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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第337話 天変地異が起きた跡

 俺は人の気配と物音で起きる。ざくざくと何かを掘るような音がしていたが、ガンガンと何かが扉にぶつかった。どれだけ眠っていたかは分からないが、ここの空気がだいぶ薄くなっている事がわかる。


「ここだ!」


 人の声が聞こえたかと思ったら、大勢が何かをかき分ける音が聞こえて来る。とても慌てているように聞こえるが、何か大変な事でもあったのだろうか?


 俺が扉に手をかけようとすると、外側からがらりと開けられた。


「ヒカル!」


 タケルが顔をのぞかせ、腕を突っ込んできて俺をグイっと引き上げた。


「ど、どうした? 慌てて! 試験体でも出たか!」


「違うって、お前が心配でみんな駆けつけて来たんだ!」


「俺? 俺は問題ないぞ」


 他の手も入ってきて、俺はずるずると地上に出された。だが入った時と全く感覚が違う。地表まで、だいぶ遠いのだ。


「なんだ?」


 俺が地表に出されると、あたりは真っ白の銀世界になっていた。


「あのあと、いきなり富士山に大雪が降ったんだよ。まだ夏が終わったばかりだと言うのに、大量に降って来やがったんだ」


「ああ、それか」


「ああ、それかって…なんだよ」


「空間支配魔法を使ったからな、恐らく周辺の気候が狂ったんだろう」


「そう言うのは先に言っとけよ! 死んだかと思ったじゃねえか!」


 周りにはクキとカブラギ達、自衛隊員達もそろっている。


 カブラギが言った。


「救助しに来ましたよ。ヒカルさん」


「それはスマン事をした」


「周辺を数メートルも掘り進んでやっと見つけたんです」


「自力で出れたがな」


「雪が何十トンも積み重なってるんですよ」


「問題ない」


 するとタケルが言う。


「魔力切れとか言ってたからよ。万が一があったらヤベエって思ったんだ。しかもここを掘り当てるまで二日以上かかってるんだ!」


「そんなに寝ていたか」


「そうだよ! その間ずっと音沙汰がないから死んだかと思ったんだ!」


 するとクキが苦笑いしていった。


「流石のヒカルもヤバいんじゃないかって話になってな。俺達は救援部隊を組織してやってきたんだ。百人からの自衛官がいるぞ」


 気づけば周りには、大勢の自衛官がいた。皆が俺を見て安心したような表情をしている。そして俺は思いっきり伸びをして言う。


「良く寝た! 腹が減ったな!」


 すると皆が笑って俺の肩を叩いた。そしてカブラギが言う。


「まずはスープをどうぞ」


 水筒から注いだコップを受け取り、俺がそれに口をつける。


「あったかい」


「あと、今はこんな物しかありませんが」


 そして俺は乾パンを差し出された。俺はそれを口にして言う。


「これでいいから、腹いっぱい食いたいな」


「下で食べられますよ。天候が荒れる前に下山します」


 カブラギは隊員達の事も考えているらしい。遭難者を助けに来て、二次災害に巻き込まれる事はよくある事らしい。


「わかった」


「これを着てください」


 そう言ってカブラギが俺に服をさしだして来るが、俺はそれを断った。


「すまんが動きが悪くなる。俺はこれでいい」


「いや、いくら高級ブランドだからと言っても、防寒機能はないですよ」


「既に魔力は戻っている。全く問題にならん」


「そ、そうですか。ではヘリのピックアップポイントまで行きます」


 そして俺は自衛隊達と一緒に、下山し始めるのだった。下山しながらもタケルが話しかけて来る。


「しっかし凄かったぞ」


「ん?」


「富士山が光って、オーロラが輝いていた。その山頂から、レーザー光線みたいな光が数百と天に向かって登って行くんだ。そりゃすごかった」


「そう見えただけだ。あれは俺の奥義の一つだが、一晩中発動したのは初めての経験だ。思わず魔力が切れてしまったらしい」


「しかも、全く映像には移らねえんだよ」


「魔力は映らんようだな」


 するとクキも言う。


「恐らく世界の連中は、なんで衛星が使えなくなったか分からんだろうな」


「それで、どうなるかな?」


「劇的に変わるさ。世界の情勢を監視できる衛星を持っているのは俺達だけになった。これがどれだけ有利に働くかは計り知れない」


「そうか。それはよかった」


 するとカブラギが言う。


「衛星を破壊したのは、恐らく敵の大国だと思うでしょう。これから自国の軍用の衛星が無くなった事を、隠すか公表するかも分かりません。どの国も相手の国の衛星は生きていると考えるでしょうし、自分の国が圧倒的に不利になった事を言わないと思いますから」


「核はどうなる?」


「それも撃てなくなります。というか戦艦も航空機も機能不全になるでしょう」


「それはよかった」


「敵の状態が分からないまま、手探りで戦うしかなくなったと言ったところでしょうか? まあレーダーは生きているでしょうから、まんま目隠し状態とは言えませんけど」


「俺達は動きやすくなったと思っていいのか?」


「そう言う事です」


「じゃあやって良かったんだな」


「いいもなにも。神の所業です」


 俺達がヘリコプターが来る場所にいると、空からヘリコプターが降りて来た。


「では、ヒカルさん達はヘリで降りてください! 我々は車両で降ります」


「わかった」


 俺とタケルとクキがヘリコプターに乗り込むと、自衛隊員達が手を振って見送ってくれた。


 タケルが言う。


「英雄の凱旋だ。みんな待ってるぜ」


「ああ」


 どんどん富士山から離れて行くが、不自然に上側だけ真白になっている。どうやら雪は山の頂上付近に集中したらしかった。眼下には緑の森が広がっており、地上でやっていれば、あの氷の世界が地上に現れていただろう。思いのほか損害が少なく出来たことに、俺は満足するのだった。

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