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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第五章 救世主編

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第273話 自衛隊 富士演習場

 俺がミシェルを抱いてチヌークヘリに飛び込んだ後、すぐに山岳地帯へと飛び去る。ミシェルがガチガチと歯を鳴らして震えているので、ユリナが毛布を持って来て包み込んでやった。


「大丈夫よ、もう大丈夫」


「もうダメだと思った…」


 ユリナが抱きしめミシェルを落ち着かせようとする。するとヤマザキが俺に聞いて来た。


「何があった?」


「静岡は壊滅していた。どうやらまた奴らが何かをしたらしい」


「ファーマ―社が来たのか?」


「恐らくな。静岡の拠点は試験体に汚染されていた」


 俺達が話しているところに、よろよろとタカシマがやってきた。


「あ、あの。こんな時にすまん。静岡の拠点には、宮田君が居たはずだが」


「すまんタカシマ。あの状況では確認出来なかった」


「そんな…」


 タカシマが肩を落とし、へなへなと床にへたり込む。ミオがやってきてタカシマの肩を抱いた。


「先生。とにかく座りましょう」


 フラフラと立ち上がって、椅子に座るが俯いて顔を覆ってしまう。ミオが隣に座りタカシマの側に寄り添った。すると操縦席のクキが無線機で俺を呼ぶ。


「ヒカル、来てくれ」


 俺が操縦席に行く。


「どうした?」


「ファーマ―社が来てるってんなら、飛行は危険だ。どこかにヘリを降ろす必要がある」


「わかった。どうすればいい」


「ここからなら豊橋が近いが、話からすると海沿いはやめた方が良い。ひとまず富士の演習場に行って見よう、あそこに行けばヘリの補給も出来るはずだ。そこに行っても着陸できるとは限らんがな」


「その時は俺が何とかする。とにかくやってくれ」


「了解」


 俺達のチヌークヘリは富士山を西側から迂回していく。だが周辺を航空機が飛ぶ事も無く、攻撃を受ける事は無かった。富士演習場を上空から見下ろすと、ゾンビはいるようだが試験体は確認できない。


「ミナミ! 日本刀を五本ダメにした。新しいのをくれ」


「わかった」


 そして俺は日本刀を二本、背中のホルダーに刺しこんでクキに言う。


「後部ハッチを開けろ」


 後部ハッチが開き始めたので、俺はそのまま地上に降下し、演習場内に居るゾンビを片っ端から剣技で切り裂いていく。倒れたゾンビが復活しないのを確認した俺は、チヌークヘリに向かって手を回す。チヌークヘリはゆっくりと着陸し、後部ハッチから皆が出てくるのだった。皆が俺のもとに集まって周囲を見渡した。


「ここが演習場か」


「そのようだな」


 ミナミが日本刀を握りながら聞いて来る。


「ヒカル! 敵はいそう?」


「いや。人間の反応は無く、おかしな奴もいない。今のところは大丈夫だ」


 そこにクキが来る。


「ここなら給油も出来るがな。どうする? 飛ぶのは危険が伴うぞ?」


「ひとまず様子を見る必要があるな」


「兵舎もあるから、補給をしたらひとまずそこに身を隠そう」


「わかった」


 それからクキの指示に基づいて、ヘリの給油を終わらせた俺達は兵舎に入る。兵舎にもゾンビはいたが、普通のゾンビなので俺じゃなくても容易に駆除する事が出来た。そこに肩を支えられたミシェルと、タカシマがやってきてベッドに寝かせられる。


 落ち着いたところで俺は皆に言った。


「静岡には新型の試験体がいた。恐らくは魚のような機能を持たせた奴だ」


「ミシェルの言うとおり、海から来たってのは本当のようだな」


「間違いない。さらにゾンビ因子は進化していて、かなり厄介な存在になっていた。神器さえあればどうという事は無いが、流石に日本刀だけですべてを防ぐのは現状難しいかもしれん」


「それほどか」


「ああ。恐らくは俺のゾンビ因子除去のスキルを上げていかないとダメだろう」


 それを聞いた皆が深刻な顔をする。ここまでは自分達でもゾンビを狩れていたが、超回復する試験体が相手となると無理だからだ。


 マナが言った。


「ファーマ―社はどうやって新型ゾンビを運んで来たのかな?」


 それにクキが答える。


「航空機が見当たらないからな。やはり海の中と考えるのが妥当か?」


 ミナミが呟いた。


「潜水艦」


「そうだ。周辺の国家にも気が付かれないように近づくとなれば、恐らく潜水艦の可能性が高いだろう」


 それを聞いていた俺が、戦った相手の事を話す。


「それ以外に知恵のあるゾンビの開発を成功させていた。人間だった者が、その思考を持ったままバケモノに変わったんだ。生存者に紛れて潜入し、ミヤタやミシェルの研究を盗もうとしていたらしい」


「なんだって?」

「本当?」

「知恵のあるゾンビが出来ていた!?」

「マジですか…」


 それぞれが目を丸く見開き、驚愕の表情を浮かべて聞いて来る。


「ああ。間違いない。人間のまま斬ったが変貌し、普通に会話しやがった」


「なんてこった…」


 するとクキが言う。


「そいつらを運んで来たのは、日本に生存者が居るのを知っている奴らか?」


 それにマナが答える。


「でしょうね。以前私達が、米国とのインターネット通信を試みたことがあるの。あちらで遮断されたようだけど、恐らく米国の誰かは私達のような人間がいる事を知っているわ」


「そういうことか」


 そして俺達が話しているところに、ふらつきながらミシェルとタカシマがやってきた。ユリナとミオに支えられながら歩いて来る。


 それを見たユミが言った。


「まだ休んでいた方が…」


 するとミシェルが首を振る。


「こんな状況で私だけ休んでられないわ。一番情報を知っているのは私だしね」


 そう言ってポケットからメディアを取り出す。それを見たオオモリが言った。


「データを持って来たのですか?」


「脱出を想定していたから。でもまさか生存者の中に、敵が紛れているとは思わなかったわ」


「情報を盗まれた?」


 ミシェルが首を振って言う。


「試験体が来た段階で、ファーマ―社の影には感づいたわ。だからデータは全て消去して来た」


「ミシェルさんは凄いですね。命がけの場面でそんな」


「これは、ミスター宮田が命がけで作った物よ。易々と渡すわけにはいかない」


 そこで隣にいたタカシマが憔悴しきった顔で言った。


「そうか。あなたは宮田君の研究を守ってくれたのか」


「はい。ドクター高島。私は以前、ミスター宮田に命を救われたのです。彼の研究は彼の意思なのです。絶対に守らねばならないのです」


「そうか…ありがとう」


「いいえ。礼を言われる事は何も」


 タカシマが座り込み、ぽたぽたと涙を落とした。ミオが優しくタカシマの肩を支える。


「先生。とにかくお休みしましょう」


「いや、私も休んでなど居られないな」


 俺達が話をしているところに、オオモリがノートパソコンを持って来た。


「ならば、お互いの研究結果を検証したほうがいいでしょう。専門家同士気づきがあるかもしれない」


 そして皆がパソコンの周辺に集まり、ミシェルとタカシマを囲むのだった。


 そこで俺が言う。


「タケル、ミナミ、ミオ、クキ、は周囲の警戒をしてくれるか?」


 四人が頷き、兵舎の外に出て警備体制を整える。今はタカシマとミシェルの頭脳にかかっているのだ。これからの行動指針を決める為にも、情報を精査して貰わねばならなかった。ファーマ―社が静岡に来たという事は、他の拠点にも危機が迫っているという事だ。


 そして俺は四人に告げる。


「俺は新型の試験体に対応する技を生み出す。どうやらここは訓練には適した場所らしいからな」


「わかった。兵舎は俺達に任せろ。ヒカルはヒカルの出来る事をやってくれ」


 タケルが拳を差し出して来たので、俺も拳を出して合わせる。


「任せておけ」


 そして俺は自衛隊富士演習場に向かって走り出すのだった。

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