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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第342話 正体不明の女

 俺達が何を聞いても女は口を噤み、仲間だった三人の男達が女を責め始める。


「おい! あんた! 何か知ってるんなら答えてくれよ。俺達はもうファーマ―社じゃないんだ。こんな日本にしたのが、俺達が勤めていた会社だというなら、庇い立てする必要なんてないはずだぞ」


「そうだ。あんたが話さないと、俺達まで疑われる」


 だが女はぎろりと、三人の元ファーマ―社社員を睨むだけで、何も話さなかった。


 そこでユリナが言った。


「あなたはファーマ―社の何に関係していたの?」


「……」


「こんな状況じゃ、どうする事も出来ないわよ?」


 しかし女は何も言わない。ただひたすら、口を真一文字にして俯くだけだった。


「困ったわね」


 しばらくこんな押し問答が続いているが、女は一向に話す事は無かった。


 今度はユミが聞く。


「申し訳ないけど、そんなに優しい結果は待っていないと思うわ。なんでこんなところに居たのかも教えてもらわなきゃいけないんだけど、日本の法律もあなたを守らないわよ」


 すると女がようやく顔を上げて言う。


「むしろ、あなた達はなんでここに来た?」


 それを聞いたヤマザキが答えた。


「突き止めるためだ」


「なにを?」


「ファーマ―社の重要拠点をだ」


「……」


「既に自衛隊達が、日本中のファーマ―社拠点を調べ始めている」


「えっ?」


「なんだ?」


「自衛隊が機能してるですって?」


「そうだ。あんたはセーフティーゾーンから来たんじゃないのか?」


「そう…」


「その三人から状況は聞いていないのか?」


 女は男三人を振り返る。


「な、なんだよ。セーフティーゾーンの話はしたろ」


「自衛隊の事は聞いていない」


「それがそんなに重要か」


 すると…女がヤマザキに聞く。


「公安はどうなっているか知ってるか?」


 だがヤマザキは首を振る。


「わからん。今組織として機能しているのは自衛隊だけだろう」


「そう…」


 女が考えるような素振りをするので、俺達は言葉を待っている。だが捕らえた三人の男が、たまらずまた騒ぎ出した。


「おい! 応えてくれよ! 俺達はあんたの巻き添えで死にたくない」

「そうだそうだ!」

「早くしてくれ!」


「黙って」


 女が何かを思いついたように、ヤマザキに言った。


「ファーマ―社の重要拠点を突き止めてどうするつもり?」


「悪事を辞めさせる」


 それを聞いた女が大笑いした。


「プッ! あはははは! あなた、ファーマ―社がどれだけ巨大な企業か知ってる?」


「もちろんだとも」


「どうやってやめさせるつもり?」


 その問いに一瞬ヤマザキが詰まりそうになるが、俺が割って入る。


「拠点を突き止め、そこに行って全てを叩き潰す」


 俺の言葉を聞いて、驚いたように目を真ん丸にして女が言った。


「何言ってる? 彼らは軍隊を持っているし、世界の多くの国を金で支配している。世界のメディアは全てファーマ―社の息がかかっているし、世界の政治家達も全て彼らから金を貰っている。インターネットの情報も操作しているし、巨額の富を使って世界を思うままにしようとしている。そんな巨大組織をどうやって叩き潰すつもり? 御伽噺の英雄でもあるまいし!」


 だが、それを聞いて、俺以外の仲間達が一斉に大笑いする。


 クキが言った。


「まったくだ! あんたの言う通りだな! 御伽噺の英雄がいなければこんな話はあり得ない事だった」


「えっ?」


「本当にそうね。御伽噺の英雄がいてくれなきゃ、どう考えても絵に描いた餅よね」


「あなた達…」


「マジだぜ。御伽噺の英雄がいるなんて誰も思わねえもんな!」


「何を言っている! 馬鹿にするのもいい加減にして! 私のこれまでを何も知らないで、へらへら笑って! これだから日本人は馬鹿にされるのよ!」


 それを聞いたミオが真顔で言う。


「馬鹿にされてたわ。散々コケにされて、沢山の人を殺されて、それでも必死に生きている人たちがたくさんいる。あなたが言う馬鹿な話が、その大勢の人の命を救ったのよ。日本は今、生まれ変わろうとしているの、あなたが馬鹿らしいと思う事が現実に起こりつつあるの」


 すると女が馬鹿にするように笑って言った。


「ああ、この人達が言っている事か」


 ファーマ―社の社員三人を見て言う。


「な、なんだよ。俺達はありのままを言ったんだ」


「わかってるわ。あんたらも、この人達も、何かの宗教に毒されているんだから。ゾンビを止めて、更に体内に巣くうゾンビ因子を取り除く教祖様がいるんでしょ?」


 すると男が言う。


「ば、馬鹿いえ。その教祖様ってのがこのお人だよ」


「は?」


 女はめっちゃ馬鹿にするように俺を見る。


「あなた外国の人? そうやって人を騙しているの?」


 コイツは何を言っているのだろう?


「騙してなどいない。それよりも聞きたいことがある。なぜお前は、セーフティゾーンにいなかったのにゾンビ因子が体内に無いんだ?」


「え…」


 ファーマ―社の男の一人が言う。


「ほらな。分かるんだよ! 体内にそれがあるかどうか!」


「うそ」


「本当だって!」


 だが女は、俺達やファーマ―社の社員を、怪しい人間を見るような目で見る。


「変な宗教にかぶれて。こう言う状況だと、そんなおかしな宗教が出るのは充分あり得ることだけど」


 どうやら全く話を聞く耳を持っていないようだ。


 そしてクキが言った。


「仕方ないな。ここには情報はないようだし、基地に連行して尋問を続けるしかないだろう」


 結局四人を縛り上げたまま、基地に戻る事になった。ヘリコプターに乗り込み、空に浮かんでも女は口を開く事は無かった。


 そしてミナミがこっそりとミオに言ってる。


「完全に私達が宗教に入ってると思われてるね」


「そうみたい。まあ状況を知らない人が聞けば、分からないでもないけど」


「だよね…」


 すると男達の一人が言う。


「なあ、俺達をどうするつもりだ? まさか、殺したりしないよな」


 ヤマザキが答えた。


「もちろんだが、あんたらがセーフティーゾーンで生きるのは難しいだろうな。いったん基地に行って、沙汰が決まるまで独房に入ってもらう事になりそうだ」


「そんな…」


「致し方あるまい」


 それから俺達が基地に着くまで、四人が口を開く事は無かった。もちろん俺達が彼らを殺すような事はないが、彼らはもしかしたら殺されると思っているようだ。ヘリコプターが下りたって、自衛隊に説明をすると、四人は案の定独房に連れていかれてしまうのだった。

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