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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第五章 救世主編

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第272話 知的ゾンビ

 俺の前にいる三人は、俺を見ながらじっと何かを伺っている。相手は人間なのだから、勝負は一瞬のはずだが何か不気味な雰囲気を漂わせていた。とにかく生き残ったミシェルだけでも連れ出さねばならない、そう思った俺はミシェルに聞く。


「やむを得ない。殺そう」


 ミシェルは青くなりながらもコクコクの頷いた。すると目の前の男が笑い始める。


「殺して見ろよ。その日本刀でやるつもりか!」


 ミシェルを庇いながらも、俺はそいつを袈裟切りに斬りつけた。すると肩から腰にかけて、体がずれごとりと上半身が落ちる。だが俺が返り血を浴びているのを見ても、残りの二人の女は顔色一つ変えなかった。それどころか不敵な笑みを浮かべている。


「くくくくくく」

「ふふふふふふ」


 次の瞬間、床に落ちたはずの男がボコボコと膨れ上がり始める。あっという間に、二メートル以上の試験体に変貌を遂げた。それを見た残りの二人も、突如体を変形させて試験体に変わる。


「ふはははは! 残念だったな」

「そうね。私達を殺そうだなんて笑っちゃうわ」

「ホントホント! あはははは」


 ゾンビに変わったと言うのに、普通に会話を続けている。それを見たミシェルがポツリと言った。


「ファーマ―社は知的ゾンビの開発に成功してたんだわ」


 そう言ったミシェルに女の試験体が飛びかかって来たので、俺は日本刀で斬り落とした。ドサリと床に落ちるもすぐに復活し始める。


「いくらやっても無駄! あんたら人間とは作りが違うのよ!」


 ここでヘルフレイムフラッシュを使いたいところだが、この狭い部屋ではミシェルを巻き込んでしまうだろう。俺はミシェルを入り口の方に押しながら、じりじりと下がっていく。そしてミシェルに言った。


「どけ」


 ミシェルがどいたので、俺は思いっきり分厚いドアを蹴り破る。重いドアは爆発的に吹き飛び、外に集まりかけていたゾンビ達を吹き飛ばして、廊下の向こう側へと追いやってしまった。すると三体の知的ゾンビが騒ぎ出す。


「な、なんだぁ?」

「そのちからは一体…」

「バケモノ!」


 そして俺がそいつらに言う。


「おいおい。バケモノからバケモノ呼ばわりされる筋合いはない」


 目を見開いた試験体たちは、突如俺に突進してくる。


「しねえええ!」

「殺さなくちゃ!」

「コイツは何かおかしい!」

 

 だが俺は、ミシェルの胴体を片腕で掴み、近くの階段を上に向かって走り始める。


「まてぇえ!」

「逃がすか!」

「この!」


 三体の知的ゾンビに追われながらも、俺は一気に上階に駆けのぼっていく。すると俺の腕に抱かれたミシェルが言う。


「屋上から外に出られるわ!」


「分かった!」


 更にスピードを上げて階段を上っていくと、知的ゾンビ達がついてこなくなった。恐らくは俺の速度の方が上回っているのだろう。


「次が最上階の十一階よ! その上に屋上があるわ! ドクターヘリが着陸する発着所よ!」


「よし」


 だが十一階に到着した時だった。突如窓ガラスを破って三体の知的ゾンビが進入してくる。どうやら外壁を最短ルートで登ってきたようだ。


「逃がすかぁ!」

「しねぇ!」

「殺せぇ!」


 あっという間に迫って来たので、俺は剣技を繰り出した。


「乱波斬!」


 三体をサイコロ状に切り刻み、すぐさま屋上へと向かう。屋上に到達し、ぐるりと上空を見渡すがチヌークヘリは見えなかった。下を見下ろせばここは自然に囲まれており、俺は降下して森を進む方法も考えた。


 ガシャーン! と音がしたと思ったら、ビルの端から知的ゾンビが飛び出て来る。今までの試験体とは比較にならないほどの回復力に俺は舌を巻いた。


「逃げられないぞ!」

「ここで死ぬのよ!」

「自ら退路を断つなんてね!」


 日本刀は残り三本。ミシェルを床に降ろして俺は知的ゾンビに向かう。一体がバッと飛びかかって来たので、俺は速攻で魔力を滾らせた。


「ヘルフレイムスラッシュ!」


「ぎゃあああああああああ」


 ゴオと黒い炎がそいつに向かい包み込んで焼き尽くした。他の二体、男と女の知的ゾンビは咄嗟の判断で俺に飛びつくのを止めた。


「な、なんだ! いったい何をした!」

「こんなの、聞いてない!」


 俺はボロボロになった日本刀を捨てて、背中からもう一本の日本刀を抜き取る。そしてそいつらが飛びかかってくるタイミングを見計らった。


「挟み撃ちだ!」

「ええ!」


 そいつらは俺を中心に左右に分かれていく。俺はミシェルに言った。


「俺から少しも離れるな!」


「はい!」


 普通のゾンビはこんな頭を使ってこないが、こいつらは訓練された動きをしている。それだけ普通の試験体と比べても厄介だった。そして、その時は来た。そいつらは合図をするでもなく、突然同時に飛びかかって来たのだ。


「ヘルフレイムスラッシュ!」


 俺は一方の、男の知的ゾンビをヘルフレイムスラッシュで焼いた。


「ぐああああああ!」


 だが反対側のゾンビが上空から飛びかかりながら言う。


「これで終わりよ!」


 バカめ。


 俺はミシェルを抱きしめて、上空に四十メートルほど飛び上がる。女のゾンビは俺を見失い俺がいた場所にズン! と手刀を突き刺した。コンクリートの床にズボりと腕を突っ込んで、身動きが取れなくなったところに俺は最後の一本で魔剣を繰り出す。


「ヘルフレイムスラッシュ!」


「馬鹿な! ぐああああああああ!」


 それはビチビチとのたうち回りながら、漆黒の炎に包まれて燃え尽きていった。するとそこにヘリコプターの音が聞こえて来る。上空にはクキの操縦するチヌークが到着し、ハッチからタケルが俺達を見下ろしていた。


「ヒカル! 遠くからヘルフレイムスラッシュが見えたからよ!」


「ちょうどいいところに来た! だがすぐに離脱した方が良い!」


 俺はミシェルを抱いたまま、上空のチヌークヘリのハッチへと飛び込むのだった。

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― 新着の感想 ―
現代社会から派生したポストアポカリプスモノに異世界勇者突っ込んだ作品から大分かけ離れてきたなあ… 敵ゾンビが明らかにファンタジーに全身ドップリ浸かってきだしてて反応に困る
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