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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第331話 タケルの想いと女達の想い

 俺とタケルは悪いと知りながらも、名古屋の中心でいろいろな物を回収した。俺達はゾンビが居る町のビルの屋上で、フェンス越しに都市を見渡しながら話をしている。


 タケルが回収した指輪の箱を見ながら言う。


「本当は稼いで、あげるのが当たり前なんだけどな」


 何を言っているんだろう?


「タケルは日本人が生き伸びるために、めちゃくちゃ働いて来た思うがな。それこそ値段などつけられないくらいに、命がけで走り抜けて来たじゃないか。それくらい大したことはないはずだ」


「とはいえ金は稼いでねえ」


「助けた人間の数で言ったら、金になど変えられん。それだけ危険な思いをしてきたんだ。生存者の為に走った。そのタケルにダメだなんて言えるやつがいるとは思えん」


 タケルがパカっと箱を開けて言う。


「にしても一生かけても、買えないような指輪を回収しちまった。これデカすぎんだろ?」


「その石に価値があるのか?」


「ダイヤモンドって言ってな。めっちゃくちゃ高い石なんだよ、それがこんなデケえのを回収しちまった」


「別にいいだろう」


「ハ〇ーウ〇ンストンって言えば、ただでさえ高級なのによ、こんなデカいダイヤがハマったリングなんて本来買えねえんだよ」


「大丈夫だ。お前にはそれだけの価値がある。いやむしろそんな石ころよりも遥かに尊いだろう。だから遠慮するな」


「ユミがどう思うか」


「喜ぶに決まっている」


「そうか?」


「そうだ」


「…わかったよ」


 そしてタケルはそれをポケットにしまった。


「食材も手つかずの物があったし、これで祝いの席を儲けられる」


「酒もあったしな」


「ああ」


「じゃあ。今度はお前のスーツ見にいこうぜ。そろそろ新しいの必要だろ?」


「そうしてくれるか」


「ああ。店はすぐそこだ」


 そうして俺とタケルは店に行き、新しい俺の服を確保してバイクにまたがるのだった。街中を走り出すと、タケルがクラクションを鳴らした。


「どうした?」


「そこ。刀剣博物館って書いてあるぜ」


「なに?」


 こんな都市の中心に、日本刀を置いてある場所があるなんて思わなかった。俺とタケルは正面のガラスを割り、真っすぐに展示されている場所に向かった。そこで俺は良いものを見つける。


「これは…いいぞ」


 するとタケルが表示されているのを読んだ。


「こりゃ相当古いぜ。鎌倉時代とか書いてある」


「この刀身をみてくれ」


 俺がタケルに言う。


「おう」


「これが波打ってない。真っすぐに整っているだろ」


「本当だ」


「東京と、宮城で手に入れた日本刀にもそれがあったんだ。古いものの方が耐久性も高く、更に切れ味が良いんだよ。魔力を込めても壊れにくいんだ」


「そんなに差があるのか?」


「雲泥の差だ」


「へえ」


「恐らくは作り手の問題かもしれん」


「すげえ人が作ったんだろうなあ…」


「ああ。これは全部持って行く」


「よし」


 そして俺はそこに展示されてある日本刀を片っ端から取り出して鞘に納めていく。それを全て縄で結んで肩に担いだ。


「こりゃ、車を調達したほうがいいんじゃねえか? もうパンパンじゃねえか。酒だってもっと持って行ったっていいんだぜ」


「いや、やめておこう。自分達が楽しむ分だけでいい」


「まあ…そうだな」


 そして俺達はバイクにまたがり街を抜けて出た。


「帰りは競争は無しだ。回収したのが壊れたらもともこもねえ」


 タケルが言うので俺が答えた。


「だな。だが、負けっぱなしも嫌だな。次は勝つ」


「ははは。つうかよ、まがりなりにも俺はプロなんだぜ。なんでついて来れるんだよ」


「こっちのバイクの方が早いからだろう」


「まあ、排気量はそっちの方が上だからな。だからと言って、そんなに易々とついてこられたんじゃ、俺のプライドももたねえ」


「ならせいぜい逃げ切って見せろ」


「わーったよ。ぜってえ負けねえ」


 それから俺達は夜になっても走り続け、皆が待っている基地に戻って来た。案の定ユミがタケルの所に真っすぐ近づいて来たが、結婚の為の指輪やプレゼントは俺の背負子に入っている。


「お疲れ様!」


 ミオも俺の所に来た。だが俺は持っている荷物を隠さなければならないので、軽く嘘をついた。


「おお。少し疲れたから、いったん部屋に戻っていいか」


「ヒカルが疲れたなんて珍しいね」


「いや。少しな、ほんの少し」


「わかった」


 そして俺はタケルと目配せをしつつ、自分の部屋へと向かうのだった。そして俺のクローゼットをあけて、タケルのプレゼントや酒と高級スーツをしまいこむ。


 コンコン!


 ギクッとした。俺はクローゼットを締めて返事をする。


「なんだ」


「お疲れだと思って、食べ物と飲み物を持って来たわ」


 ミオの声だった。俺は慌てて入り口に行って開ける。するとそこには、ミオとミナミ、ツバサ、マナの四人が立っていた。


「な、なんだ大勢で」


「ヒカルが疲れたなんてきっと大変だったんだろうなと思って、みんなで介抱しにきたのよ」


「い、いや…」


「疲れてるんでしょ」


 いったんついた嘘だ。そのまま突き通すしかない。


「そうだ」


「じゃ、まず食べなくちゃ」


 何故か俺は四人が見ている前で、飯を食う事になった。俺が食っていると、四人はあれやこれやと手を差し伸べて来る。飯を食べ終わると今度はミナミが言った。


「お風呂に浸かったら? 沸かしたよ」


「そうなのか」


 別に今はいらなくてもいいかと思ったが、四人が心配そうな顔で見てくるので断れなかった。


「じゃあ、入るとしよう」


 すると、既に湯浴みの支度をしてきたようで、俺は四人に連れられて浴場に行くのだった。俺が服を脱ぎ始めても、四人はそこを動かなかった。


 どういうことだ?


 今度はツバサが言う。


「背中を流してあげる」


「は? いや、別に」


 最後にマナが言った。


「ずっとヒカルに無理させていたでしょ? 私達で出来る介抱は何でもやってあげようって事になったの。あんな大変な戦いを一人でやって、また普通に救出作業や調査でしょ? 休まる暇がないと思って」


 いや…タケルと一緒にめいっぱい息抜きをしてきたんだが…。


「あ、ありがたいな」


 そして俺が風呂場に入ると、皆が足をまくり腕まくりをして一緒について来る。俺が洗い場の椅子に座ると、石鹸をタオルにつけて俺の体を洗い出すのだった。


「一人でも出来…」


 するとミオが言う。


「癒される?」


 急にどうした事だろう。逆に俺は頭の中が真っ白になって来た。


「いやされる」


「よかった!」


 四人が喜んだ。そして俺は体の泡を流して湯船につかる。自衛隊基地の湯船は何人もが一度に入れる作りになっていて広い。俺が湯船につかっている間も、四人はその場を離れずに俺に話しかけて来る。


「疲れたらいつでも言ってね」

「そうそう、私達で出来る事があればやるから」

「本当に遠慮しないでね」

「気軽に言ってくれていいから」


 なんだ? 分らん。だがあまり休まらない。


 そうして俺は風呂を終え自分の部屋に戻る時、廊下でタケルからおいでおいでをされる。


「あ、俺はタケルと話がある」


「わかった」


 タケルの元に行くと、タケルが俺の耳に手を当てて言う。


「わりい。ユミがいろいろ吹き込んだらしい。誰が一番ヒカルを好きなんだとかって、そしたら四人に火がついてあの有様らしいぜ」


「なんだと…」


「だけど。無下にしたら可哀想だ。なんとか相手してやってくれ」


「…わかった」


 そして俺が部屋に戻ろうとすると、四人はまだ同じところに立っていた。


「寝るまで四人でマッサージしてあげる」


 俺は言われるがままに自分の寝室に行き、されるがままにマッサージを施されて目を閉じる。


 だが…。


 逆に目が冴えて、全く眠れる気がしないのだった。

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