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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第五章 救世主編

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第264話 森の中の不思議な建物

 道路を飛び越え森を走って行くと、機械音がどんどん大きくなってくる。これは間違いなく、発電機のエンジン音だ。だが恐らくそれは建物の中にあり、俺かツバサでなければ気が付く事は無かっただろう。森を突っ切ると、金網の柵が見えて来た。そこは完全に森に囲まれた場所で、奥に不思議な形の建物が見える。屋根の部分が丸くて胴体が円筒状になっており、今まで見たことのない形状をしていた。


 明かりがついているな。


 さらにその左方向と右方向にもビルがたっており、人間の気配が多数感じられた。森の中に突然現れたその場所は、下界とは完全に隔離されたような場所だった。周囲に森がある為、他からは隠れていて明かりがついていても気づかれる事は無いだろう。


 よく見れば敷地の周囲にぽつぽつと櫓が組み上げられており、その上に見張りの人間がいるようだった。銃を持っているようだが、その佇まいから考えて軍関係者ではないようだ。よく見れば、その柵の周りには何かの機械が設置してある。ミナミが以前言っていたセンサーに似ており、侵入者が通ると警報が鳴る仕組みになっている奴だ。


 ザンッ! と俺は木の上に登る。


 人がいるという事は、どこかに入り口があるだろう。


 俺は木から木へと飛び、その敷地周辺を移動すると唐突に細い道に出る。俺は木からその道路に飛び降り、道なりに敷地を目指す。敷地の入り口の前に立った時、櫓から降り注ぐライトに照らされる。


 俺の耳に人の声が聞こえて来た。


「人が来たよ!」


「本当だ! ゾンビじゃないのか?」


 ガシャと銃に弾をおくる音が聞こえたので、俺は両手を上げて手を振る。


「まって! ゾンビじゃないわ!」


「先生に連絡しろ!」


 ガガッ。とトランシーバーを繋げる音がした。櫓の上の女がトランシーバーに向かって話す。


「先生」


「なんだい?」


「人が来ました」


「何人?」


「一人です」


「……」


 トランシーバーが沈黙し、しばらくすると何か指示が出た。それを女が俺に伝えて来る。


「あの! あなたは歩いて来たのですか!」


「そうだ!」


「どうしてここに?」


「人の気配がしたからだ!」


「今日の昼間にヘリコプターが飛んでいたけど、あなた達の仲間かしら?」


「そうだ。自衛隊基地から盗んだんだ!」


「ちょっとまって」


 そして女は再びトランシーバーに向かって話すと、返事が返って来た。


「今、人をやる」


 トランシーバーの声はそう言っていた。少しすると一台の車がやってきて、そこから数人が降りる。男達は銃を持っていて俺に向けられていたが、間違いなく構えがなっていない。完全に素人だと分かり、全く脅威を感じなかった。その中の一人で、眼鏡をかけた中年の男が俺に声をかけて来た。


「君は外国人か?」


「そうだ。日本語は話せる」


「下手な真似はしないでくれ。撃たなきゃいけなくなる」


「抵抗はしない」


「銃は持っているか?」


「ない。ゾンビ用の刀だけだ」


 するとバリケードがガラガラと開けられて、数人の男が俺のもとにやって来る。俺の体を調べてから、振り向いて中年の眼鏡男に言った。


「銃は持っていません! 本当に日本刀だけで、あとは高級スーツを着ています」


 俺がそのまま手を上げていると、中年眼鏡の男がやって来て言った。


「日本刀を預からせてもらっても?」


「かまわん」


 俺の周りに居る奴らは若かった。恐らく十代後半かいっても二十代前半、そいつが俺から日本刀を取り上げた。急いでいたので一本しか持ってこなかったのが功を奏した。


「手を上げたまま、ゆっくり歩いて来てくれ」


 言われるとおりに俺が行く。周りの連中も比較的若く、みな緊張の面持ちで俺を見ていた。


「すまないね。手荒な真似はしたくないんだ」


「問題ない」


「今日の昼間に、自衛隊のヘリコプターを見たんだがあれは君らのかい?」


「そうだ。自衛隊の基地から持って来た」


 すると男は沈黙する。隣りにいた女が俺に聞いた。


「でも自衛隊の人じゃないですよね? ル〇ヴィ〇ンのスーツ着てる自衛官なんておかしいわ」


「違う。自衛隊じゃない」


 中年の眼鏡が言う。


「ヘリは君が操縦して来たのかい?」


「違う。仲間がいる」


「仲間は一緒に来なかったのかな?」


「万が一、ここに居るのがヤクザや軍隊なら危険だからな。俺が様子を見に来た」


「軍隊だって!?」


「そうだ」


「何か知っているのか?」


「ああ」


「それで、君はここに何をしに来たんだ?」


「人を探している」


「人? 知人を探しているのかい?」


「全く知らん奴だ」


 なかなか話がかみ合わないが、周りの男も女もいつ銃の引き金を引くか分からない状態だった。極度の緊張状態にあるようで、俺は目の前の中年眼鏡に言った。


「今にも撃ちそうな銃の前では、なかなか話し辛いがな」


 すると男が気が付いたように言う。


「みんな! 銃を下げなさい。とにかく中に入ってもらってゲートを締めるんだ」


「「「「「「「はい!」」」」」」」


 俺が中に入れられ、皆でゲートを締めて鍵をかける。そして俺は目の前の男に言った。


「ここにタカシマ教授と言う男はいるか?」


 その言葉を言った途端、皆が驚愕の表情で騒めき始めた。どうやらこの人らは、その人を知っているらしい。


「その人を探してどうするつもりだい?」


「ある人から頼れと言われて来た」


 すると中年の眼鏡男が、トランシーバーを取って話しかけた。


「先生。ちょっといいでしょうか?」


 そしてこそこそと話をし始めるが、もちろん俺にはバッチリと聞こえていた。話し終えた中年眼鏡の男は俺に言う。


「先生がお会いになるそうだ」


「わかった」


 俺は彼らに連れられて、さっき見た変な形の建物へと連れて来られた。そこにも見張りの人がいて、彼らが扉を開いてくれる。後ろには銃を構えている人らがいて、一応俺を狙っているようだ。


 中年眼鏡が言う。


「こっちだ」


 俺が先の部屋に通されると、そこに年老いた白髪の眼鏡の男がいた。その人が俺に話しかけて来る。


「誰に言われたんだい?」


「ミヤタという奴だ。大学の先生だったらしい」


「み! 宮田! 宮田君が生きているのか?」


「今は静岡で研究をしている」


「そうか! 宮田君が! そうか!」


「あんたがタカシマ教授か?」


「いかにも、私が高島だ」


 すると眼鏡中年の男が言った。


「先生! 正体を明かして、よろしいのですか?」


「ああ。この人は恐らく朗報を持って来たんだよ」


 それを聞いた俺が言う。


「そのとおり、情報を持って来た。是非それを見てもらいたい」


「は、早く見せておくれ!」


「今ここには無い。情報を持つ仲間達をここに連れてくるが問題はあるか?」


「わかった」


「ヘリコプターを着陸させるところがあるか?」


「少し離れた所に駐車場がある」


「わかった。日が昇ったらまた来る」


「あ、ああ」


 そして俺は再び入り口に送られて、日本刀を返してもらった。俺は急いで仲間達のもとへと走るのだった。

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