第338話 仲間達からの癒しの時間
基地に帰ったら、心配していた仲間達が一斉に飛び出して来る。自衛隊のヘリコプターは再び富士山に飛び去って行ってしまった。まだいろいろとやる事があるらしい。
「「「「ヒカル!」」」」
ミオとミナミ、ツバサ、マナ、おまけにアオイが俺にがっしりとしがみついた。
そしてユリナが言う。
「良かった…ヒカル。無事だったのね」
「問題ない。少し魔力切れを起こしただけだ」
「それって初めてじゃない?」
「究極奥義を発動させる為、魔力を一晩中解放していたからな。全部を出し切って意識を失った」
するとミオが言う。
「無理はしないって言ったじゃない!」
「してない」
するとミナミがグイっと引っ張って言う。
「どこがよ!」
ツバサとマナも言った。
「そうよ。意識を失ったって聞いたわ」
「そこにあんな大雪が降ったら、心配もするわよ」
「寝てただけだ」
するとタケルが言う。
「わりい! 俺が大袈裟に騒いじまった。だけど本当にみんな心配したんだよ」
「すまん」
だがクキが仲間達に言った。
「コイツは神の力を振るったんだ。それが数日の睡眠で治るんだぞ、心配するだけ疲れるってもんだ」
そのクキにヤマザキが言った。
「そう言う九鬼さんも、いよいよまずいんじゃないか? と言ってたよね?」
「言ってたか?」
するとみんながうんうんと頷いていた。クキはバツが悪そうに頭をかいている。俺は女達をそっと押し、足にしがみついていたアオイを抱き上げた。
「心配させて悪かった。だがみんなの応援で頑張れたよ、だからアオイも泣かなくていい」
「うん」
そしてユンが言う。
「ねえねえ。せっかく作った料理冷めるしぃ。ヒカルっちもお腹減ったって言ってんじゃん」
「そうだわ」
「はやくはやく!」
食堂に連れていかれると、タカシマやミシェルも待っていた。
「帰って来た!」
「よかったわ」
「待たせた。そして良い匂いだな」
するとミシェルがニッコリ笑って答える。
「みーんなで作りました。ごちそうですよ」
大きなテーブルをくっつけて、その上に所狭しと料理が並んでいる。見たことも無い料理もあり、なんとも言えないいい香りが漂っていた。
ぐぅうぅぅ! と腹がなる。
リコが言う。
「とにかく、早く食べて! 死にそうなんでしょ!」
「死なん。が、死にそうなくらいに腹は減っている」
「牛もニワトリも採れたてを使ってるんだから」
ぐつぐつと煮えたぎる鍋と、茶色の塊が盛り付けられた皿、焼いた牛の肉に、なんと生の野菜まで並んでいる。
「座って座って!」
俺が座ると、周りに女達が陣取る。
「食べて!」
俺は珍しい料理に目を丸くして聞く。
「ミオが持っているそれはなんだ?」
「生卵よ。今は各地でニワトリの養殖も再開してるの。まあ、まだまだ貴重だけど」
「そんな貴重なものを」
「自衛隊の人たちがヒカルにって集めて来てくれたの」
すると反対に座るミナミが、皿に盛りつけた茶色い塊をハシでつかみ、俺の口元に持って来た。
「はい、あーん!」
「自分で食えるが」
「いいから! あーん!」
パク! と口に入れると、周りの皮がぱりぱりとしていて中から肉汁がしたたり落ちて来た。コイツは美味い。いつもの保存食を加工した食い物や、野生の牛を焼いただけのものとは違う。
「美味い!」
「冷凍じゃない唐揚げよ。新鮮な鶏肉から揚げたんだから」
「もっとくれ」
「はい、あーん」
俺がもう一個それを口に入れて噛んでいると、次はミオが皿に割った生卵に、鍋からすくった肉を入れて俺に差し出してくる。
「はい。こっちも! あーん」
「ああ」
それを口に入れた瞬間、なんとも言えないうまみが口いっぱいに広がった。
「美味い!」
「これも全部、天然の物で作ったすき焼きよ! 野菜も卵も肉もぜーんぶ貴重な、新鮮な物ばかり」
「たまらん…」
「はい、あーん」
俺は次々に食っていく。今度はご飯の上に何かが乗っているひとつまみの食べ物を、ツバサが俺に差し出して来た。
「あーん」
パク。…これはこれでさっぱりしていてうまい。
「漁師さん達が湾内で獲ったったおさかなだって。それで作ったお寿司よ」
するとヤマザキが言う。
「まだ新鮮な魚介が出回ってはいないからね。これも自衛隊の人らが持って来てくれたんだ」
「そういうことか」
すると今度はツバサがスプーンに乗せた白いものを差し出して来た。
「ほら、こっちも」
パク。
「ほっほっ」
「熱かった?」
「だが美味いな」
「牛乳も手に入ったからね、ポテトグラタンを作ったのよ」
「美味い」
「じゃあもう一回。ふーっふーっ。あーん」
今度はいい感じの温度になっている。俺は一切、手を使わずに口に美味いものを詰め込まれ続けた。
「あの。もう食わせなくていいぞ、みんなも食いたいだろう? 俺の事は良いから…」
「「「「だーめ」」」」
するとユミが笑って言う。
「モテ男は辛いわねえ。でも心配させた罰だわ、みんなが満足するまで付き合って」
「「「「はい、あーん!」」」」
仕方ない。俺はされるがままにしておくしかなかった。すると今度はヤマザキがにやりと笑って、俺に酒の瓶を見せた。
「それは?」
「凄いだろう? これは未セーフティーゾーンで回収した奴だ」
そう言ってヤマザキがグラスに酒を注ぎ俺に渡してくる。
「ほら」
「ああ」
それを飲むと、めちゃくちゃ深みがあり、それでいて、こってりした料理をさっぱりと流し込んでくれる。しかも後味がいい。
「美味いな」
「ロマネコンティだよ。めっちゃくちゃ高級な酒だ。これ丸ごとやる」
そう言って酒瓶を俺の前に置いた。
すると空になったグラスに、ユリナが酒を継ぎ足してくれた。
「まだあるからね」
俺は美味い料理を食いながら、次々に高い酒を飲んだ。ただ飲むのも美味いが、良い料理と一緒に飲む酒はまた格別だった。体の芯から、エネルギーが漲って来るのを感じ取る事が出来た。
「力が湧く」
そしてタケルが言う。
「おい! みんな! ガンガン、ヒカルにガソリン入れろ!」
「「「「「「「はーい」」」」」」」
うれしかった。もちろん前世で戦った後に、四人で酒を飲むことはあった。だがこんなに至れり尽くせりで、感謝の気持ちに包まれながら酒を飲むのは初めてだ。しかも空になった鍋が下げられて、次の料理が運ばれてくる。俺が目を白黒させているとミシェルが笑って言う。
「ヒカルは今日はキングね。しっかりと浸ってみんなの気持ちを受け取らなくちゃ」
「十分すぎるほどだ」
オオモリが言う。
「ヒカルさんのおかげで、僕もこんなにうまいものにありつけてます。あざーっす!」
「なんだお前。飲んでんのか?」
タケルが聞くとオオモリは笑って答える。
「だって、めでたいじゃないですか。本当に凄い日になりました」
それを聞いて俺が言う。
「そうだな。オオモリのシステムは凄かった。おかげで一晩で人工衛星を狩り尽す事ができたんだ」
タケルがオオモリの背中をバンバン叩いて言う。
「マジでお前も役に立ったぜ!」
「嬉しいっす!」
するとクキが少し真面目な顔をして言う。
「あんちゃんよ。ここに自衛官が居ないから言うけどな」
「はい?」
「おまえ、危険人物だとマークされてるぜ」
「えっ! ぼ、僕がですか!」
「ここだけの話だがな」
「み、みんなのいる前で言っちゃったじゃないですか!」
「いいだろ。俺も今は自衛隊じゃないし、ここにいるのは仲間だけだ」
「だ、だと僕はどうなります?」
「一人であんまり自由には動けんかもな」
「そんなあ…」
そして俺はクキに聞く。
「俺とならどうなんだ?」
「ヒカルと一緒なら誰も文句は言わんさ」
するとオオモリは半分泣きそうな声で言う。
「ヒカルさーん。僕は一生ヒカルさんについていきますぅ!」
「別に構わんが」
それを聞いたユミが威圧的に言う。
「それはだめよ。ヒカルはヒカルの人生があるんだから」
「も、もちろん邪魔はしません!」
「ふーん」
突然オオモリが立ち上がって言う。
「あの! ぼ、僕も頑張りましたよね!」
タケルが答える。
「だな」
「そ、それじゃあ! 僕も愛菜さんにあーんを!」
「馬鹿ヤロ―! お前には十年はええ!」
タケルはハシで唐揚げをつまみ、グイっとオオモリの口に突っ込んだ。
「む、むぐぐ」
「俺がたーんまり食わしてやっからよ!」
「じ、自分で食べます!」
「「「「「「「「「あははははははは!」」」」」」」」」
なんだかんだといいながらオオモリも笑っている。俺は、仲間とのこの時間を過ごすために戦ってきたのだと実感した。これからも続くであろう戦いの為に、今はゆっくりと英気を養う事にするのだった。




