第293話 生存者救出部隊の増強
神戸の生存者を京都に移し、自衛隊員達にゾンビ停止プログラムの効力を見せる。ゾンビが入らないセーフティーゾーンと、ゾンビ破壊薬、そしてゾンビ因子除去薬の効果を見て自衛隊員達が申し出てきた。
カブラギが言う。
「我々も救出作戦に参加したい。東では一般人達がやっているんだろう? 我々自衛隊が平和な場所でぬくぬくとしてるわけにはいかない」
俺はクキに聞いた。
「クキ。どうしたらいい?」
「何言ってんだよヒカル。こいつらは第一空挺団だぞ、俺なんかよりよっぽど向いている」
「そういうものなのか?」
「エキスパートだ」
俺はカブラギ達に聞いた。
「どうしたらいい?」
「石川県に第六航空団の基地がある。そこなら航空機が残っている可能性が高い」
するとミオが俺に地図を見せて来る。京都から日本海側に抜けて北上したあたりにそれはあった。
「よし。そう言う事なら、クキ。一番いい方法を考えてくれ」
「鏑木二佐。第一空挺団の精鋭を三十名集めてくれ。チヌークで連れて行く。ゾンビ達を掃除したら速やかに、使える航空機と装備を回収。さらに周辺の基地を周り装備の拡充を図るといい。三百五十人の隊員の再編をして、仙台に薬品を取りに行く。後は立案した作戦通りに、各地の生存者を救出しよう」
それを聞いたカブラギが言う。
「九鬼さん。我が隊の中にサイバー防衛部隊の隊員がおります」
「そりゃ好都合だ。オオモリとマナに聞いて、セーフティーゾーンを作る方法を伝授してもらえ」
「わかりました」
「すぐに行くぞ」
「了解!」
そしてカブラギとヨシズミとハルノが部屋を出て行った。今、俺達はタカシマ達が拠点にしていた、大学の天文台にいる。ここは未だに拠点としての機能を満たしており、自衛隊達はここを拠点として周辺の救出活動を行うらしい。
十分で三十名の隊員が集まってきた。まるで予め決めていたかのように。
「行こう」
俺達の仲間と第一空挺団と自衛隊達を乗せ、チヌークヘリは石川県に向かった。一時間ほど飛ぶと、カブラギが言っていた飛行場が見えてきた。セーフティーゾーンではないので敷地内にゾンビがいるのが見える。
するとカブラギ達が聞いて来る。
「装備は少ししかない。あれだけのゾンビをどうやって片付けるつもりです?」
クキが答えた。
「ああ。そういや見てみたいって言ってたか?」
「例のヒカル君のゾンビ討伐をですか?」
「そうだ」
二人が何かを話しているようだが、俺はすぐに横のハッチを開ける。カブラギが叫んだ。
「あんた! パラシュートもつけずなにを!」
という言葉を尻目に俺は飛び降りる。百メートル下の空港には、ヘリコプターの音につられたゾンビの群れがいた。俺は魔気を纏い、日本刀を構えつつ中心に降り立って、群がって来るゾンビ達に向け新しい剣技を繰り出す。
「炎龍飛空斬」
炎の龍が出現し俺の周りが燃やし尽くされる。視界が良くなり、俺はすぐに次の剣技を繰り出した。
「飛空蘇生斬」
見えている限りのゾンビが一気に倒れて動かなくなり、そこで俺は上空に手を振った。ヘリコプターはゆっくりと着陸し、後部のハッチが開くと自衛隊と仲間達が降りて来る。
カブラギが言った。
「どうなってます? なぜパラシュート無しで、あの高度からコンクリートに落ちて生きてるんです? 銃も持たずに何故こんな大量のゾンビを一瞬で?」
すると後ろからクキがやって来て言う。
「言ってやれよヒカル」
「俺は体が丈夫で、剣を使うのが人より優れているからだ」
一瞬、自衛隊達があっけに取られて、言葉を無くしたようだった。俺はありのままを言ったまで。
今度はタケルが言う。
「金髪の優男だからって舐めんじゃねえって事だよ。俺のマブダチには当たり前の事なんだからよ」
「舐めてなどいないさ。ただ、そんな事を我々も出来るようになるのかと考えただけだ」
「はあ? あれ見て自分らが出来るようになるかを考える?」
「似た効果を出せればそれでいい」
するとクキがタケルに言った。
「バケモンみたいな考え方だろ?」
「同じ日本人とは思えねえよ」
タケルは自分をさておき何を言っているのだろう?
「タケル。お前は何を言っているんだ? ここにいる中なら、俺の次に強いのはお前だ」
「いやいや。ヒカルやめろって。本職を前に変な事言うな」
「本当の事だ」
それを聞いたカブラギがクキに聞く。
「どういうことだ?」
「そのまんまだよ。俺はそこの暴走族とはタイマンをはりたくないね」
「おいおい、クキさんよ。暴走族はひでえな、これでもれっきとしたレーサーなんだが」
すると自衛隊員の中から声を上げた奴がいた。
「やっぱり! どこかで見た事あると思ったら! 岡田だ! 岡田武! バイクレーサーの岡田武さんですよね!」
「お? 俺を知ってるやつがいるのか?」
「知ってますよ! ファンです!」
「そんな活躍してねえけどな」
「いやいや。日本が期待するルーキーです! 応援してたんですよ! ゾンビの世界になる前は!」
「そいつは…ありがとう」
そして自衛隊員が手を出したのでタケルが握手をした。だがカブラギが言う。
「ちょっと待ってくれ。レーサーが第一空挺団よりも、特殊作戦群の元隊長よりも強い?」
クキが答えた。
「武器を使わなけりゃな。銃を使えば話は変わって来る」
「どういうことだ」
「さあてね」
タケルが何故ここまで強くなってしまったかを、俺だけが分かっていた。タケルの欠損した腕を再生させるために、俺は他の人らにはやらなかった再生魔法を何度もタケルにかけまくった。そのせいで、すっかり体組織が変わり強化されてしまったのだ。本人も良く分かっておらず、いまもピンと来ていないらしい。
だがそこでヤマザキが水を差した。
「話し合いの最中、悪いんだが急いだ方が良い。じきにゾンビも集まって来るだろう。作業効率を考えてもすぐに動こう」
「そうでしたね。急ぎましょう」
そして自衛隊員達は、基地のビルや格納庫を探し動く航空機を次々と探していった。流石はプロ中のプロと言ったところだろう。その手際の良さは、俺達などよりずっと鮮やかだった。
一時間も経たずに航空機と武器を集める。
それからヘリコプターで周辺の自衛隊基地を周り、武器を回収していった。いつしかヘリコプターは十機ほどの編成となり連なって飛び始める。俺達は、一度京都に戻って更に自衛隊員を補充した。
その後、俺達が仙台に着いた頃には、夕日が仙台の町を照らしていた。
「夕日の中から突然ヘリコプターの編隊が来れば、ファーマ―社だと勘違いするだろう。俺が先に言って説明する」
そう言って俺は、上空のヘリコプターから仙台の町に飛び降りるのだった。




