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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第329話 最強勇者の悩みは多い

 世界が完全に終わってしまう前に、日本は復活を遂げなければならない。


 そうでなければ、俺は前世と同じ過ちを繰り返す事になる。しかしながら今回の世界では分かってやっている事の方が多く、前世のように何も知らず、がむしゃらに突き進んで世界を壊しかけた時とは違う。世界を正常な方向に向けていくといった命題は、こんな状況でも変わってはいないのだ。


 それでも紙一重の事をやっているという自覚はあった。俺は、あえて危険な行動をしているのである。恐らく日本国内だけで、ただゾンビを駆除するような生活を続けていたら、いずれ他の国々に日本は飲み込まれていただろう。飲み込まれるどころか、ゾンビ国家として駆除されていただろうと思う。


 そんな俺の自問自答を見越したのか、タケルが俺に話しかけて来た。


「なんだヒカル。顔を曇らせて、考え事か?」


「いや。大したことじゃない」


「お前がそんな表情するなんて、何か悩んでたんじゃねえか?」


「いや。俺の行動の結果、世界は危険な方向に進んだんだなと思ってな」


「やっぱそれだろうなとは思ったよ。まあそうだな、いま世界で争いごとが始まっちまったからな。だがそれはヒカル一人で起こした事じゃないぜ。俺達皆が考えてやった事だ。お前一人が全部背負う必要は無いんだぜ」


「皆もそう言っていたがな、本当にこれしか方法が無かったのかなんて思う事もあるんだ」


 するとタケルが俺の肩に手を回して言う。


「まあ悩むなって、必ずうまくいくさ」


 あっけらかんと言うタケルに救われる気がした。


「わかった」


「それよりも、本来の敵であるファーマ―社をどう攻略するかをみんなで考えなくちゃな」


「確かにそうだ」


 それも皆の話題にあがっていた。恐らく今回の事で世界が争乱に包まれ、その隙を狙ってファーマ―社が動くだろうと予想したのだ。特に戦いが始まった地域では、下手をすれば試験体が送り込まれる可能性もあるだろう。そうなれば戦いは普通の戦闘に留まらず、今度は世界がゾンビによる破滅の危機に襲われることになるのだ。


 むしろこれ以前から行われている戦争に、既に投入されている可能性も否定は出来なかった。


「あ、それも『みんな』で考える、だからな」


「わかっている」


「それによ、世界で暗躍するファーマ―社を、この日本に居ながら牽制するなんて出来ないからよ、長い目で見てかなきゃいけない問題だろ?」


「ああ」


 そんな話をしていると、部屋の入り口からユミが入って来た。


「なーんか、武が随分かしこくなっちゃったわね」


「お、おいおい。馬鹿にすんなよ。これぐらい元から考えてたって」


「とかなんとか言っちゃって、自衛隊との訓練を重ねているうちに聞いた話でしょ」


「もちろんそうだけど、おりゃ、それをヒカル一人で悩む必要はねえっていってんだぜ」


「ふふっ。だよね、相棒が悩んでたら助けるのはバディの仕事だもんね」


「仕事じゃねえし」


 するとユミがタケルの腕に手を回して言う。


「て、いうかさ。ずーっと戦いとか人命救出に明け暮れてたじゃない。私との時間も大事じゃないかしら? ずーっと、ほっとかれてるような気がするんですけど」


「そ、それは仕方ねえよ。戦闘力もアップしなきゃならなかったし、それこそ作戦の事で頭がいっぱいだったろ!」


「ようやく少し落ち着いたよね…」


 ユミの表情を見て、俺はタケルの肩を叩く。


「おい。皆まで言わせるな。ユミはお前との時間が欲しいって言ってるんだ」


「なっ…」


「ほらほら。ヒカルの方がずーっと分かってるみたい」


「タケル、行け」


「わーったよ! とにかくよ! あんまり悩むんじゃねえぞ!」


「分かってる」


 するとユミが微笑みながら俺に言う。


「っていうかさあ…。ヒカルはどうなのよ。一体誰の事が気になってるの?」


「誰って言われても…」


「みんな、ずーっと待ってると思うなあ」


 するとタケルがにやりと笑って言う。


「むしろヒカルにはそれが必要かもな。俺達と知り合ってから、ずっと戦いに明け暮れて来ただろ? 青春は今しかないぜ」


 ふと俺は前世の聖女エリスを思い出していた。戦いが終わったら、所帯を持つつもりでいた。だが前の世界を救う代わりに、こちらの世界に飛ばされてしまったのだ。それからはずっと、ゾンビの駆除やヤクザとの戦い、そしてファーマ―社や他国の軍隊との戦闘に明け暮れていた。そんな中で仲間が出来て今に至るのだ。


 そしてユミが言う。


「何人かはヒカルに気があると思うけどなあ」


「そうなのか?」


 するとタケルが言う。


「どんくせえな、おい! マジで!」


「どういうことだ?」


「戦いに関してはめちゃくちゃ鋭いのに、そう言う事に関しては、レベル一か?」


「レベルいち…」


「そうよ。それはタケルに同意だわ、少しは周りに目を向けてあげてね」


 そう言ってユミはタケルを連れて行った。俺は何を言われたのかあまりよく分からず、部屋を出て子供達の世話をしているユリナ達の部屋に行ってみる。彼女らはガラス張りの部屋の中で、子供達を相手にいろいろと遊んでいるようだ。そこにはユリナとミオ、ツバサ、ユン、アオイがいる。するとアオイが俺に気が付いて手を振って来た。


 俺はそれに手を振って、そそくさとその場を立ち去る。


 何をどうすればいいんだ?


 俺はよくわからないまま、建物を出て外の訓練場にむかう。するとミナミが日本刀を素振りしていた。最初の頃は危なっかしさもあったが、今となってはかなり上達している。素振りに集中していて、俺が来た事に気が付いていないようだ。


 俺は何がしたいんだ…。


 訳が分からなくなった俺は、とりあえずオオモリの所にでも行ってみることにした。恐らくはサーバールームで、システム構築をしているはずだった。なぜか小太りになって来た奴の側が落ち着いたりする。


 サーバールームをあけると、オオモリはおらずにマナが居た。


「あら。ヒカルどうしたの?」


「いや。オオモリが何をやっているかなと思ってな」


「何日も徹夜してたから、ダウンしちゃったわ」


「そうか」


「何か飲み物でも飲む?」


「コーラはあるか?」


「あるわよ」


 俺が椅子に座ると、マナが俺にコーラのペットボトルをくれた。


「冷えてる」


「電気が使えるようになってきたから。冷蔵庫があるのよ」


「そうか」


 プシュッと蓋を開けてコーラを飲むと、俺の前に座っているマナもコーラをあけて飲んだ。


 だが…何も話す事が思い浮かばない。俺はただ黙ってコーラを飲み続ける。


「どうしたのよ。神妙な顔して」


「い、いや。なんでもない。やっぱりコーラは美味い」


「前から好きよね。タケルと物資調達すると良く飲んでた」


「酒ほどじゃないが、これはこれでいいんだ」


「お酒もいいわね」


「今では生存者が増えたからな。そう自由にはならんようになった」


「まあね。でも多分ストックはあるはずよ」


「そうか…」


「そうだ! いったん落ち着いた事だし、みんなを誘ってお酒飲みましょうよ」


「そう言えばしばらくそんな事はしていないな」


「今は自衛隊も守ってくれてるし、たまにはいいんじゃないかな?」


 やはりマナもいいやつだ。俺の希望を汲み取って考えてくれる。そこで俺は、なんとなく相談してみようという気分になった。


「マナ」


「ん?」


「さっき、俺はタケルにどんくさいって言われたんだ」


「どんくさい? ヒカルが?」


「俺を思っている人の気持ちが分からんとか言っていた。ユミにもそんな事をいわれた」


 するとマナが、沈黙してしまった。なので俺はもう一度聞く。


「どうだろう?」


「かもね」


「そうなんだろうか?」


「だって、今も気づいてないでしょ?」


「なにがだ?」


「…ううん、別に」


 マナは何か寂しそうな表情をした。それが俺には何か分からないが、やはり俺は人の気持ちが分からないのかもしれない。よくわからないまま、俺はペットボトルのコーラを飲み干すのだった。

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[一言] ヒカルは強敵……みんな頑張れ!www
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