第291話 自衛隊に関する以外な事実
ホテルに戻り仲間に状況を伝えると、喜んで食料を回収しに行ってくれると言う。俺達は一度市街地に入り、ゾンビを倒しながら食料を確保していく。米などは古くても食べられるとの事で、見つければ全て回収し、インスタント食品なども出来るだけ回収した。また高級な酒を見つけたものの、俺は自分の懐に入れず回収用のトラックに全て入れる。
「沢山の人が生き残っていたなんてすばらしいわ」
「ああユリナ。自衛隊が守ってくれたみたいだ」
「心強いわね」
「そうだな」
新しく手に入れたトラックを段ボールと物資でいっぱいにし、俺達は自衛隊のトラックと搬送用トラックに分かれて神戸ポートアイランドに向かった。心なしか皆の気持ちが高揚しているのか、トラックの中は和気あいあいと会話が弾んでいる。
橋を渡りバリケードに近づいて行くと、相手が旗を振って止まるように指示をしてきた。俺達が止まると、入り口の金網が開いてトラックが受け入れられる。
俺が降りて自衛隊の男に言った。
「仲間を連れてきた」
「わかりました」
仲間達がトラックを降りると、自衛隊員たちがざわついた。
「女が多いですな。よく生き残れたものだ」
「こう見えて彼女らは強い」
「強い女性はすばらしいです」
「よろしくお願いします」
ユリナが握手を求めると、自衛隊は喜んで手を差し出して来た。
「こんな美人に握手を求められるとは、嬉しいですな!」
「ふふふ」
そして同じような緑の服を着たクキを見て自衛隊が言った。
「あなたが自衛官ですか?」
「元だな。あんたら随分動きが良いようだが、顔を見た事あるぞ。あんたとあんたとあんた、第一空挺団だろ?」
「よくわかりましたね。見られた事があったのでしょうか?」
「見た事ある顔だ。エリート中のエリートだな。最強の自衛官じゃないか」
「既に昔の話です。今はこの場所の自警団ですよ」
「ファーマ―社を追い払い、ここの市民を守ったのもうなずける。よく生き残れたものだ」
「こちらにも大きな被害が出ましたし、航空機や船舶は全滅です」
「でも生き残った」
「まあ、そうですね」
俺がクキに聞く。
「この人達は、そんなに凄いのか?」
「第一空挺団は格が違うんだよ。精鋭無比、普通の自衛官とはわけが違う。物凄い訓練を受けており、一般の自衛官とは比較にならん部隊だ。まあ一種のバケモンだな」
そんな事を言っていると、相手の自衛官が言う。
「そう言うあなたも隙が無さすぎる。その佇まいを見て分かります」
「大したことはない」
「さしずめ特殊作戦群と言ったところでしょうか? 顔だしNGのエリート部隊。部隊内でしか顔を知られる事はない為、我々も知る所ではありませんが」
「流石に第一空挺団だな。その嗅覚はするどいらしい」
「やはり。そうでしたか」
「階級と名前は?」
「私が鏑木二佐、こっちが吉住一尉、こちらが春乃三尉です」
「おお、あんたが鏑木二佐か!」
「知っておいででしたか?」
「有名人だ」
「恐れ入りますが、あなたの名前を聞かせていただいても?」
「九鬼だ。九鬼修平」
すると相手の自衛官達の空気がいきなり変わった。全員がビシっと敬礼をして、カブラギが大きな声で言う。
「失礼いたしました! このような場所であなたに会えるとは光栄です!」
「やめてくれ。昔の話だ」
「いえ! 伝説の自衛官にお目見えできるとは感動であります!」
ふむ。やはりクキはただものでは無かったらしい。俺の気配感知を逃れる力がある奴だから相当なんだろう。
「第一空挺団に名を覚えてもらえているとは光栄だよ」
「アメリカ海兵隊が恐れた男! 日本特殊部隊である特殊作戦群の歴代隊長でも追随を許さないと有名です!」
「大げさすぎないか?」
「こちらの女性達が生き延びて来れた理由が分かりました!」
「いやいや。ここの女達が生き残ってきたのは、そこの金髪の優男のおかげだと思うがな」
「えっ?」
自衛隊の視線が一気に俺に向いた。
「正真正銘のバケモノとはそいつの事だぜ。ここにいる全員殺されなくてよかったな」
するとカブラギが言った。
「ギリギリで見抜きました。これは人間の領域を超えているなと」
「流石は第一空挺団の鏑木さんだ。生き延びる力があるようだ」
「一体、彼は何者なのですか?」
「んー。ル〇ヴィ〇ン好きのお洒落さんだ。彼はいつもあの格好だ」
「おしゃれさん…」
「そうだ」
そして俺は言葉を遮る。
「悪いが、もう一つ伝えたいことがある。あのトラックに食料品が大量に詰め込んであるんだ。ここの生存者に食べさせてやってくれないか」
「なんですって?」
そして仲間達がトラックの後ろの扉を開くと、自衛官達が声を上げた。
「こんなに!」
「いいのか?」
「命がけで回収した物だろう?」
それを聞いたタケルが言う。
「良いんだって。ひもじい思いしてるやつもいるだろうし、いっぱい食わしてやってほしい」
「ありがたく頂戴いたします!」
そこで俺はオオモリとマナを連れてきた。自衛隊にそろそろ真実を伝えようと思う。
「それで俺達がこれまで見てきた真実を伝えたいんだが、場所はここでいいかな?」
「それではそこにプレハブがありますので、そちらに移動しましょう!」
俺達は自衛隊に連れられて、バリケードから少し離れた所にある小屋に入る。そこでオオモリとマナがパソコンを用意し、データの説明を始めた。次々にデータを見ていくうちに、自衛隊達は驚愕の表情をあらわにしていった。
数時間もそこでそうしていたろうか? ようやく自衛隊達は俺の力に気が付いたようだ。
「ゾンビ因子を除去する? その力を持つというのはよくわからない」
「ですね。手も機械も使わずにどうやって…」
するとクキが自衛隊達に言った。
「やはりそうなるよな? 分かる。俺もその口だ。だが百聞は一見に如かず。ヒカルここでやっていいんじゃないか?」
「わかった」
俺はゾンビ因子除去魔法を発動させ、小屋の中を光で包んだ。すると自衛官達の皮膚が白くなり、お互いがお互いを見て目を白黒させている。
「なんですか? これは?」
「二佐! 真っ白です」
「そう言うお前も」
自衛官がざわついて、クキが笑って言う。
「だろ? あり得ないんだよ。いろいろと」
そして自衛官が俺に言った。
「どういうことです?」
「体内の遺伝子に入り込んだゾンビ因子を浮き彫りにして、機能を止め外に排出させただけだ」
「排出させただけ…って言われても」
「とにかくもうゾンビ因子の影響は受けない」
「なんと…」
そしてクキが言う。
「見ものだな。第一空挺団がヒカルの施術を受けてどう生まれ変わるのか」
するとカブラギが言った。
「ヒカルさん! 前言撤回だ! ここには二千人弱の生存者がいるんだが、そのすべてのゾンビ因子を取り除いて欲しい!」
「もとよりそのつもりだ!」
「ありがとう! ありがとう!」
自衛官達が俺に礼をしてくる。こんなに簡単に説得できたのは、クキがいたことによるものが大きく俺はひそかにクキを見直していた。俺がクキをチラリと見ると、何事も無かったように手をひらひらさせるのだった。




