 女は更に目つきを鋭くさせて言う。


「データでは見た事あったけど、随分と表情が違うようだ」


「データってなんだ?」


「……」


「なんだかわからんが、俺はあんたを知らんぜ」


「あなた、ファーマ―社と通じているんじゃない?」


 そう言われて、俺達は顔を見合わせた。恐らく、クキがファーマ―社の雇われをやっていた事を言っているのだろう。俺達は既に知っているが、この女はそこまで知らないようだ。


「ファーマ―社から仕事をもらってた事はあったさ。だが途中で奴らのやっている事に気が付き、やめさせてもらった。何の因果か、今はこのヒカルと一緒に走り回ってるって訳だ」


「それを…信じろと?」


 するとカブラギが言った。


「九鬼隊長は、命を懸けて日本中の人達を救っている。もちろんファーマ―社のやっていた事を確認せずにやっていた事は、責められる事かもしれないが、今は日本の復興の為に命をかけているんだ」


「……」


 女は突然口をつぐみ、俯き加減になり動かなくなった。それに対しクキが聞いた。


「あんたは何故、俺の事を知っている?」


 女がまた、じっとクキの顔を見て言う。


「あなたもマルタイの一人だからよ」


「専門で言わんでくれ。どういうことだ?」


「捜査対象の一人だったという事よ」


「俺がか?」


「そう。私の管轄じゃないけど」


「どういうことだ? もしかしたら俺を追っている奴がいるって事か?」


「そうよ」


「という事は、あんたファーマ―社のスパイだったのか? ファーマ―社の仕事を打ち切って逃げた俺を、追っている奴がいるって事か?」


「そうじゃない」


「どういうことだ?」


 すると女は、意を決したような表情で言う。


「まあ、あなたがまだファーマ―社に雇われていたとしたら、今ごろ私は生きていないでしょうね。アイツらは敵に容赦ないから」


「どういうことだ? あんたはファーマ―社じゃないのか?」


「私は…公安よ」


 それを聞いてクキだけじゃなく、カブラギもハルノも自衛隊員達もざわついた。どうやら女は衝撃的な事実を話したらしい。


「サツだと?」


「そう、公安機動捜査隊、NBCテロ部隊の隊員よ。表立って言う事は法令違反だから、言わなかっただけ。これで、特定秘密保護法違反になるわ」


「なんだって…」


 皆が驚いている。


 クキが言う。


「それこそ嘘じゃないのか?」


「本当よ。私は公安機動捜査隊、NBCテロ部隊の隊員で、ファーマ―社に潜入捜査をしていたわ。ファーマ―社の社員として潜り込んでね。本来は人前に正体を晒してはいけないの、そして所属も非公開よ」


「それで…話をしなかったと?」


「ええ」


 そこでカブラギが聞いた。


「どうして、ファーマ―社の社員なんかを連れて、ファーマ―社の私軍が陣取っていた羽田なんかに居たんです?」


「それは独断の作戦だけど、彼らをオトリにしてファーマ―社の軍隊に接触できないかと動いていただけ。そこにそこの、謎の教祖様が来たってわけ。ファーマ―社の手先かもしれないし、信用できなかったから何も答えなかったわ」


「俺は、教祖じゃない」


「さて? どうか知らないけど、警察は疑うのが仕事だから」


「ややこしい仕事をしているのだな」


「な、何を言っている…」


 俺の答えに女が困惑している。だが話を戻すためにカブラギが言った。


「恐らくもう警察は壊滅している。あなたは独断で動いていると?」


「東京は核で焼けたし、私が見にいった福島の原発跡地は跡形もなく消えていた。この日本では、ゾンビ以外にも何か恐ろしい事が起きているわ」


 …その福島の原発跡地は、俺が吹き飛ばした記憶がある…。だがここでそれを言うと、女がまた怪しみそうだ。


「確かに東京は核で焼けた。だが福島は…」


 クキが言いかけた時、女が言った。


「恐らくファーマー社が証拠隠滅に、土地ごと崩壊させたんだと思う」


「まてまてまて。福島の研究所は、そこの金髪イケメンが究極の技で沈めたって聞いてるぜ」


 女は深くため息をついた。


「…洗脳が深いようね」


「いや、俺は洗脳なんかされていない」


 今度はカブラギが言った。


「本当の事なんです。彼は日本刀を使って、他国の軍事衛星を富士山の上から撃ち落としたんですよ」


 真剣な顔で言うと、女が唐突に笑い出した。


「プッ! あーはっはっはっはっはっ! 本当に宗教ね! 一体何を言っているの? 自衛隊も毒されたと言うわけ?」


 だがハルノが真剣に否定する。


「な、確かに信じられない事ですけど、このまえ大陸から日本に泳いで戻ってきたんです。そんな人なんですよ!」


 女は真剣な顔になり、怒ったように言う。


「本当の事を言った私が馬鹿だった。屈強な筋肉隆々の男達が、そろいもそろって、そんなひょろっとしたイケメン優男に騙されるなんて…。まあそれだけ日本が大変な状況になっているって言う事か…」


 するとカブラギが呆れたような表情をして俺に言った。


「ヒカルさん。何か…技を見せる事はできますか? こんな事に力を使わせるのは申し訳ないですが」


「日本刀は貴重だから、バットで良ければいくらでも」


「構わないと思います」


 女は呆れた顔で言う。


「ホームラン競争でも見せるつもり? 頭のおかしな連中に私は真剣に答えてしまったって訳だ」


「見ればわかる!」


 自衛隊員達が女の手錠を外し、後ろ手にかけ直した。そのまま俺達は再びソロゾロと、外に向かって歩いて行くと、ばったりとタケルとミナミとアオイに会う。


「ん? どうしたんです?」


「タケルいい所にいた。バットをくれ」


「わかった」


 そしてタケルが金属バットを持って来てくれる。俺がバットを持って行こうとすると、タケルとミナミとアオイもついて来た。外に出て演習場に向かって歩き、周りに何もない所まで来た。


 クキが俺に言う。


「そのバットを彼女の足元へ」


「わかった」


 コロンと転がす。クキが女に言った。


「踏みつけて見ろ、ただのバットだと分かる」


 女が踏みつけて言う。


「確かにバットね。というか馬鹿らしいわ、何をしようと言うの?」


 カブラギが自衛隊員に言う。


「乗用車を持ってこい!」


「了解!」


 しばらくすると、自衛隊員が乗用車で乗りつけて目の前に置いた。それを見て、女が笑う。


「はあ? 金属バットで軽自動車をボコボコにするってこと?」


 だがクキが言う。


「しっかり見ておけ。一瞬だ」


「はあっ?」


 女はため息をつき、まるで狂人たちに渋々付き合ってるんだというアピールをしていた。


 俺は金属バットを剣のように構えて、軽自動車に向かう。


「フレイムソード」


 金属バットに俺の魔力が流れ、大きな炎となって軽自動車に襲い掛かった。あっという間に火に包まれて燃え盛る。それを見たタケルが言う。


「ガソリンに引火したら危ないんじゃないか?」


 確かに。


 俺は燃え尽きた金属バットを捨て、日本刀を抜き去って剣技をくりだした。


「推撃!」


 バゴン! という音と共に、軽自動車が演習場の中央に向かって百メートルほど吹き飛んだ時、空中でいきなり爆発した。どうやらガソリンに引火したらしい。


 カブラギが女に言う。


「これでどうかね?」


「…あ、ああ…、なにが…えっ? はあ?」


 女は何が起こったのか分からずに、目を白黒させて遠くで燃えている軽自動車を眺め続けるのだった。

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