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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第五章 救世主編

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第310話 ゾンビで滅んだ国が防衛の基礎を作る

 ファーマ―社の試験体は、茨城のひたちなか市に上陸していた。だが自衛隊と俺達で綿密に対策を練ってきた結果、人的被害が出る前に食い止める事に成功する。俺達が敷いた防衛ラインは見事に機能したのだ。


 まず沿岸の大きな都市の生存者を内陸に移動させ、バリケードを築いて自衛隊がすぐに湾岸を監視できる態勢をとる。湾岸から何かが上陸すればセンサーがなり、すぐに自衛隊員が小高い丘からドローンを使って監視。それが試験体であればエマージェンシーコードヒカルを発動。バリケードの向こうの都市には機能停止したゾンビを大量に配置しており、敵はそいつらを生存者だと認識して攻撃するのだ。ゾンビを使って足止めをしている間に、到着した俺が高高度のヘリコプターから落下し殲滅する。


 確実にこちらの作戦勝ちだった。これまで試験体や敵国に何度も攻められて、俺達は学んだのである。討伐を終えた俺が監視所に戻ると、カブラギが俺に声をかけてきた。


「どうでしたか! 途中まではドローンで見ていたのですが、どうやらドローンが破損したようです」


 実はドローンは俺が壊してしまった。


「成功だ。自衛隊のおかげで人は死ななかった」


「いえいえ。ヒカルさんありきの作戦ですから、奴らが上陸してしまえば我々にはなすすべがありません」


「早期発見が肝心だ」


「今回はかなりうまくいきましたね。それで此度の敵はどのような感じでした?」


「大型の試験体が一体と、ファーマ―社のゾンビ人間が三人潜入していた。どうやら試験体には知能は無いらしく、ファーマ―社のゾンビ人間が誘導しないといけないらしい」


「コントロールは効かないという事ですね」


「そのようだ」


 そこで俺はカブラギに朗報を伝えた。


「それと、タカシマが試験体を殺す薬を開発した。それを弾丸に詰めて打ち込むことで、試験体を完全に機能停止させられるそうだ」


「本当ですか!」


「それはゾンビにも効くらしいぞ」


「なるほど、それがあれば制圧がかなり楽になりますね」


「ああ」


「ただ今回気になったのですが、沿岸部のゾンビが案山子だとバレる可能性があります。そうすれば足止めにならないかもしれませんよ」


「カブラギ。実はそれも解決しそうだ」


「どういうことです?」


「オオモリが、ゾンビを思考があるかの如く動かすプログラムを開発したんだ。ドローンを飛ばして、そいつらを動かす事が出来るらしい。更には何らかの作業すら出来るようになるかもしれないと言っている」


「ちょっと待ってください…どういうことです?」


「ゾンビを試験体の壁として、兵士の代わりに利用できるという事だ」


「そんな事が可能なのですか?」


「俺も分からんがそうらしい。あまり推奨は出来ないが、俺達が海外遠征に出ている間はそれでしのげるだろう」


「しのげますね。それは自衛隊が運用できるのでしょうか?」


「コントローラーさえあれば可能らしい」


 カブラギは少し身震いした。


「でも、若干怖いですね。目には目をという奴かもしれませんが、こちらの技術が敵に渡らないかが不安です」


「自衛隊が管理するしかないだろう」


「わかりました」


「そしてカブラギ。やるやらないの話ではない、そうしなければ日本が守れない」


「そうですね。ヒカルさん達が居ない間は我々、自衛隊が市民を死守します」


 カブラギが言う懸念も分かる。それも踏まえオオモリにもう一度検討してもらわねばならないだろう。


「次の戦いで、試験体破壊弾とゾンビコントロールシステムが導入されるだろう。それをもって、自衛隊が敵を迎撃出来る事を証明してほしい」


「とうとう来ますね、その時が」


「ああ。日本を頼むぞ」


「ふふっ、日本人じゃないヒカルさんに言われるとはもどかしい」


 するとそこにタケルがやってきて言う。


「鏑木さん。ヒカルは日本人以上に日本のことを考えてくれてるよ」


「そうですね」


 自衛隊は弾薬さえあればかなりの戦力となる。そこにタカシマの試験体破壊弾があれば、かなりの戦力となるはずだ。自衛隊達で試験体の進入を阻止できるようになれば、俺達も安心して他国に渡る事が出来るだろう。


「では試験体の死骸と、ファーマ―社ゾンビ人間の残骸を回収するぞ。俺の剣技で組織が変わってしまったが、まだまだ謎が多いからな。回収した残骸は、タカシマとミシェルが研究をすることになっている」


「わかりました。では部隊を率いていきましょう」


 俺達と自衛隊が車両に乗って、ひたちなか市の市街地に降りていくのだった。自衛隊も現地にいって見分し、状況を確認する事で役立てられる事もあるらしい。


 俺が案内した先に、龍撃蘇生斬で斬った試験体とファーマ―社のゾンビ人間の残骸があった。本来はヘルフレイムですべてを焼き尽くすところなのだが、タカシマとミシェルに素材を持ち帰ってほしいと依頼されていたのである。そのままでは超再生が邪魔となるため、蘇生斬によってその機能を破壊した。


 車を降りるとタケルが言う。


「くっせえ!」


「確かに臭いわね」

「酷い臭い」


 カブラギが試験体に近づいて、表面をナイフで突き刺した。


「腐ってますね。まるでクジラが腐ったような臭いだ」


「なぜこんなに悪臭がするんだ」


 すると自衛隊員の部下がいう。


「恐らく海水に浸かって腐ったんでしょう」


 カブラギが部下に聞いた。


「という事は、船や潜水艦に乗せてきたわけではない?」


「潜水艦には乗らんでしょう。恐らくは潜水艦にロープをつけて、海中を引っ張ってきたんだと思われます」


「どうしてそう思う?」


「ここを見てください。再生していて目立ちませんが、おそらく齧られてますよ。サメに」


「本当だ…」


 するとクキが笑った。


「そのサメ、腹壊さねえと良いけどな」


「ですね」


 それを聞いて俺は合点がいった。


「なるほどな。なぜファーマ―社の試験体が大量に襲ってこないかが分かった。ここに連れてくるだけでも相当な苦労をしているという事だ」


「そのようですね。敵からすれば、何度か送り込んでいれば蔓延するだろうと考えているのでしょう」


「既に試験体の治療薬も出来ているのだがな」


「そんな事は敵は知りませんよ。それにしても、なぜひたちなか市だったのでしょう? 特に重要な拠点では無いと思ったのですが」


 それにはマナが答えた。


「鏑木さん。実は過去に我々がここから海外にネットをつないだのです。恐らくは通信機器の破壊も視野に入れていたのではないでしょうか?」


「なるほど」


 そしてクキが言う。


「潜入させたファーマ―社のゾンビ工作員は、ことごとくヒカルに殺されたからな。日本に何らかの異変が起きている事は気づいているだろう」


 そして俺が言う。


「クキの言うとおりだろう。だからその前にだ。その前に世界を変えねばなるまい」


 俺の言葉を聞いて皆が頷いた。世界に日本の現状を気づかれる前に俺達はやらねばならない。その為の下準備は整いつつある。世界が知らない水面下で、着々と爪を研ぎ俺達は反撃の時を待つのだった。

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