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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第324話 撒き餌の準備と一人ご飯

 敵艦隊の近くに泳いで来た俺は、海面からほんの少しだけ顔を出して様子を見る。恐らくは沖縄基地にオオモリが仕込んだAIからの擬似報告を受けて、増援を送り込んできたのだろう。自衛隊に見せてもらった動画から推測するに、空母が一隻、戦闘艦六隻、そして海中に潜水艦が二隻いる。


「さてと、直ぐに取り掛かるか」


 まずは空母。だが今回は沈めるのが目的ではない。今ごろは偵察に送った連中からの連絡が途絶え、その状況を察知する事に躍起になっているだろう。案の定、不用意に畳みかけてくる事は無く、現状を把握する事で精一杯らしい。この現状も恐らくは近くの基地に送っているはずだ。


 クキの言うとおりになってるな。


 今回の作戦の大筋はクキが想定した。俺は今の所それに沿った動きをしているまでだ。


 まずは一旦深く海中に潜って、思いっきり海上に向かって泳いだ。海面から出た瞬間、俺は海上から百メートルの上空にいた。そこで周辺の艦隊配置を確認し、空母の人間が死角になっている場所を探す。認識阻害と気配遮断の魔法を施しているので、恐らくは気がつかれないだろうが、前世で言うところの高位の魔法使いがいないとも限らない。クキが言うには百パーセントそれは無いという事だったが、それでも念には念をだ。


 相手国の海兵隊という連中は、かなりの訓練を受けた者が多いらしいからな。クキみたいな奴がいないとも限らん。


 俺が空母に潜入しようと進むと、艦橋の入り口に兵隊が立っていた。縮地で近づきつつ、刺突閃によって命を狩る。倒れる前に掴んで、海に放り投げてやった。


 さっき海中を泳いでいる時に見たサメに餌を与えてやる。


 艦橋に入ると、そこはてんやわんやになっており情報が錯綜しているようだ。


 計画通り。


 あとは、一区画ごとにバレないように敵兵を駆逐していくだけ。俺は艦橋にいる人間を一瞬で狩る。


 なるほど、それほど脅威になる奴はいないか…。


 それから空母内を気配感知を使いながら動き回り、一人残らず兵士達を駆逐していく。クキに言われていた時間、三十分を上回らないように高速で処理した。三十分にあとわずかと言う所で、空母内の生存者はいなくなった。


 俺はすぐさま甲板に出て、一番近い船に向かって飛ぶ。弾丸より早いので、この世界の人間に俺の姿を捉えられる奴はいないとの事だ。これは全て自衛隊達の評価で、自衛隊達でも俺の姿を捉える事は出来なかったらしい。


 次も時間はかけられない。


 そして俺が隣の艦艇に潜入して、ニ十分の後にその船は静かになる。


 すると周りの艦艇の動きが慌ただしくなってきた。どうやら空母とこの艦艇からの連絡が、一時間弱前から止まってしまったので、緊急警報を鳴らしているらしい。


 笑えるほど凄いなクキは。


 ここまでクキが言った通りに動いているのだ。


 じゃあ次は海中か…


 俺はあらかじめ考えられた作戦のままに海中に入る。周辺を気配感知すると、六キロ先ぐらいに潜水艦が居た。俺は海中で日本刀をかまえ、その潜水艦に向かって剣撃を繰り出す。


「魔気、水中狙斬」


 手ごたえはあった。恐らく潜水艦に十五メートルからの亀裂が入っただろう。俺はもう一度同じ剣技を繰り出した。


「魔気、水中狙斬」


 手ごたえあり。もう一か所に二十メートルほどの深い亀裂が入ったはずだ。俺が気配感知でそれを確認していると、次第に潜水艦は沈んでいく。


 もう一隻。


 気配感知をすると、十五キロほどの距離に潜水艦はいた。俺はすぐにそれも同じように斬りつける。すると次第に海底に沈んでいくのが分かった。また海中から水上に登るように泳ぎ、次の瞬間百メートルほどの上空におどり出る。すると異変に気が付いた周辺の艦艇たちが、四方に散るように動き出しているのが見えた。


 そして俺は隣国の基地で使った、獄龍爆雷斬の発展形を使う事にする。


「大獄龍爆雷斬! 五連!」


 俺の剣から放たれた炎の弾が、逃げようとする五隻の艦艇に向かって飛び、着弾したと同時に戦艦を蒸発させるように爆発させていく。水蒸気と水煙のおかげで視界が悪くなり、俺はその靄の中で空母を見つけて飛び降りる。


 そして、背中の耐水バックからある物を取り出し空中に向かって撃った。


 バシュッ! 赤い煙が空母から上空に向かって飛んでいく。俺がしばらく艦上で待っていると、空母のほど近い場所に潜水艦が浮上して来た。自衛隊のらいげいだ。この戦域から見えないように、沖縄本島の陰に隠れていたのだ。


 らいげいのハッチが開いて、そこからクキが顔を出す。


「ヒカル。時間きっちりだな」


「少し遅くなった」


「いーや、シビアな時間を伝えていたからな。一時間で艦隊を消滅させるなんて悪夢でしかない」


「なら次だな」


 するとオオモリがハッチから顔を出して言う。


「ヒカルさん。そっちに連れて行ってください!」


「わかった」


 俺は潜水艦に飛び移り、リュックを背負ったオオモリを掴んで空母に戻る。艦橋に入るとオオモリは若干青い顔になった。


「全員死んでますよね?」


「ああ」


「よかった。では早速やります」


 そしてオオモリは、空母の機器に細工をしていく。


「救難信号を出しました。AIが偽情報を流し始めます」


「上出来だ」


 俺とオオモリが再び潜水艦に戻ると、仲間達が甲板の上に立っていた。タケルが俺に言う。


「やってくれたな」


「始まったばかりだ」


 そしてカブラギが言う。


「この餌に引っかかってくれるといいのですがね」


「どうだろうな」


 するとクキが言う。


「敵も仲間は見捨てんだろ。まあ、生きてる人間はもう一人もいないんだけどな」


 それを聞いたハルノが言う。


「怖いですね。この海域に悪魔がいると知らずに、やって来るんですね。武器も使わずに船が沈んで人が死ぬなんて」


 それを聞いた自衛隊員達もブルりと体を震わせる。


 そして俺が皆に告げた。


「餌につられた奴らが来る前に、全員退散してくれ。俺はこの空母で敵の増援を待つ」


 そう言うとクキが答える。


「ヒカル。きっと厨房に美味いもんと酒を置いてるぜ。それでもやってじっくり待ってると良いさ、流石に数時間では到達しないからな。何なら船内にシャワーもあるから、それで体を洗って優雅に過ごしたらどうだ?」


「なるほどな。だが俺一人では食い切らんだろう? 生存者達の為に持ち帰ると良い」


 クキが振り向いてカブラギに言う。


「だそうだ」


「確かに、どうせ沈むんですしね。いただきましょう!」


 そして仲間達と俺が一緒に空母に入り、厨房から食料や飲み物を運び出した。


「じゃあ、よろしく頼む。俺はまだしばらく海の上だ」


 ミオが俺に言う。


「気を付けてね!」


 ミナミも心配そうな顔で言った。


「そうだよ。ヒカルの事だから過信はしてないと思うけど、危なかったら逃げて!」


 ツバサも言った。


「絶対に無事に帰って来てね」


「分かっている。心配しないで待っていろ、なんと言っても俺はレベル千越えの勇者なんだ。軍隊など恐るるに足らんさ、俺が怖いのは仲間に何かがある事だ。みんなが無事でいてくれなきゃ、この作戦の意味はないんだからな」


「うん!」

「まってる!」

「がんばって!」


 タケルが俺に拳を突き出す。


「じゃ、またな」


「またな」


 そうして潜水艦に乗り込んだ仲間達と自衛隊は、再び海中に潜り去ってしまった。


「さてと」


 俺はクキに言われた通り、この船の厨房に戻り海パン一丁で料理を作り始める。


「一張羅のスーツがないと落ち着かないな…」


 フライパンで肉を焼きながらも、海パン姿の俺はひとりぽつりとつぶやくのだった。

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