第334話 世界軍事バランスを変える人
オオモリは早速、自衛隊の指令室にある大きな画面に映し出した。それには丸くて青い何かが映し出されており、それを見たミオがオオモリに聞く。
「これ地球のCG?」
「そうです。地球を再現してあります。ちょっと待ってくださいね」
俺がミオに聞く。
「何を映している?」
「この世界よ。私達がいる星が映っているのよ、大森君がプログラムしたみたい」
更にオオモリが何かしらの操作をし始め、俺達は黙ってそれを見学していた。すると地球の周りを光の点が漂い出し、それを見たクキやカブラギたちが騒ぎ出した。
「お、おいおい! まさか」
「大森君。これは一体どういうことだい?」
するとオオモリは俺達の方を振り向いて言った。
「日本には十九機もの偵察衛星がありました。それらにプログラムを流し込んで、地球を回っている人工衛星のすべてを監視できるようにしました。全データを取るまでかなり時間が取られましたが、衛星軌道を回る全ての衛星を確認できます」
クキが苦笑いして言う。
「こともなげにいいやがって」
「大森くん。これは凄い事だよ!」
「たしか中露は攻撃衛星を開発しているんじゃなかったでしたっけ? 今なら日本の衛星なんて見向きもされないでしょうし、おかしな動きをしても察知される事はないと思います。何気にやりやすかったですよ」
自衛隊とオオモリが興奮気味に話しをしているが、俺には何の事かさっぱりわからなかった。
「オオモリ、それでどうなる?」
俺が聞くと、オオモリでは無くカブラギが答えた。
「敵の監視を掻い潜る事が出来ますね」
「こちらの衛星が攻撃される事は?」
するとオオモリが言う。
「脅威に感じれば攻撃してくるでしょうが、今は世界が有事に突入してますから、わざわざゾンビ国の日本の衛星に攻撃の枠を設ける事はないでしょう」
「なら先手を打って、こちらから攻撃をすればいいんじゃないか?」
「ヒカルさん。残念ながら、日本の衛星に攻撃機能はありません」
「そうか…、ところで衛星はどのくらい役立つものだ?」
画面に映る衛星はかなりの数で、それぞれが他の国の衛星だという。
すると、よくわかっていない俺にカブラギが説明をし始めた。
「衛星はただ監視するだけじゃないんですよ。今の軍事兵器は戦車や軍艦、ミサイルなども、衛星なくして力を発揮出来ないです。ドローンを使って爆撃するとしても、衛星が誘導して攻撃するんです」
「あの核ミサイルはどうなっている?」
「それこそです。衛星で標的の位置を計算してます。またミサイルが発射された事を確認するのも、衛星の仕事です」
「だから衛星を攻撃する衛星があるのか?」
「そう言う事です。破壊したり妨害したりして敵の攻撃を無効化するつもりです」
なるほど。だんだん分かって来た。
「という事は、敵国の人工衛星を破壊すれば、その力を削ぐ事が出来ると言う訳か…」
「そうなります」
「衛星までの距離はどのくらいある?」
「数百キロから、三万六千キロまであります」
「ここから沖縄までの何倍だ?」
「低空のは沖縄より近いですね。三万六千となると三十倍以上の距離があります」
「なるほど…」
俺が少し考え込んでいると、クキが言う。
「おいおい、まさか…」
「そうだな。富士山の頂上あたりがいいかもしれん」
俺が言うと、カブラギが訳が分からないと言った表情で聞いて来る。
「何の話です? 富士山の頂上とはなんです?」
「周りに被害が出ない」
「話が見えません」
するとクキが代弁して言った。
「だよなあ鏑木、そうだよなあ」
「なんです?」
「ヒカルは衛星を落とすつもりでいる」
「……」
一瞬、自衛隊達が沈黙する。そして次の瞬間カブラギとヨシズミとハルノが大声を出す。
「はあ?」
「衛星ですよ?」
「そんなことが…」
そこで俺が聞く。
「衛星までの間に遮蔽物はあるか?」
「いや、雲とか大気くらいですけど」
「ならばなんとかなりそうだ」
一瞬その場がシン…となる。俺は何かおかしい事を言っただろうか?
「まあ…そうですよね。隣国から沖縄近海まで泳いでくる人ですもんね」
「そうですよ鏑木二佐。たった一人で二か国の艦隊に大打撃を与えたんです」
「吉住一尉の言う通りです。隣国の基地と海軍基地を壊滅させたんですよ、そのくらい出来そうな気がしてきました」
自衛隊員が納得し始める。そこでクキが聞いて来る。
「で、なんで富士山なんだ?」
「奥義を使うが、周辺を巻き込まないようにな」
「そうか…」
そして俺はオオモリに言う。
「その映像を見ながらやる必要がある。敵国の衛星だとはっきりわかるように映す事は出来るか?」
「もちろんです。ですが富士山の頂上に機材を運ばないとですね」
「なるほど」
するとカブラギ達が言う。
「それは自衛隊の仕事です。やらせてください」
「よろしく頼む」
そしてオオモリが興奮気味に言う。
「じゃあ、これから衛星の排除の為の会議をしましょう! 宇宙には四千以上の衛星が飛んでるんです。かなり忙しくなりますよ!」
「そうしよう」
カブラギがポツリという。
「これは…核兵器を無効化出来る可能性がありますね…」
俺達が話している間も画面上では、オオモリのシステムが各国の衛星を捉え映し出しているのだった。




