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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編

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第322話 不倶戴天の敵を許すまじ

 救出作戦を終え、俺達は少しだけ救いの情報を聞く事となる。どうやら宮古島で救出した生存者の中に、石垣島から渡って来た人達がいたらしいのだ。大陸の兵が虐殺を始めたのを察知して、漁船で宮古島に逃げ伸びたらしい。そこで、カブラギ二佐が言っていた言葉を思い出す。


「ヒカルさん。私は涙が出ます! 必死に生き延びるためにあがいた人達が居たことに! どんなに踏みにじられても生きようと思ったその力強さに!」


 本当に泣きながら話をしていた。そして俺もそれは強く思った。彼らからしたら、本当に恐ろしかっただろうし悔しかったろう。だがそれでも、生き延びるために必死にあがいたのだ。この国の民の底力を感じる出来事だった。


 そして、次にミオが俺にぽつりと言っていた事を思いだす。


「ヒカル…、すごく悔しいよ…」


 だがヤマザキがそんなミオに言った。


「許せんな。だが今はどうする事も出来んだろう」


 今、南の島々で救出された生存者達は、九州へとたどり着いて他の生存者と共に生きる道を選んでいる。仲間達も自衛官達も、彼らが馴染めるように必死に支援していた。この状況下でも、彼らは強く生き抜く事を誓ったのだ。


 皆が今は我慢の時だと話し、悔しい思いをしつつも、まずは普通の暮らしを始める事を優先すると言っている。それは自衛隊員達も同じで、今は耐え忍ぶしかないのだと生存者に言い聞かせていた。


 日本は今、静かにその力を溜め時なのだと。


 …だが俺は違った。


 怒り心頭を通り越して、はらわたが煮えくり返っていた。そしてそれは俺だけじゃなく、タケルも同じ心境らしい。作戦が終わり、俺が海を見ながら高い酒を飲んでいるところにタケルがやって来た。


「なあヒカル」


「なんだ?」


「なんとかしてえな。まだ腹の虫が収まんねえ」


「ああ。許してはおけんな」


「やっぱそうだよな。どうするよ?」


 そうは言っても相手は軍隊。タケルやミナミがいくら力をつけて、クキの戦略が勝っているとはいえ、みんなで戦う事は出来ないだろう。


「さてな…」


 するとタケルが言う。


「ヒカルよ」


「ん?」


「こんな事、言っちゃなんだけどよ…。おまえ一人で沖縄付近で暴れてきてくんねえかな?」


 意外だった。自分らも一緒に行くと言うかと思っていたが、タケルはそうは言わなかった。


「自衛隊が許すだろうか?」


「んなもん、関係なくねえか?」


 タケルが心底怒っているのが分かる。普段はこんなに怒りを持続させないのだが、今回ばかりは相当頭に来てるらしい。


「…わかった。なら俺が自衛隊を強行姿勢でねじ伏せてやる」


「頼むよ。敵国の兵士らに、自分らがやった事を思い知らせて来てくれよ」


「フッ」


俺は思わず笑ってしまった。実を言うと、タケルがそう言わなくても、こっそりやってこようかと思っていたところだ。だがタケルから改めて言われた事で、俺の心は燃えだした。


「まあ、一応自衛隊に話してみるか」


「だな」


 日本の防衛という意味でも俺は要で、自衛隊は俺の命が第一優先だと言ってた。だからこんな事を良しとはしないだろうと思う。だが自衛隊がなんと言ったところで、俺は押し切ろうと思っていた。もしかしたら仲間からも反対者が出るかもしれない、それでも俺はやるつもりだ。


 俺とタケルは、自衛隊の幹部と仲間達を呼び集めた。


 会議室に集まった自衛隊幹部と仲間達は、いつもと違う俺とタケルの雰囲気に、一言も話すことなく席についている。そして俺が口火を切った。


「忙しい所集まってもらってすまない。だがどうしてもやらねばならない事がある」


 皆がシーンとして聞いている。


「今回の救出者と海外の軍隊の件だ。皆はきっと反対するだろうし、それに意味があるのかと問うだろう。だが俺はもう決めたんだ」


 そう言って言葉を切る。皆の表情を見て、一瞬反発をくらうのが想像できたからだ。


「俺は単独で沖縄に戻り、やって来るであろう同盟国の軍隊と、大陸の軍隊を迎え撃とうと思っている。俺の命を優先だという自衛隊の話も分かるし、みんなの守りはどうするんだ? という考えもあるだろう。だが、このまま許しておくことは断じて出来ない」


 誰も言葉を発しない。


「ハッキリ言うと俺は、はらわたが煮えくり返っている。奴らに自分達のしたことを思い知らせる必要がある」


 それでも誰も何も言わない。そこでタケルが言う。


「皆の言いてえ事は分かっけどよ、我慢にも限度ってものがねえか?」


 すると、ぽつりとカブラギ二佐が言う。


「武君。いいかい?」


 やはりきたか。


「ああ。何でも言ってくれ」


「じゃあ言わせてもらう。ヒカルさんとタケル君、君らの言っている事なんだが」


「ああ」


「誰も反対してないよ」


「ああそうだろう? えっ? 反対しない?」


「そうだ。我々とてはらわた煮えくり返っているよ。生存者の手前はああいう事を言ったが、出来る事ならその無念を晴らしてやりたいと思っていた! なあ! みんな!」


「「「「「「おう!」」」」」」


 自衛隊の幹部達が声をそろえて言う。


「と言うわけだ」


 するとミオが怒りの顔で言った。


「私達も良いと思う、思う存分やってやると良いわ!」


 それを聞いてユリナも言う。


「むしろやってほしい!」


 そこで俺が答えた。


「俺は単独で行こうと思っている。こう言うのは失礼かもしれないが、皆が居た方が足手まといになる可能性が高いんだ」


 するとヤマザキが言った。


「今回は生存者の救出も無い。ただ戦いに行くだけだ、俺達の出る幕はないさ」


 だが、それをカブラギが制する。


「待ってください。我々もその作戦の準備くらいは手伝わせてください!」


 俺が断ろうと思った時、ようやくクキが口を開いた。


「ヒカル。断るな、準備と送迎くらいは自衛隊にさせてやれ」


「しかし」


 するとハルノ三尉が言う。


「あんな真似をされて、日本の自衛隊が黙ってると思ったら大間違いですよ! やらせてください!」


「まってくれ…」


 ヨシズミ二尉がそれに重ねて言った。


「お願いします! ただ黙ってるだけなんて無理です!」


「な、ヒカル。自衛隊を利用しろ」


 クキが言い、タケルが俺の肩を掴んで言う。


「ここまで言われたら、受けるべきだヒカル」


「…わかった。ならば作戦を立てよう」


 それを聞いて、クキを含む皆がにやりと笑い、そしてオオモリが言った。


「それを口火にして、やれることは山ほどありますよ。僕らは行けませんが、ヒカルさんにはいろいろと出来る事があるはずです」


「やってやろうじゃないか」


 そして急遽、南方面の戦闘作戦会議へと切り替わるのだった。ただ煮え湯を飲まされるだけの状況は誰も良しとしていなかったのである。俺とタケルは顔を合わせてニヤリと笑い、皆から次々に出されるアイデアを話し合うのだった。

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