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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第五章 救世主編

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第298話 目の前に立ちはだかる超難題

 日本の生存者救出作業は大詰めを迎えている。完全とは言えないまでも、北海道から九州までいたるところにセーフティーゾーンが確保できたのだ。そして現在、俺達は鹿児島に集結している。海を眺めながらカブラギがクキに言う。


「日本周辺を航行する多国籍の船舶が増えてきましたね」


「どうするかな」


「下手をすれば領空侵犯してくる航空機と接触するかもしれません」


「撃墜の可能性があるって事だな」


「はい。更に船舶も撃沈される可能性が高い」


 そう。俺達はこれから沖縄に向かうかどうかの話をしている。下手をすれば、他国の戦闘機や軍艦から撃墜される可能性があるというのだ。


「それに、沖縄がどうなってるか、さっぱりわからないって事だ」


「調査のしようもなく、現状がどうなっているのか皆目見当がつきません」


「だな」


「ここから奄美まで五百キロ、奄美から沖縄まで三百キロ、更に石垣迄飛べば四百キロ。合計で千二百キロを飛ばねばなりません。そして想定されている敵軍隊は、中国、米国、朝鮮半島。ヘリコプターや通常の船舶では到底たどり着けないでしょう」


「現状を考えると見捨てるか、ジェットで一気に突破するかか?」


「空自の戦闘機乗りもおりますが、流石に危険かと思われますね」


 そこでユミが言った。


「小さなボートはどうかな?」


「あっという間に沈められるだろうな。やはりジェットで行くのが現実的かもしれん」


それに対して俺が言う。


「泳げばいいんじゃないか?」


「へ?」

「は?」


「だから俺が単独で泳いで行けばいい」


 だがそこでクキに反対された。


「もしそれが可能だとしても、その数週間に本土で何かあった場合、ヒカル無しで軍隊と戦う事になる」


「なるほど」


 かなりの難題にぶち当たってしまう。俺が行けば沖縄は何とかなるかもしれないが、俺がいない間に本土に敵国が攻めて来れば生き残った人達の命が危ない。


 するとカブラギが言う。


「ヘイロー降下で沖縄に落下すれば、敵に迎撃される事無く潜入出来るかもしれません。帰りは米軍基地より航空機を奪取し、本土迄戻って来る」


「一万メートルからの降下か…。それを可能とした場合の、面子はどうなる? ヘイロー降下なら俺も出来るが」


「ヒカルさん、九鬼さん、私、吉住一尉、春乃三尉でどうでしょう?」


「五人か、だが米軍基地が生きている保証もなく、沖縄の人間がどうなっているかもわからない。まして米軍基地が生きていたとしても、我々の味方になってくれる可能性は薄いぜ」


「協力を要請するのではありません。航空機の奪取です」


「撃墜されるのがオチだ」


 そこで俺が言う。


「飛び立つと同時に基地を壊滅させれば、逃げる算段はつくんじゃないか?」


「お前なら可能だろうが米軍を敵に回すかもしれん。今はまだそれを選ぶ事は出来ん」


「ファーマ―社とは違うという事か?」


「規模が違いすぎるし、俺達が逃げた先が日本だとバレれば軍隊を投入してくるだろう」


「そうか」


 結局数時間の話し合いの結果、沖縄への作戦は行わない事にした。だが俺はちょっと気になった事を言う。


「みなに聞きたいんだが、日本を脅かす軍隊とは世界にどれくらいいると思う?」


 クキが答える。


「そうだな。まずは米、中、露、朝鮮、豪は決定だろう。加えて加、英ってところだろうな。下手をするとNATOも絡むかもしれん」


「まずはそいつらを抑える事は出来ないのか?」


「ぷっ! 世界の軍隊を相手にするって事だぞ?」


「各個撃破していれば、いつかは静かになるんじゃないか?」


「ていうかヒカルが言うと…現実味を帯びてくるな。だが、世界は広いぞ」


「もし少しでも可能性があるなら、皆で話し合うべきだ」


 クキとカブラギ、ヨシズミもハルノも顔を見合わせた。


「世界に…喧嘩を売るか…」


 クキと自衛隊達は考え込んでしまった。するとオオモリが言う。


「もしかしたらですが…」


「なんだ?」


「僕がサイバーテロを仕掛けて、軍隊を麻痺させれば何とかなるんじゃないですか? もちろん日本からではありませんが、出来そうな気がします」


 それを聞いたクキと自衛隊達はオオモリを見た。


「なんだって?」


「軍隊の回線を壊滅させることが出来るかもしれません。ヒカルさんなら各国の軍事基地に忍び込むのは容易な気がするんです」


「サイバーテロか…。それはかなり可能性が上がるぞ」


「ではその方向に向かってやっていく事で決まりで良いのではないですか? いつまでも日本が泣き寝入りする必要があるんですか?」


 珍しくオオモリが感情的になっている。だがコイツは自信が無いとこんなことを言わない奴だ。恐らくは、現実的にそれが可能だと思って言っている。


 俺が皆に言った。


「俺はオオモリのアイデアに乗りたい」


 するとクキが言う


「いずれにせよ、このまま日本国内の生存者を救い続けても世界は受け入れないだろうしな」


 カブラギが微笑みながら首を振る。


「まったく。なんていう人らだろう。なんか可能性を感じるよ」


 ヨシズミが言った。


「世界と戦う…か…。第二次世界大戦より酷いですね」


「日本にはまだ沢山の生存者がいる。彼らはゾンビの世界を生き抜いた。ミシェルが言っていたんだが、恐らくじきに世界でもゾンビは広がっていくとの事だ。このパンデミックを、いつまでも食い止めておける訳が無いと言っていた。そんな世界を救うのは日本の民だと思う」


 そう言う俺にカブラギが聞いて来る。


「君のメンタルを見習いたいよ。何処からその強い気持ちが来るのか」


「アオイとジェットコースターに乗るためだ」


「プッ! あはははははは! そうかそうか!」


 皆が笑った。だが俺はいたって真剣、皆の夢をかなえる為ならば世界とだって戦う。今は皆が半信半疑かもしれないが、俺は必ずやり遂げると決めたのだった。

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