表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第五章 救世主編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

269/661

第268話 高島教授の人柄

 チヌークヘリに乗り込むと、タカシマがクキに言った。


「大学のグラウンドがある。そこならヘリを降ろせるはずだ」


「了解」


 ミオが広げた地図で位置を確認し、クキがヘリを飛ばした。日も高くのぼり地上からもチヌークヘリが視認できる為、飛翔音につられてゾンビが集まって来るだろう。飛んですぐにタカシマが言った。


「あのグラウンドだ」


 クキがグラウンド上空に行くと、その辺りにはゾンビがうろついている。グラウンドの門も開いており、次々に入り込んできていた。それを見たタカシマが言う。


「うわっ! ゾンビがたくさんいるようだよ。違う場所を探すかい?」


 するとタケルがタカシマに言う。


「必要ないよ」


「それはどういう…」


 その言葉を聞き終わる前に、俺はハッチをひらいて飛び降りた。


「おい! ヒカルく…」


 タカシマの叫び声を後に、俺は五十メートル下のグラウンド中心に着地した。砂ぼこりがまう中を、ゾンビ達が俺に向かって集まって来る。やはりチヌークヘリの爆音に釣られて、集まって来ているのだ。それならばギリギリまで引き寄せた方が良いだろう。ゾンビは効果的に密集してくれつつあり、俺は腰だめに日本刀をかまえた。


 よし。


「飛空円斬!」


 びっしり集まって来たゾンビが、俺を中心に連鎖式に円状に倒れていった。俺はそのまま門まで行き、ゾンビの死骸を蹴散らし門を閉めてチヌークヘリに手を振った。チヌークヘリがゆっくりとグラウンドの中央に着陸すると、後部のハッチが開いて皆が降りてきた。最後にタカシマとサイトウが恐る恐る降りてくる。


 チヌークヘリのローターがとまり、後部ハッチが閉まるとクキが銃を持って出てきた。


「ヒカルの剣は、いつ見てもストレス発散になるな」


 それを聞いたタケルも大きく頷いた。


「だよな」


 タカシマが唖然とした表情で言う。


「いったい何が起きた? 知らんうちにゾンビが倒れていったようだが」


 サイトウが首を横に振りながら言う。


「いや先生! それよりも彼は五十メートル近い高さから、パラシュートも無しに降下しましたよ!」


「た、確かに! ヒカル君は大丈夫なのかね!」


 二人が心配して俺を見るので、俺は体を開いて見せる。


「このとおりだ」


「は、はは…」

「そんな馬鹿な」


「さあ、ゆったりしている時間は無い。ラボとやらに案内してくれ」


「あ、ああ! わかった! 行こう!」


 二人が指さす方向に、俺が先行しタケルとミナミとクキが周囲を護衛するように固めた。再び門にゾンビが集まりつつあったので、俺は一直線に走り門の向こうに跳ぶ。ゾンビ達は上を飛ぶ俺を眺め、落ちた場所に向かって突進してきた。


「飛空円斬」


 周囲にいたゾンビもろとも切り捨てる。


「来い!」


 門から出て来て、タカシマが指さす方向に向かって進み始めた。大きな道路を挟んで道向かいの建物群がそれらしい。その敷地内にもゾンビはウロウロとしており、それを見たタカシマが目頭を押さえながら言う。


「生徒達だ…。可哀想に」


「すまんが彼らはもう手遅れだ」


「ゾンビに痛みがあるのか分からんが、願わくば一思いにやっておくれ」


「飛空円斬」


 俺は視界にとらえたゾンビを全て斬り落とす。そしてヤマザキが言った。


「行こう。すぐに集まって来る」


「あ、ああ。みんな…すまない。私が無力だったために」


 倒れたゾンビに謝りながらフラフラしているタカシマに、タケルが肩を貸して進み始めた。


「どこだ?」


「もっと奥だよ」


 進みながらもマナが言う。


「確かに沢山停めてある自転車が切ないわね…」


「仕方がない」


 そして一つの棟の前に到着すると、タカシマが指をさして言う。


「この五階だ。まずは私の部屋に行ってほしい、その後研究室に向かおう」


「わかった」


 ビルの入り口は半分だけ空いていて、中にもゾンビの気配はある。俺は皆にそれを伝えた。


「ゾンビがいる。手分けして処理して行こう」


「了解」

「わかった」

「皆も気を付けて」


 日光がさしてはいるが、館内は少し薄暗かった。そこを進んでいくと、俺達の気配につられてゾンビが動き出す。俺達がことごとく潰して行くのを見て、タカシマとサイトウは唖然としていた。ゾンビを倒しつつ階段を上り、ようやくタカシマの部屋にたどり着いた。


「内部にゾンビはいない」


 俺が言うと、タカシマが不思議そうに言う。


「なんで分かるんだい?」


「気配を察知している」


「透視みたいなものかい?」


「違う。文字通りゾンビの気配や人間の気配を感じているんだ」


「非常に興味深いな…」


 するとタケルが言った。


「ほれ! 先生! 考えている暇はないぜ」


「あ、ああ! わかった! そうだね!」


 タカシマが部屋に入り、棚やデスクからいろいろなものを取り出して机に置いて行く。しばらくそれを続けた後で、タカシマが俺達に告げる。


「これで全部だ」


「ならリュックに詰めよう」


 そして各人が背負っているリュックに荷物を詰め込む。


「次は研究室にむかうよ」


「そうしてくれ」


 再び館内を進み研究室にたどり着いたが、その中にはゾンビがいた。


「まて。ゾンビがいる」


「わ、わかった」


 扉を開くと、白衣を着たゾンビ達が居た。それを見たタカシマが叫んだ。


「木本君! 大重さん!」


 その声を聞くも、ゾンビ達は音にしか反応せずにこちらに向かって来る。俺は二体のゾンビの頭を飛ばした。


「なんということだ…救えなかった。申し訳ない」


 すると一緒に来たサイトウがタカシマに言った。


「仕方がないです先生。今は必要な事をやる時です」


「そうだね。仕方ないね」


 どうやらタカシマは物凄く優しい性格をしているようだ。人を救えなかった事にも罪悪感を持っていて責任感も強いらしい。ショックで震える体を押さえつけて、一生懸命に研究室を探し回っていた。


 俺が聞く。


「大丈夫かタカシマ?」


「ごめんなさいね。皆も大変だと言うのにね、どうしても震えてしまって」


「高齢なのだから、あまり無理せず皆に指示を出すと良い。自分が必死に動く必要は無い」


「ここまで連れて来てもらっただけでも感謝なのだよ」


「あんたはこの国の未来に必要な人間だ。体を壊さない事を優先するべきだ」


 タカシマが周りを見ると、俺の仲間達も大きく頷いた。一緒に来たサイトウが皆に言う。


「よくぞ言ってくれました。私達も言うのですが、高島先生は聞いてくれないのです」


「そ、それは、むしろ体を動かしていた方が気が楽だからさ」


「でも先生。彼らの言うように無理だけはなさらぬよう。恐らく今は血圧が上がっていると思います。とにかく指示をお出しになってください。お身体にさわります」


「わ、わかった。ならお願いしようかな」


 それからは俺達がいろいろと手に取って、タカシマに尋ねる事にした。いるいらないの判断をしてもらいつつ、集まった物を全てリュックサックに詰め込んだ。すると少し落ち着いてきたタカシマが、そろりと立ち上がり棚のガラス戸を開けようとする。


「だめだ。鍵がかかっている。ガラスを割れば中の物が壊れてしまうだろうね」


「鍵は無いのか?」


「部屋にも無かった」


「わかった。どいてくれ」


 俺が日本刀で鍵を断ち切る。それを見たタカシマが言った。


「なんだか映画でも見ているようだよ。不思議でならない」


 そう言いつつカラカラと棚を開ける。そこには瓶が並んでいた。


「これも持っていく。割れないようにお願いしたい、そしてこれも」


「壊したくないなら、俺のリュックサックに詰めろ」


「わかった」


 リュックに瓶を詰め込み終わると、タカシマが言った。


「これで終わりだが、出来れば薬局と手術室に立ち寄りたいんだ」


「わかった」


 そして俺達はそのビルを出て病院に向かった。目に見えるゾンビはすべて倒し、薬局にたどり着くとタカシマは皆に言った。


「とにかく薬を全部持っていきたい。分からなくならないように、薬の名前をペンで記して行ってほしい。箱のままだとかさばるから、出して箱に書いてある薬の名前と日付を書いていってくれ」


 皆がそのあたりに置いてあったペンを取り、箱を見ながら薬の名前と日付を直接記していった。ゴムでまとめリュックサックに詰め込んでいく。


「これで生徒達の病気も診れる! 後は手術室にも寄ってほしい」


「行こう」


 手術室に行くと、タカシマが言う。


「友理奈君も分かっているよね。とにかく緊急オペが出来るように、器具を持っていきたいんだ」


「わかりました」


 皆がいろいろな器具を集めて、まとめてリュックサックに詰めて行った。ある程度集まったところでタカシマが言う。


「充分だ。帰ろう」


「よし」


 俺達は大学の敷地を抜けてグラウンドに戻った。すぐチヌークヘリに乗り込んで、真っすぐに天文台に向けて飛ぶ。そこでタカシマが少し驚いた顔をしながら言った。


「おかしいな。私の体がなんともない」


 するとサイトウが言う。


「本当ですね。これだけ動き回って先生がダウンしないなんて珍しい」


 それを聞いたユリナが言う。


「先生。それはヒカルのゾンビ因子除去のおかげなんです」


「そうなのかい?」


 タカシマが俺に聞いた。


「実はタカシマの中におかしな細胞があった。既にそれも取り除いている」


「…本当かね?」


「ああ」


「そうか…なら私はもうしばらく生きるという事だね」


 それを聞いたサイトウが突然泣き出した。


「すばらしい! 良かった…本当に。先生は癌だったんです」


 タカシマに縋り付いて泣くサイトウを見て、俺はこの地に訪れて良かったと心から思うのだった。ミヤタが頼ったタカシマは、素晴らしい知識を持つと共に人格者でもある。生徒達が彼を慕うのも理解が出来た。そして俺達のチヌークヘリは天文台に戻るのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ