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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第333話 勇者が幸せを選ぶ権利

 元々、元気の良かったタケルではあるが、ユミとの結婚によってさらにやる気がでたようだ。とても活力に満ち溢れており、自衛隊との訓練も生存者の為の活動も精力的に行っている。どうやら背負うものがあると、人間は強くなるらしい。


 そしてそれは周りにも伝播し、仲間達も更に精力的に活動するようになった。それを見ているとなんだかうれしくなってくる。道端に咲いている黄色い花ですら、イキイキとして見えてくるから不思議だ。ゾンビだらけだったころは、花の色すらも色あせていたように感じるほど覚えていない。


「ヒカル」


「おお、ミナミか」


「なにしてるの」


「花を、見ていた」


「花?」


「そうだ。そこに咲いている黄色い花」


「綺麗ね」


「そうだな。いろんな草が生えている」


「力強いわよね」


「そうだな」


 立っている俺の脇に来てしゃがみ、その花に顔を近づけて見ている。


「人が居なくなって、街中にもいっぱい草木が生えたわ。人が凄く多かった頃は、整備されて都市部はあんなに雑草だらけじゃなかった」


「その花」


「なあに?」


 ミナミが俺の顔を見る。俺はミナミを見下ろして言った。


「その黄色い花に名前はあるのか?」


「んー何だったかな…。インターネットがあった時にはすぐに調べられたんだけどね。でも記憶の片隅に残っている気がする」


「あるんだな…名が」


「いろんな植物に名前がついてるわ」


「それはこの世界の凄いところだ、なんにでも名前がついている」


「そうかも」


 ミナミはまた黄色い花に目を移し、じっと見つめながら言った。


「確か…この花の名前」


「ん?」


「女郎花、だったと思う」


「オミナエシというのかこれは」


「多分ね」


 俺達が花を眺めていると、そこに大きな羽の虫がとまる。


「綺麗」


 それは黒に水色の模様が入っている虫だった。蜜を吸いに来たのか、女郎花に止まって羽を休めている。


「きっとそいつにも名前があるんだろうな」


「そうね。でもそれは知らないわ。形はアゲハ蝶だけど」


「知らないというのも楽しい。いつか知る時が来るかもしれん」


「うふふ。確かにね」


「タケルとユミのおかげで、皆に力が宿ったように思う」


 するとまたミナミが俺に目線を上げる。


「そうだよね。自衛隊の人たちも活気が出たみたいだし」


「凄いな」


「なんていうか、みんなに生きる希望が生まれたのかも。私だって思ったもん。ああ、私達には未来があるんだって」


「未来はあるさ。俺達はそれを切り開いている」


「凄いね。ヒカルが諦めずに、私達を支えてくれたおかげよ」


「俺がか?」


「ヒカルは皆の希望。ヒカルがいたから日本に未来が見え始めたんだもん。生存者達だって、みんなヒカルの事を救世主だって言ってるわよ」


「そんな大したことではない。俺は皆と一緒に夢を追っているだけだ」


「だよね。ヒカルはそう、だからみんなも大好き。私だって…」


 そう言ってミナミは言葉を止める。何か言いかけたが、俺から目を逸らしてまた女郎花に目を移した。


「蝶。どこかにいっちゃったね」


「だな。蜜を吸って満足したんだろう」


 するとミナミは少し沈黙して言う。


「…ヒカルは、みんなのヒカル。誰かが独り占めして良い人じゃない。でも、もし…ヒカルが誰か心に決めた人がいるなら…。そのときはヒカルが決めて良いと思う」


「俺が決める…」


「ヒカルにだって、武みたいに幸せになる権利があるのよ。そしてヒカルが幸せになる事は、私達皆の願いだもん」


「皆がそんなことを?」


「うん」


 知らなかった。みんなが俺の事をそんな風に考えていたなんて聞いた事が無かったから。俺がこの世界で生きるなら、もしかしたらタケルの様に伴侶を見つける事があるのかもしれない。


「俺は…」


 ガチャ!


「ヒカルさん!」


 唐突に入り口からオオモリが飛び出して来た。気配は感じていたが、どうやら俺に用があって探していたらしい。


「なんだ」


「ちょっと見て欲しいシステムがあるんですよ。九鬼さんと鏑木さんにも」


「わかった」


 そして俺が行こうとすると、ミナミが俺の裾を掴んで言った。


「皆、ずっと待ってるから」


「…そうか…」


 そして俺はオオモリに連れられて、クキとカブラギを探しに回るのだった。周囲の自衛隊員に聞きこむと、クキは自衛官を指導しているとの事だ。そこで俺とオオモリが訓練場に向かっていく。


 現場に行くとクキの怒号が聞こえて来た。どうやら自衛隊員をしごきまくっているらしく、泥にまみれた自衛隊員達が訓練場をのたうち回っていた。


「九鬼さん!」


「今訓練中だ!」


 クキの気迫にオオモリが黙る。仕方がないので俺が聞いてやる。


「すまんクキ」


 するとクキは自衛隊員達に向かって大声で言う。


「全体休め!」


 自衛隊員達がその場にへたり込み口々に言う。


「助かったぁ」

「死ぬ死ぬ。水を…」

「だめだ立てねえ」


「まったくだらしないぞ!」


「「「「「すみません!」」」」」


 そしてクキが俺達の所に来て言う。


「どうした?」


「鏑木さんはどこですかね?」


「まだ任務から帰って来てない」


「そうですか」


「なんだよ」


「実は見せたいシステムがあるんです。みんなが揃ってからの方が良いかと思ってはいたんですが、直ぐに知っていただきたくて!」


「なら、声がけしておいた方がいいな」


「はい!」


 クキが自衛隊員達に向かって言う。


「今日の訓練は終わりだ! 各自、明日の任務に備えて休め!」


「「「「「やったああああああ!」」」」」


 よろよろしながら自衛隊員達が、宿舎の方に歩いて行った。そしてクキが言う。


「だらしない。武や南が耐えているのに、へこたれるとはな」


 だが俺がクキに言う。


「言ってやるなクキ。タケルとミナミは、俺と行動を共にし続けた事でレベルが上がっているんだ。それをこの世界の人間の常識にあてはめたら、通常の人間は死ぬぞ」


「そこまでやってないはずだ」


「ちなみに言うと、恐らくお前もレベルアップしている。気が付かないでやっていると、訓練で自衛隊員が死ぬから気を付けろ」


「お、おう。わかった」


 そして俺達はクキを連れて指令部へと向かう。指令部へは自衛官達がいたので、俺がカブラギの帰りを聞いた。


「カブラギの戻りは?」


「一六〇〇時帰投する予定です」


「あと一時間か」


「は!」


 それから仲間達にも声をかけ、一時間後にきっちりカブラギの隊は帰って来たのだった。

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