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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第五章 救世主編

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第278話 残る人々との別れ、そして新たな旅立ち

 タカシマとミシェルが開発したゾンビ破壊薬は、少量でもかなり広範囲に散布する事が出来るようだ箱根のあちこちを周り、ゾンビを集めては動きを止める事に成功している。ゾンビは真っ白になってあちこちに転がり、掃除さえすれば再び元の町が戻って来るだろう。


 薬の効果を見た、老人らがタカシマにお礼を言っていた。


「先生! なんと素晴らしいことじゃろ。元の町に戻るのもそう遠くはない」

「まあ、人がかなり居なくなってしもうたがのう」

「でも生きとるうちに、ゾンビの居ない箱根の風景を見る事が出来るなんて」


 喜ぶ老人にタカシマが言う。


「むしろ。自然が多い所だし、自給自足するならとてもいい場所だと思う」


「そうじゃな。わしゃ土いじりが好きじゃし」

「あたしも花は好きだね。タケさんもだったよね?」

「あたしゃタカね。貴子だから! でも本当にそんな事が出来たら幸せだねえ」


「出来るさ」


 タケルの言葉に老人達がニッコリと笑う。そしてクキが言った。


「あとは、どうやって薬品の大量生産にこぎつけるかだな」


 ユリナが少し考えて答えた。


「仙台に持っていきましょう。あそこならかなり生存者も居たし火力発電が動いているわ」


「友理奈の言うとおりだろうね。高島先生、一度京都の生徒達も連れて仙台に飛ぶ気は無いかな」


「まずは、生徒達に話してみるしかないだろうね」


「ではいったん京都に戻る事にしますか」


 クキが言った。


「問題は何で行くかだな。今のところは、ファーマ―社の船舶や航空機は確認できていない。だが飛べば、ファーマ社に感づかれる可能性はある」


「九鬼さん。それなら日本海側を飛んだらどう? 中国と朝鮮半島とロシアが見張る場所なら、ファーマ―社の船が入れるとは思えないわ」


「…なるほどな。友理奈の言う通りかもしれん。だがそれでも五分五分だ」


「今は時間が最優先だと思う」


「皆はどう思う?」


 そこで俺が答えた。


「万が一は、俺が全ての攻撃を防ぐ」


「決まりだな」


 そしてタケルが老人達にも聞く。


「なあ、爺さんらも一緒に行くかい?」


 すると老人達は少し沈黙した。そして老人達はお互いの目を見て言う。


「わしらは行かん」


「そうか? 箱根のゾンビはある程度消えたかもしれねえが、周辺から入ってこないとは限らないぜ」


 今度は婆さんが答えた。


「あたしゃ、箱根で生まれ育ったんだ。ここを離れる気はないよ」

「あたしもだね。ここに骨をうずめようと思う」

「わしも!」

「わたしも!」


 結局老人達は全員残る事になった。


「そうか…」


 それにタカシマが言った。


「今回作った薬品は全部置いて行くよ。ドローンでやればゾンビは止まる、お爺さん達もそれでどうかな?」


「ありがたや。ではありがたく使わせてもらうよ」


「ええ、そうしてください」


 タケルが寂しそうに言った。


「なら、爺さん婆さん。達者でな、絶対に死ぬんじゃねえぞ」


「なんだい兄ちゃん、わしらはまもなく迎えがくるよ」


「違うよ! 寿命で死ねって言ってんの!」


「それもまた酷いねえ」


 少しの沈黙の後で、皆に笑いが起きた。皆が老人達と握手を交わしてトラックに乗り込んでいく。タケルがトラックの後部から身を乗り出した。


「なあ! 年寄りなんだから、あんま無理すんなよ! ぼちぼちでやってくれ!」


「わかったよ。優しいあんちゃん」

「あんたみたいな若いのが、日本にいっぱい居たらいいのにねえ」

「本当だよ。うちの爺さんの若い頃にそっくりだ」

「タケさんの爺さんは、小太りじゃったろ!」

「あたしゃ貴子ね! 小太りは余計じゃ!」

「ともかくあんたら若いのは日本の宝じゃ! 生きろ!」


 それを聞いてタケルが親指を立ててニッコリ笑う。そしてクキがトラックを出した。


「元気でな!」


「あんたらもな!」


 俺達のトラックは一路、富士演習場に向かう。無事に富士演習場に到着し、特に変わった様子もなくゾンビの気配はほとんど感じられなかった。皆がすぐにチヌークヘリに乗り込み、一気に空中に浮かび上がった。


「今のところ、敵の機影はないようだ」


「なら出発しよう」


 チヌークヘリは、いったん西へと向けて飛ぶのだった。それから一時間もしないうちに日本海側に抜ける。


 アオイが言う。


「日本海?」


「そうね。今のところ敵の攻撃が無いという事は、こちら側はやはりファーマ―社がいないんじゃないかしら?」


「今のところはな」


「急ぎましょう」


 それから、一時間ほどで俺達は京都へと来ていた。俺達のチヌークヘリが京都の天文台に到着するころには、太陽がほぼ沈みかけており、あたりが薄暗くなっている。


 そこで操縦席から先を見たクキが言った。


「無事だな。灯りが点いている」


「よかった」


 タカシマがホッと胸をなでおろした。俺達が天文台近くにチヌークヘリを降ろし、天文台の隠れ家に行くと生徒達が全員で出迎えてくれた。


「先生! お帰りなさい!」

「無事でよかった!」

「成果はありましたか?」


「もちろんだとも。そして皆に話があるんだ。全員天文台に集まってくれるかい?」


「分かりました」


 皆が集まり、タカシマが薬品の完成と量産が可能である事を伝える。それを聞いた生徒達はタカシマを尊敬の眼差しで見つめていた。そこでタカシマが言う。


「それでね。皆の意思を確認したいんだが、東北の仙台に稼働している火力発電所があるらしいんだ。そこに行って本格的に薬品工場を稼働させようと思うんだが、移住するつもりで行かねばならん。皆はどうするね?」


「行きます」

「わたしも」

「救いたい」

「連れて行ってください」


 説得の必要も無かった。皆はタカシマを尊敬しており、彼について行けるならと喜んでいる。


「今日は皆、休みなさい。そして明日は朝から畑の刈り入れをしよう、明後日には出るから皆もそのつもりで準備をしてくれたまえ」


「「「「「「はい!」」」」」」


 そしてユリナが小牧基地で助けた女達に聞く。


「と言う事なの。仙台には生存者もたくさんいるし、みんなも一緒に行きましょう」


「わかりました」


 皆が納得し、それぞれが出立の準備を始めるのだった。

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