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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第五章 救世主編

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307/661

第306話 冒険が始まるその日まで

 俺達が外国の軍隊を撃退してからというもの、あからさまに海を行く船舶が増え航空機までが飛ぶようになった。それによって自衛隊が空を飛ぶときは、本土上空の真ん中を低空飛行するようになり行動に制限がかけられる。明らかに状況は悪くなってしまったが、その反面、国内の生存者救出作業は格段に向上した。それは全国民が救出に参加するようになったからで、自衛隊達の国土防衛の体制も着々と整えられている。


 その中で俺達にカブラギから朗報があると連絡が入る。そこで俺達は北海道の自衛隊余市基地へと急行していた。そこで俺達が見せられたものは海に浮かぶ船だった。


「カブラギ、これはなんだ?」


「太平洋沿岸の海上自衛隊基地は全滅していましたが、ここの船舶は全て無事でした。どうやらファーマ―社はロシアを警戒して、こちらまで来ていなかったようです」


 それを見てクキが喜ぶ。


「最新鋭の潜水艦があるじゃないか」


「そうなんです」


「こんなところによくあったな」


「これは就役前の艦ですよ。しかもなんと、最新鋭のらいげいです」


「らいげいは就役前で艤装ぎそう中だったはずだがな」


「そうですね」


 俺はクキに聞く。


「どういう船だ?」


「潜水艦。海の中を行く奴だ。しかも最新鋭で一千億近い建造費で作られた船だよ」


 すると自衛隊員の一人が言った。


「自分は海自で潜水艦に乗っておりました!」


「おー! なら、詳しい事はこいつに聞いたらいい」


 クキに促された自衛官は話をしだす。


「これは日本で一番新しい潜水艦ですね。ディーゼルではありますが、低振動と静粛性に優れております。たいげい型は紛れもなく日本一の船、いえ世界一かもしれません。探知性能や被探知防止性能も高く、新型戦闘管理システムにより情報処理能力に最も優れています! そして!」


 と嬉しそうに話すが、聞いてもちんぷんかんぷんな俺はその話を止める。


「あー、すまん。そう言うのはよくわからんが、これで何ができるか知りたい」


 するとドヤ顔でそいつが言った。


「海自が旧式の潜水艦で日米合同訓練に参加しましたが、アメリカに勝ちました。その時はアメリカが我々を発見する事が出来ず、我々が仕方なく浮上したんです。なんとアメリカ軍は我々が沈没したと思っていたらしいです。日本には原子力潜水艦はありませんが、我々の技量によってそれを凌駕する事が出来ます!」


 それでも俺にはよくわからない。


「その…」


 すると俺の表情にクキが気が付いた。


「いいかヒカル。この船があれば、俺達は誰にも気づかれずに他国に侵入出来るってこった」


「なんだと! そんなものがあるのか?」


「そういうこった」


 それを聞いたタケルが俺の肩をポンと叩いて言う。


「いよいよじゃないかヒカル。これで俺達は世界を相手できる」


「ああ」


 そしてカブラギが言った。


「ならば海自出身者を集めよう」


 すると海上自衛隊の隊員が言う。


「恐らく一般人の船乗りにも声をかけた方がいいかと。遠洋に出るとなれば、かなり消耗しますので交代要員の確保が必要です」


「ならすぐに港町で聞きまわるか」


 俺達はすぐに行動に移る。カブラギもこのさびれた基地へ自衛官を増員し、一般人の警護要員も増やすと言っている。


 移動しながら俺がクキに聞いた。


「なんであそこの港は生き残っていたんだろう?」


「重要拠点じゃないからだ。しかも最新鋭の就役前の船があるって事は、危機的な日本の状況を察知した奴がいたんだろうな。こんなところに最新鋭の潜水艦なんてあるわけがないんだ」


「こうなる事を想定して回していた奴がいると?」


「そう言う事になるな」


「つくづく、日本人というのは大したものだ」


「自衛隊が凄いんだよ」


 とはいえ日本人は凄い。生存者救出の事といい防衛ラインの拡充の事といい、一度やる事が決まると徹底して早いのだ。前世でもこんな国はなかったし、これほど統率の取れた動きが出来る国民に驚きだった。


 そして…


 更に、その後も俺達がカブラギ達と訓練を続けた結果、仲間達の動きがかなり洗練されてきた。


 ぼんやりしていたユンですら、今では自衛隊顔負けの動きをするようになる。自衛隊との訓練でレベルが上がるわけではないが、地力が上がる事によって授かったスキルにより磨きがかかったのだ。ユンが身につけた能力は隠形というもので、本気で隠れると俺ですら一瞬見失うほどだ。どうやら男達に凌辱された日々のトラウマにより、男に見つかりたくないという気持ちが強いらしい。選りすぐりと言われた自衛隊達も、本気で隠れるユンには手を焼いている。


 そしてもう一つ。とうとうアオイが覚醒してしまった。子供という事もあるためか、アオイは魔法を獲得してしまったのである。目に見えるような攻撃魔法ではないが、なんとアオイは小動物をテイムできるようになったのだ。小さな動物の目を借りて周囲を見回す事が出来るため、情報収集と逃亡に関しては自衛隊も舌を巻いた。


 これによってユンとアオイが手を組んだ時、俺でも見つけるのが難しくなった。恐らくこの地上の人間が、本気で逃げるこの二人を捕らえる事は不可能だと思える。俺と行動し続ける事によって、仲間の十三人はどんどん進化し続けているのである。


 俺はつくづく、前世でレベル千を超えて良かったと思った。もしそうでなければ、この世界の人間の能力など引き上げる事は不可能だっただろう。俺からすれば微々たる影響ではあるが、この世界の人間にとって大きな変化をもたらした。


 仲間達は新たな自分の能力に気が付き、自衛隊と訓練する事でその使い方に磨きをかけているのだ。挑む冒険に向けて着々と準備を整え、十四人は粛々とその日に向けて研鑽を積むのだった。

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