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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第五章 救世主編

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第289話 謎の集団との接触

 朝の光に照らされた神戸ポートアイランドを、俺達は高層ホテルの最上階から見下ろしていた。各自が双眼鏡を構えて、見える範囲の事を伝え合っている。


 タケルがクキに聞いた。


「九鬼さんよ。あそこにゃ一般人もいるようだが、迷彩服を来てる人もちらほらいるみたいだ。ありゃやっぱり自衛官だと思うか?」


「元の職場の奴らだから見間違えようがない、それにファーマ―社の奴らとは明らかに動きが違う、自衛官のエキスパートは動きが洗練されているから分かるんだ。ファーマ―社の私兵とは質が違う」


「つうことは自衛隊でも選りすぐり、ってこと?」


「レンジャー持ちかもしれん」


 するとユリナが言った。


「問題はあれが敵か味方かってところよね? ただの生存者ならば良いけど、ファーマ―社に与しているとも考えられる。あそこに行った途端に銃撃されたらたまったもんじゃないわ」


「そればっかりは、俺も分からん」


 クキが手をひらひらさせて言う。そこで俺が皆に言った。


「問題ない、俺が直接聞いて来るさ。万が一、ファーマ―社だったら俺が全てケリをつける。だがもしあれが生存者だったなら、火で合図を送るから合流しよう」


「わかった、そんじゃ気をつけてな」


「気を付ける? 俺がか? 教えてくれクキ、何に気をつければいい?」


 それを聞いたタケルが笑って言う。


「ヒカルは核弾頭だって防いだ男だぞ。レベル千つうのは何でもできるつうことだよ、九鬼さん」


「ヒカルは世界ビックリショーみたいな奴だったな。じゃ、まあ適当にやってこい」


「ああ」


 そして俺は高層ビルを降り、一気に神戸ポートアイランドに走り寄っていく。すると何本もの道路や橋が島に向かって抜けているのが分かる。その途中にはバリケードがあり、そこでゾンビの侵入を防いでいるようだ。


 小手先の誤魔化しはいらないか。


 俺はそのまま橋の入り口に立ち、両手をあげてバリケードに向かって走る。その途中でバリケードの方から声がかけられた。


「引き返してください! これ以上の市民の受け入れは出来ない!」


 いきなり入って来るなと言われた。だがここで引き下がっては情報を取る事ができない。俺はそのまま手を挙げながら進んでいく。


「ゾンビ感染の疑いのある人間は受け入れられない、引き返しなさい!」


 薄情なもんだ。もし生きている人間で、ゾンビ因子に犯されていなかったらどうするつもりだ? とりあえず俺は無視して、手を上げて進んでいく。


「引き返せ! これ以上近づけば撃つぞ!」


 語気が変わったので仕方なく俺はそこに止まり、手を挙げながらも相手の様子をじっと伺った。


「そうだ。そのまま、回れ右して戻れ! 生き残った市民を危険にさらすわけにはいかないんだ! どうか分かってほしい!」


 じゃあ仕方がない。


「金剛、防御結界、筋力強化、敏捷性強化、思考加速」


 俺はそのまま自分に、次々バフをかけていく。後衛など居なくても、このくらいは自分で出来るのだ。そして俺はまた進み始める。


「聞こえなかったのか! 止まれ! 警告だ! 撃つぞ!」


 聞こえてはいるが聞かない。


 すると相手は銃を構えて、俺に狙いをつけた。


「警告だ! 3、2、1」


 タタタタタタタタタ!


 と乾いた音が鳴り俺の足元で火花が散る。どうやら俺を直接撃たずに、足元を狙って警告しているらしい。という事はファーマ―社では無い、アイツらなら問答無用だ。


 次の瞬間、俺は縮地を使ってバリケードの真下に来ていた。先ほどの警告の声がスピーカー越しに焦っている。


「な! どこに消えた!」


「幽霊でも見たんじゃないか?」


「いや。確かにいたろ?」


 俺はすぐさま十メートルほどのバリケードを飛び越えて、反対側に降り立った。


「おい!」


 俺が兵士に声をかけると、全員が慌てて後ろを振り向く。


「な! 何処から入った!」


「俺は怪しい者じゃない、そして受け入れ希望もしていない。少し話が聞きたいだけだ」


 兵隊が慌てて俺に銃を向けようとするが、俺はすぐに縮地で消えマイクを握っている奴の隣りに出没し、日本刀を首元に向けた。


「だから聞け、殺すぞ」


「お、おわあああああ!」


 ドサリと尻餅をついて、周りの奴らも一歩後ろに下がった。


「状況を聞いたらすぐに立ち去る。まあ返事次第では荒事にもなるかもしれんがな。そしてこんなところで撃つなよ、味方にあたって死人が出るぞ」


 すると尻餅をついていた奴が立ち上がって聞いてきた。


「何者だ! 今のはどうやった?」


 今のって言われても、縮地だと行ったところで理解できまい。


「そんな事よりも教えてくれ。あんたらは一体何者だ? 見たところ自衛隊のようだが」


「確かに、何人かは自衛官だ」


「ここで何をしている?」


「なにをって…それは市民を保護している」


「自衛隊は全員ゾンビになったんじゃないのか? なぜ生きている?」


 俺がそう言うと、突然自衛隊たちは殺気立ってきた。全員が身構えて、俺を取り囲むようにじりじりと距離を詰めてきた。クキがいうとおり、こいつらの動きはプロの動きだ。


 そして自衛隊の一人が言った。


「その金髪…アメリカ人か? ヨーロッパ系か?」


「どちらでもない」


「我々はある組織を警戒している。素直に答えなければ死ぬことになるぞ!」


 何を言っているんだ? という事はやはり…


「あんたら自衛隊だと思っていたが…、ファーマ―社の回し者か?」


 俺が軽く殺気を孕ませて言うと、男達は一斉に脂汗を垂らし始めた。だがその答えは俺の想像とは違った物だった。


「あんたがそうじゃないのか?」


「違う。俺はファーマ―社を見つけたらすぐに殺す事にしているからな。あんたらがそうだというなら、皆殺しにしてやるだけだ」


「なに? あんたは何か知っているのか?」


「別に。ファーマ―社は俺の仲間の敵で、見つけたら消すというだけの事」


「ち、違う。我々はファーマ―社じゃない!」


「本当か? なぜこんなところにいる?」


「ここはゾンビが入ってこない。ここともう一か所の入り口を閉鎖しているからな。ここにいるのはゾンビ感染していない可能性の高い人らだ。我々の部隊はたまたま全員がゾンビになっていないんだ」


「ファーマ―社の奴らもゾンビにはならんぞ。まあ一部は好んでなるような奴もいるがな」


「なんだと? なにか知っているのか?」


「ああ」


 すると俺と話している奴が、周りの男達に言った。


「銃を降ろせ! この人の話を聞く必要がある!」


「あんた、簡単に俺を信じていいのか?」


「武装した自衛隊の中に、平然と一人で現れて脅しをかけてくる奴だ。あんたがその気ならば、俺達の首は胴体から離れているんだろ?」


「そのとおりだ」


「それくらいは嗅覚で分かる。それよりもさっきの話を聞かせて欲しい」


「いいだろう、情報交換だ」


「わかった」


 自衛官が銃を降ろしたので俺も日本刀を鞘に納めた。そして分かった事は、こいつらは恐らくファーマー社ではない。何故ならば先ほどの言葉に嘘が無かったからだ。そして俺は自衛官に現状の日本の状況を伝え始めるのだった。

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