第299話 ギルド十カ条とゾンビコントロール
沖縄救出を先送りした日から数日後、自衛隊が発足した指導部にてルールが作られたという。俺達が呼ばれてそのルールを見る事にした。
1、正体不明の外国籍の船が上陸した場合、速やかにその地を放棄して離れる
2、1における侵入者が軍隊、一般人に限らずエマージェンシーコールヒカルを発動させる
3、銃火器をもって日本人同士の物資の奪い合いがあった場合、無条件粛清の対象となる
4、許可なく銃火器で人を傷つけた粛清対象は処刑、もしくは海洋への島流しとする
5、新しい生存者を発見した場合はゾンビ除去薬を必ず投与する
6、その際、ゾンビ因子の排出が見られない者がいたら当局へ連絡する
7、身体健康な生存者は生存の為の協力を惜しまぬ事
8、働かぬ者が居た場合は当局へ連絡する
9、ファーマ―社及び敵国の人間を確認した場合は、争わずに逃げる事
10、ゾンビまたは侵略により身体の危険が認められた場合のみ、応戦を許可し銃の使用を認める
カブラギが言った。
「どうでしょう?」
「いいんじゃないか? これぐらい単純で良い」
「わかりました。それではこれを全国の自衛隊員に通達し、各セーフティーゾーンへ浸透させたいと思います。それが浸透したのを確認した場所から、銃火器の配布を行う事にいたします」
「それで行こう」
カブラギは部屋を出て行った。するとヤマザキが言う。
「いよいよか」
「そうだな。オオモリのプログラムが途絶える危険性もあるだろう」
「俺が日本人だからだろうか? かなり厳しく感じるところもあるが」
「あれぐらいでなければ、恐らく統率はとれんだろう」
「そうだな。ヒカルはもっとシビアな世界から来たんだものな」
「人は死と隣り合わせで生きていたからな。今の日本はそれより酷いんだ。本来はかなり厳しくやらないといけないと思っている」
「だな」
俺達が話しているところに、今度はオオモリが飛び込んできた。
「ヒカルさん! ヒカルさん!」
「どうした?」
「敵軍の防衛システムに侵入するプログラム。及びウイルスによる破壊プログラム、さらには誤情報誘導プログラム、敵システム操作プログラムが完成しました」
「早いな」
「いや、元よりコツコツ進めていました。愛菜さんの知識と僕の知識を合わせて、いろいろと想定してましたし」
「面白い」
「あとは、それをいつ使うかですね」
「今のところは国内の生存者救出に専念だが、先ほどカブラギが言っていた通りに攻めて来る国がいたら、そこを最初にしてもいいんじゃないだろうか?」
「分かりました! あともう一ついいですか?」
「なんだ?」
「出来れば、ヒカルさんとゾンビがいる場所に行って試験したい事があるんです」
「試験?」
「ええ」
「わかった」
俺はすぐにクキに言って、ヘリコプターを出してもらう事にする。俺とクキ、オオモリとマナ、助手にミオとミナミを連れて出発した。セーフティーゾーン以外の場所に差し掛かると、地面をゾンビがウロウロと動いているのが分かる。ヘリコプターのローター音を確認して、そいつらが空に手を差し伸べて集まってきた。
「着いたぞ」
「では」
オオモリは手のひらに持った何かを、ヘリコプターの外に放り投げる。するとそれには小さな落下傘がついていて、ゆっくりと落ちて行った。オオモリがパソコンを覗き込むと、揺れる景色が映る。どうやら落下傘の下にぶら下がっている物から映し出された映像らしい。ゾンビの中に落ちると、一瞬それにゾンビが群がったが、食べ物じゃないと分かると見向きもしなくなった。
「ではいきます」
オオモリがパソコンの傍らにある、小型の発電機に取り付けてある機械に通電をする。
「大森君。いいわよ」
ヘリコプターの下を覗き込んでいるマナが合図をくれた。
「了解です」
オオモリがパチパチと何かを操作すると、マナが大きな声で言う。
「まずは第一段階オッケーよ! 皆も見てくれない? 」
俺達が下を覗き込むと、ゾンビが一か所に向かって円になりジッと何かを見ている。それはさっきオオモリが落とした機械だった。ゾンビは動かずに、ただそれを見つめるだけだった。
「停止プログラムか?」
「いえ。では愛菜さん」
「わかったわ。美桜と南も手伝ってくれる?」
「わかった」
「はい」
すると今度は水風船を取り出して、それを地上にひょいひょいと投げて行くのだった。そしてマナが言う。
「投げたわよ」
「了解です。では」
するとオオモリが今度はドローンを持ち出して、それを窓から出してやった。画面を見ながらドローンが降りていくと、今度はゾンビ達がドローンを凝視している。するとゾンビ達はドローンについて歩きだしたのだった。音につられているのかと言えばそうでもなく、ドローンが止まればゾンビは黙って止まる。ドローンが動くと列をなしてドローンについて行くのだ。
「第二段階は成功です」
「凄いなオオモリ」
「いえ。これからですよ」
オオモリがパチパチとパソコンを叩く。すると今度はゾンビ達の視線がドローンから、再びヘリコプターに向かっていた。だが一体も手を挙げてはおらず、そこに制止してジッと見上げるだけだ。
「制御しているのか?」
「ええ。実は高島教授とミシェルさんにも協力してもらったんです。無くなった宮田教授の研究データを基にしてるんですよ」
「遺伝子工学だったか?」
「そうです。見てください」
オオモリがパチパチとパソコンを弾いた。するとそこで衝撃的な事が起きたのだった。なんとゾンビ達がヘリコプターに向かって手を振っているのだ。屍人が無表情の死に顔で全部が同じ行動をとっている。
「あれは?」
「ゾンビコントロールに効く薬ですよ。薬品に6Gの電波が通るような素材を注入し、それがナノ粒子となってゾンビに入り込んでます。それを僕のプログラムで操作してます」
「面白い」
「これから、ゾンビの片付けが楽になりますよ」
「そうか…火葬場に勝手に歩いて行くって事か」
「そうです。物凄く研究が進めば、ゾンビに作業をさせられるようになるかもしれません。そうすれば休みなく無限に仕事をする、労働力が手に入れられます」
俺はある事を思い出して笑いながら言う。
「ははは。オオモリ、お前がネクロマンサーだったなんてな」
「ネクロマンサー?」
「そう言う能力の持ち主だよ」
「なんか分かんないですけど、役に立ちそうで何よりです」
俺は地面に集まって手を振っているゾンビをみて、前世で出会ったネクロマンサーの事を思い出していた。奴は死の軍団を率いて、街を襲い都市を壊滅させたことがある。だがそれは、その街の領主に対しての復讐だった。奴は自分の伴侶や子供を殺され、その復讐として死の軍団を使って街を襲ったのだ。俺達のパーティーが壊滅させたが、いまなら少しは奴の想いが分かるかもしれない。
試験を成功させたあと、皆でゾンビ破壊薬を散布し全てのゾンビを殺した。もっと複雑な操作が可能になれば、倒したゾンビをゾンビが片付けれれるようになるだろう。
俺はオオモリの肩をグイっと掴んで、ニヤリと笑って言う。
「正しい事に使おうな」
「もちろんです! でヒカルさん。最初に墜とした機械、拾ってきてもらっていいですか?」
「わかった」
俺はそのままヘリコプターを飛び降り、オオモリが落下させた機械を拾ってヘリコプターに向かってジャンプするのだった。




