第315話 ワレ奇襲ニ成功セリ
敵基地を出た俺達は、作戦通りに俺と他の全員とに分かれた。既に俺以外の仲間は、潜入してきた海岸沿いに向かっている。俺はヤマザキから受け取ったトランシーバーを持って、そばにある小高い丘で、ただその時を待っていた。俺ならば後追いでも確実に撤退時間に間にあう為、先に仲間達を逃がし俺が追う形にしたのだ。
今回の作戦は成功しようが失敗しようが撤退時間を決めていて、想定した時刻には海上に待機する事になっている。既に仲間達と離れて一時間が経過しているが、基地が騒然となっている以外は状況が分からない。消防車が出動し火災を消しているようだが、これと言って変化は無かった。
だがその時、俺のトランシーバーに連絡が入った。
「ヒカル」
クキだった。
「動きがあったか?」
「敵の緊急回線でスクランブルがかかったようだ。大森が仕掛けた通り、大国と北が攻撃を開始してきたと思っているらしいぞ。じきに近隣の基地から、航空機や軍隊が大量に基地にやって来るだろう」
「なら予定通り作戦を遂行する」
「了解。せいぜい派手にやってくれ」
「周辺にも被害が出るがな」
「コラテラルダメージだ」
作戦を遂行する上での必要最低限の被害という事らしい。もっと時間をかけて軍隊を殲滅したいところだが、そんな事をしていたら俺達の隊が全滅してしまう。軍隊と十四人では戦いにもならない事は俺にでもわかる。俺が究極奥義を使わなければという前提によるが。
そして俺は魔気を纏い練り上げていく。従来の剣技でも、魔気を大量に含ませれば十倍以上の威力が出る事が分かっていた。
「大撃龍爆雷斬」
俺の剣から火の弾のような剣技が放たれ、それが見下ろす基地に山沿いを下って走って行く。それが基地の中心付近に落ちた次の瞬間、そこを中心にして一気に爆発が広がった。凄い音と共に少し遅れてここまで爆風が届き、周りの細い木々はなぎ倒された。基地があったところには、ぽっかりと穴が空き空中には大きな爆炎が巻き上がっていた。
それを確認した俺はすぐさま、皆が向かった沿岸沿いに走る。身体強化と脚力強化を施し、バイク並みの速さで一気に都市を抜けていく。基地の爆発に、周辺の市民達が目覚め夜の町にわさわさと出てきた。目撃される事を嫌った俺は、すぐに屋根の上に登り走り始める。
町並みが切れたので、俺は畑に飛び降り高速で走り出した。来た道をそのまま辿り、俺は皆が待っている海岸沿いに到着したのだった。崖から飛び降りると、タケルが俺の所に来て言った。
「結構ギリだな。空が明るくなってきた」
「すぐに出よう」
「ボートの準備は出来ている」
「よし」
俺達は急いでボートに乗り込み、海上へと向かい予定の地点に着く。するとクキが言った。
「いない」
それを聞いてミナミが言う。
「まさか撃沈された?」
「わからん。想定時間を三十分も過ぎたら、一度陸に戻らねばならん。このゴムボートでは日本にはたどり着けん」
皆に緊張が走った。恐らくは既にこの国の軍隊と、安全保障を組んでいる軍隊が集まって来るだろう。そうすれば俺達が見つかってしまう可能性は高くなる。それはおろか、脱出できる可能性が無くなってしまうだろう。
「マズいよね」
「自衛隊が時間を狂わせるのはほとんどない」
「どうなるだろう」
「怖い…」
広い海の上で、仲間が迎えに来ないことに全員が不安になっていた。クキだけがただ静かに海を見つめて、微動だにせずに待っている。そうして待っていたが、とうとう想定の時間を三十分過ぎてしまうのだった。
クキが言う。
「戻らざるをえまい」
「でも、陸に戻ったところで…」
「ここにいたら死ぬ。燃料のあるうちに陸に戻るぞ」
そしてユミが答える。
「わかった。では戻るわ」
ユミがブンとエンジンをかけた時だった。アオイが言う。
「まって!」
すると海中からイルカが上がってきた。アオイはイルカと意思疎通させているようだ。
「こっちに向かってる鉄の塊がいるって、この子が言うの」
どうやらいつの間にかイルカを使役していたらしい。
「エンジンを止めろ」
クキが言ってユミがエンジンを止めた。その時だった。
ザバァァアアアアア! と潜水艦が浮上してきた。
「きた!」
潜水艦が寄ってきて、上部ハッチが開きそこからヨシズミが顔を出していた。
「おそくなりました。早く乗ってください! 複数の戦艦が居たので少し潜伏していました!」
「わかった!」
そして俺達は潜水艦に乗り込み、ボートを畳んでハッチに入る。するとヨシズミが言って来た。
「無線を傍受し暗号を解読したところ、大国と北が組んで攻めてきたとの事。作戦は成功したのですね?」
「成功だ」
ヨシズミが言った。
「急速潜航! 日本に帰るぞ!」
「「「「「「「「「「「「「「おー!」」」」」」」」」」」」」」
そうして俺達の電撃作戦は無事に終わった。俺とクキ以外の十二人はその場にへたり込み、それぞれが抱き合って自分達の無事を確かめる。中には泣いている者もいるし、今になってブルブルと震えている者もいる。恐ろしい作戦ではあったが、こうして全員が無事に戻れたことに、俺もホッと胸をなでおろすのだった。
そしてクキがヨシズミにぽつりと言った。
「まるで真珠湾だな」
「複雑な心境です。奇襲が日本の十八番みたいでいやですね」
「嫌なものか。これは大きな一歩だ。世界を救う為のな」
「は!」
そしてクキもヘルメットを脱いでその場に座り込んだ。
「流石にしんどかったぜ」
「皆様。日本までの船旅をゆったりとおくつろぎ下さい」
「そうさせてもらう」
仲間達は放心状態になり、自分達がやった事について実感も沸いていないようだ。だが、これはクキが言うように、この世界を救う為の第一歩なのだった。




