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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第五章 救世主編

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第275話 箱根温泉の生存者

 演習場でクキが見つけた自衛隊三トン半トラックに乗り込み、俺達は夜道を走っていた。小田原迄は約一時間ほどで到着するが、現在は箱根山中をひた走っている。そのトラックの幌がかけられた後部の荷台に座り、俺達は話をしていた。


「箱根は何度か来た事があるわ」


「私も」


 マナとツバサが言う。このあたりはどうやら観光地らしく、市民が旅行などに来る場所らしい。これから行く小田原市は俺達が静岡に行く道すがら、既にセーフティーゾーンとして救出した場所だが、箱根の町には太陽光発電が見つけられずに素通りしたのだった。


「このあたりの生存者も小田原に逃げていてくれるといいのだがな」


「きっと逃げてるよヒカル。もしくはこのあたりで細々と生き残っているかもだけど」


 そして俺達が走っていくと、街道沿いの建物の上階がちかちかと点滅していた。クキがトラックを停めて俺に聞いて来る。


「ヒカル。あれ、どうするよ?」


「素通りも出来まい。クキと皆はそのままトラックで待機してくれ。俺とタケルで見て来るが、万が一はトラックを進めて良い。必ず合流するから先に行ってくれ」


「だそうだ。皆はそれでいいか?」


 それにミオが答える。


「いいわ。こんなところで攻撃されたらどうしようもないしね」


「よし。ヒカル! なにかあったら合図をくれ!」


「ああ分かったクキ。それじゃあタケル、行くぞ」


「あいよ」


 そして俺はタケルと共にトラックを降りて、光の点滅する建物に向けて走っていく。ゾンビがウロウロしているが、それを全部切り捨てて建物に向かった。その建物の入り口を見て、タケルが俺に言う。


「ここは老人ホームだぜ」


「老人ホーム?」


「年寄りが金を払って面倒を見てもらう施設だよ」


「なるほど」


 俺は入り口に群がっているゾンビを切り捨て、光っているベランダを見上げた。


「あれだ」


 そこでは何人かの人がベランダに出て、懐中電灯をちかちかさせている。


「生き残りだな」


「行くぞ」


「ははっ」


 タケルの乾いた笑いを聞き終わる前に、タケルを掴んで四階のベランダに飛んだ。突然現れた俺達に、そこにいた生存者達が固まる。


「ひぃぃぃぃぃ!」

「でたぁぁぁぁ!」

「ぞんびじゃあああ!」


 そいつらはホウキや棒を持って、俺達に向かって来る。そこでタケルが大声で叫んだ。


「バカ! 助けに来たんだよ! やめろ!」


 それを聞かずに、必死にホウキでバシバシと叩かれた。俺はホウキを掴んで言う。


「本当だ。助けに来たんだ。あの車は俺達のだ」


 すると一番必死に叩いていた爺さんが言う。


「へっ? なんで突然現れたんじゃい?」


「早く助けてもらいたいかと思ってな」


「あんたらが?」


「そうだ」


 ようやく叩くのを止めた。ここに居るのは老人ばかりで、どうやらホームの住人らしい。


 タケルが言う。


「その懐中電灯を貸してくれ」


 タケルが懐中電灯を借りて、クキが運転するトラックに向けくるくる回した。するとトラックのライトがちかちかと返してくる。そしてタケルが言った。


「爺さんら、ひとまずここから出た方が良いな」


「そ、そんな事言うても、この建物内はぞんびだらけじゃぞ」


「俺達がぶっ飛ばしてやるよ」


 すると爺さんらが話し合い、納得してくれたようだ。


「ならやってもらう。わしらは年寄りばかりだからの、どうしようも無いのじゃ」


 そして俺達はベランダから部屋に入った。するとそこには数人の老人が待っていて、俺達を見てあっけに取られている。そしてタケルが言った。


「あー、俺たちゃ正義の味方だから心配すんな。ここを脱出すっぞ」


 そう言うと一人の老婆が答える。


「あたしゃ足が不自由だ。こっちのタケさんもね」


「やだねえ、あたしゃ貴子だよ。タケじゃないってば」


「あら、そうだったねえ」


 すると奥の婆さんがタケルを見て言った。


「あらまあ! 良い男だこと!」


「ん? おれ? コイツじゃなくて?」


「金髪はちゃらちゃらしてイカン! やはり日本男児たる者、髪の色は黒じゃないと」


「あー、ばあさん。コイツは日本人じゃねえし」


「あら、すまないねえ。外国のお方かい?」


「まあそんなところだ」


「やすちゃんは若い男と見たらすぐに色めきだつ」


「あら、タカさん。しわくちゃのジジイよりずっといいだろ?」


 なんだかこんなところに閉じ込められているにしては、皆元気がいい。まったく悲壮感が無いのが救いだ。


 そして最初に俺をホウキでバシバシと叩いていた老人が、俺達に携帯を出して見せてきた。


「これを見ておくれ。なんと小田原に生存者がいるらしいのじゃ」


 もちろんそれは、オオモリがセットした動画だから知っている。


「それをみて逃げようとは思わなかったのか?」


「無理じゃよ! こんな老人だけで、どうやって逃げおおせるというのじゃ? わしらは貯蔵されている食料を細々と食いつないで生きて来たんじゃ」


 確かにそう言われると、皆が痩せこけており栄養が足りていないことが分かる。そしてその言葉に老婆がつけ足して言う。


「それにあたしらの何人かは足が悪い。車いすを引いて行くのは無理じゃし、おいて行けと言ってもこの人達が強情での。それで、ここにとどまったと言う訳じゃ」


「じゃが、住んでいる人たちが次々にぞんびに変わってしもうて、抜けられんようになってもうた。そこに車のライトが近づいて来たので、合図を送ったという次第じゃ」


 タケルがうんうんと頷いて言う。


「よく生き延びたなあ。爺さんらはついてる。勇気を出して合図して良かったな」


「助けてくれるのかい?」


「あたりめえだろ!」


 そして俺は足の不自由な老婆に近寄り、膝と腰のあたりに手を当てる。すぐに不具合が出ているところを確認し、筋力を戻し骨と骨があたらないようにした。


「なんだろ? 電気をかけているみたいに温かいねえ」


「もう大丈夫だぞ。歩いてもいい」


「へ?」


「立ってみろ」


「そんな、随分車いす生活をしてきたんだよ。無理にきまってるさね」


 俺がグイっと老婆の腕を持ち立たせる。そしてぱっと手を放した。


「あれ? なんじゃぁ? こりゃあ。あたしゃ立ってるよ!」


「何をしたんだい?」


 そして俺は次々に座ってる老人に回復魔法をかけていく。すると老人達が一様に驚いており、動くようになった体を喜んでいた。


「行くぞ!」


 すると爺さんが俺に言う。


「まって! ドアを開けるとぞんびが来るよ!」


「問題ない」


 俺はタオルで縛っているドアの取っ手を掴み、日本刀でタオルを斬った。カラカラと扉を開くと、廊下にポツリポツリと腰の曲がったゾンビがいる。ここではどうやらゾンビすらも老人らしい。


「飛空円斬」


 俺はゾンビ達を斬り落とし、老人たちに言う。


「出て来い」


 タケルに連れられて恐る恐る出て来る。倒れたゾンビを見て目を丸くした。


「死んどるぞ!」

「ほんとじゃ!」

「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏」


 全員が拝み始めた。


「急げ」


 俺が先を進み老人達がついて来る。階段を降りると次の階にもゾンビがいて全てを斬り捨てた。最後の一階に至るまで老人ゾンビがいたが、そのことごとくを斬り捨てて玄関に行きつく。すると玄関の前には、ミナミとミオが待ち構えていた。俺が玄関の鍵を開けると、外からミナミ達が開ける。


「生存者?」


「そうだ」


「よかった!」


 すると老人達が出て来て、爺さんがミオとミナミを見て言った。


「なんじゃ? 女優さんかい?」


「ち、ちがいます!」

「そ、そう見えます?」


「えらい別嬪さんじゃのお」


 するとタケルが言った。


「ほれ! あとでいくらでも見れる! 今は早くトラックに!」


「ああ、そうじゃった」


 そして俺達のトラックに老人達を乗せ、トラックは老人ホームを出発する。その車内で、俺は急いでゾンビ因子除去魔法を発動させた。トラックの荷台が一瞬光り、次の瞬間爺さん婆さんは白粉を塗ったようになった。


「おや? いつの間にお化粧したんじゃ?」


「タケさんも」


「あたしゃ貴子! タカコ!」


 どうやら生存者が居たとしても、身動きが取れない人もいるらしい。恐らくは今までの地域でも、そう言う人はいたのだろう。全てを救えていないのは承知しているが、俺はまた一つの課題に直面するのだった。

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