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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第五章 救世主編

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第269話 ゾンビ破壊薬 オメガ

 タカシマが研究していた詳細を聞いた俺達は、救出活動を急ぐより彼を支援する事が重要と考えた。恐らくそれが日本を救う一番の方法で、かつタカシマの研究がほぼ最終段階に入っていたのも大きい。


 ひたすら物資を運び、必要とあればゾンビすらも捕まえてきた。天文台の設備で足りなければ、チヌークヘリを使って機材を運び込む。そしてここには専門家とその弟子達が集まっており、研究は急ピッチで進める事が出来た。更に周辺の防護壁を堅牢にすることで、天文台は要塞のようになりつつある。


 また小牧基地で救出して来た女達からの、何かの役に立ちたいという要望を聞き入れ、チヌークヘリで運べるプレハブの建物を運びこみ、捕まえてきた野生のニワトリを集めて飼い始めた。またビニールハウスとやらの温室も組み立て、そこで農作物の栽培も始める。更にはニワトリや野菜の品種改良という事もやっていくらしく、ここに農学部とやらの生徒が居たのが大きかった。


 更には工学部建築学科とやらの生徒もいて、水を溜める貯水槽を作り出した。それによって雨水を貯える事が出来、ろ過した綺麗な水の安定供給が可能になるらしい。さらに俺達が京都中から集めてきた、ペットボトル飲料水や保存食などの保管庫も建築し、気温で劣化しないように工夫された作りになっているらしい。


それらを見たタカシマが言う。


「まだ何年も戦える。ヒカル君らが来てくれたおかげで、我々の研究は更に進んだよ」


「俺達はあんたに賭けた。そしてそれはもうすぐ完成するのだろう?」


「ああ、もうすぐだよ。私もヒカル君にゾンビ因子除去をやってもらってから、やたらと頭が冴えるんだ。これが君らの言う、身体の変化という奴なのだろう?」


「そうだ。オオモリも言っていたが、何年もかかりそうだった研究が数日で閃くようになったと言っている。それは仙台の研究者も、富士山にいたミヤタ達も同じことを言っていた。これまで培ってきた経験に拍車がかかり、脳内の効率が数十倍にあがったのだと思う」


「こんな老いぼれになってから、新しい発想がバンバン沸く事になるとは思わなんだ。とにかくヒカル君には感謝してもしきれんよ」


「大した事はしていない」


「いや。天地がひっくり返るほどの凄い事さ」


 さらにタカシマは確実に若返っている。白髪と白髭に薄っすらと、黒い毛が混ざってきているのだ。時おり徹夜もしているようで、それでも体にガタが来ないと言っている。


 そこにサイトウがやってきた。


「高島先生! 薬剤の反応がありました! 早く来てください!」


「おお、そうか!」


 俺達はサイトウに連れられ、バリケードを越えて離れのプレハブに向かう。そこには牢屋が作られており、そこに三体のゾンビが繋がれていた。檻の前には研究機材が置いてあり、数人の学生が研究をしているところだ。


「先生を連れて来たよ」


「あ! 高島教授! これを見てください!」


 よく見ると立ち上がっているゾンビは三体だが、一体が床に横たわっていた。俺が気配感知できない事からも、そのゾンビは完全に活動停止している。


「薬剤ナンバー、オメガ3.2です」


「よし!」


 そう言ってタカシマが、生徒に差し出された電子顕微鏡をのぞいた。それを見て口角がにんまりと上がって来る。


「とうとうきたか」


 そして俺がタカシマに聞いた。


「なにがどうなった?」


「見てくれ」


 俺はタカシマに進められるままに電子顕微鏡を覗き込む。


「まずはゾンビの遺伝子を入れる」


「ああ」


 俺が見ている先にゾンビ遺伝子が入り込んできた。


「そこにオメガ3.2を投入する」


 すると俺が見ている先で、あっという間にゾンビ遺伝子が活動を停止した。それも、ただの人間の死んだ細胞のようになって止まったのだ。ゾンビを完全に封じ込めたという事になる。


「死んだ」


「そうだ。ようやくヒカル君の血液と同等の効果を持つ、薬剤の開発に成功したんだよ」


「それで、どうなるんだ?」


「もちろん動物実験をして、人体に被害が出ないかを確認する必要はあるがね。経皮吸収型製剤として開発すれば凄い事が起きるよ」


「難しいな」


「端的に言って見れば、水鉄砲にオメガ3.2を経皮吸収型製剤として入れれば、銃よりゾンビに効く水鉄砲の完成だよ。まあもちろん、試作の段階で大量生産が出来ないのが難点だけどね」


 それを聞いていたクキが言った。


「それは凄いどころの話じゃないな。人体や生物に被害が無いと分かれば、空中散布もあり得る話だろ」


「物分かりがいいね。流石は元自衛官だ」


 それを聞いた俺が言う。


「生物に対する被害の調査と、大量生産をするにはどうしたらいい?」


「うーん。ここからは遺伝子工学の宮田君の力を借りたいね。彼はまだ生きていたんだろう?」


「静岡に居るはずだ」


「なら、私をそこに連れて行ってはもらえないか」


「わかった」


「大量生産まではクリアしなければならない工程が山ほどあるし、そもそも大規模な薬品工場を稼働させねばならん。まだ問題は山積しているよ」


「必ず実現させるさ」


 それから天文台に戻り、タカシマが皆に薬品の完成を告げると歓声が起きた。ここに居る人達の悲願でもあるその薬の完成に、皆が肩を抱き合って涙している。


 そしてタカシマが言う。


「えーと、それで皆にお願いがある!」


「なんでしょう?」


 学生の女が尋ねた。


「私は彼らと共に静岡に飛ぶ。私が留守の間は、危険なゾンビを使った実験は中止とし、捕らえたゾンビは機能を停止させ廃棄処分とする。そしてゾンビ研究の手の空いたものは、野菜の品種改良やニワトリの品種改良に手を貸してほしい」


「「「「「「はい!」」」」」」」


「いい子達だ…。斎藤君に任せて行きたいんだが問題はないかね?」


「ええ、もちろんです。ですがくれぐれも気を付けてください」


「君達もね、この場所もだいぶ安全になったとはいえ、ゾンビが居なくなったわけではないからね」


「心得ております。それに合流してくださった女性達が、食事の世話などもしてくださいますので、前より環境がだいぶ良くなりました」


「そうだね。まあ身重の人もいるから、注意して看てやってくれたまえ」


「私も医者の端くれですから」


「君は十分優秀な医者だよ」


 それからゾンビを処分し、俺達は荷づくりをして天文台を出発するのだった。

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