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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第五章 救世主編

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第263話 京都上空

 京都にすぐに到着し、一時間ほど市上空を旋回し続けている。ミヤタから聞いていた場所に俺が単独降下して調査するも、大量にゾンビがいるだけで生存者の気配は無かった。拠点を他に移した可能性も考慮して飛んでいるのだが、どこも大量にゾンビがおり人が潜伏している可能性は低い。


 クキが言う。


「もう死んでいる可能性もあるな」


「確かにな」


 太陽が沈みかけており目視での捜索は厳しくなりそうで、タケルも懸念している事を言った。


「たぶん俺達の事を、敵の軍隊だと思ってるんじゃね?」


「それもあるだろう」


「ヒカルよ。いずれにせよ、日が昇ってからの捜索になるだろう。空が明るいうちに、いったんヘリコプターをどこかに降ろすぞ」


 クキがヘリを降ろす場所を探すために、市内から山間部に向かって飛び始めた。


 すると外を見ていたミオが言う。


「見て! 清水寺よ」

「わー本当だ」

「凄いねえ!」

「初めて見た!」


 それを見ていたタケルが笑って言う。


「修学旅行かよ」


 ユミが笑って言う。


「いいじゃない。こんな殺伐とした世の中で素晴らしい景色を堪能するくらい。ねえ! よかったら皆も見てみて!」


 ユミに誘導され、救出して来た女達も外を見る。


 俺がチヌークヘリ内で生存者全員のゾンビ因子を取り除き、負傷した場所を回復させた為だいぶ元気になった。そこで気が付いたのは数人が子を宿していた事だ。あの下衆共の子らしく、その子をどうするか聞いたのだが、このような世界で授かった子供なのだから生むと言い始める。子供には何の罪も無いと言われ、俺達はそれ以上何も言う事が無かった。


 そして、その女達に同情した仲間達が、とりわけ優しく接してくれている。努めて明るくふるまい、皆が騒いでいる。


 それを聞いていたクキが言う。


「なら見晴らしのいい所に着陸させるか。気分も晴れるだろ」


 クキなりに気を使っているらしい。そしてヘリをある方向に進めていった。


「展望台の上に広場がある。ありゃ駐車場だな」


 クキが言い、チヌークヘリはそこに向かって飛んだ。上空から駐車場を見ると、ちらほらとゾンビがいたので俺が先に飛び降り全てを斬り落とし、上空に向かって手招きをする。ヘリはゆっくりと降りて、無事に広い駐車場に降りた。俺はチヌークヘリを見上げて言う。


「タケル! 今日はここで野営だ!」


「ヘリの中で寝ればいいだろ」


「ここからなら市内を展望できるぞ!」


 俺もヘリの中に入り、女達の意見を聞く。


「みんな、陽が落ちるまでは市内が見渡せるぞ。皆で見たらどうだ?」


 するとクキが言う。


「灯りなんかをとらえる事が出来れば尚のこと良いがな。ヘリが去ったと見て灯りをつけるかもしれん」


 どうやらクキは捜索もかねて、この場所にチヌークヘリを降ろしたらしい。それに気が付いたヤマザキが言う。


「さすがはプロだ。無駄がない」


「常識だ」


 クキの言葉に皆が苦笑いする。いずれにせよここに陣取ったのは良い判断だろう。


 皆がヘリコプターを降りて、薄紫に色づく空を見上げた。


「綺麗…」


「本当ね。ゾンビの世界だと忘れてしまうわ」


「街は真っ暗だけどな」


「その分、星空がはっきり見えるわよ」


 生存者達も降りて来て、皆静かに星空を眺め京都の町を見下ろしていた。すると草むらから音がした。


 リーンリーン!


「鈴虫!」


「そんな季節になったのね」


「こうして日本各地に生きている人がいる。みんな生きててくれてありがとう!」


 そんなミオの言葉に、救出した女達が微笑んでありがとうを言っていた。特にユンは彼女らの気持ちが痛いほど分かるのか、ぴったりと寄り添い頭を抱き寄せている。


 陽が落ちたので皆をチヌークヘリに戻した。俺とクキとタケルが残り、引き続き展望台から市街地の監視を続ける事にする。タケルがボソリと言った。


「しかしよ。女ってのは強いよな」


 それにクキが答えた。


「そうだな。あのお姉ちゃん達を守らないと日本の未来は無い。だがよ、身重の彼女らを連れて、この先の作戦行動は厳しいぞ」


「確かに…」


「まだまだ生存者は、あちこちにいるはずだからな」


 クキの言うとおりだった。身重の彼女らを連れての救出活動は、制限がありすぎて厳しい。もし敵の軍隊に遭遇した場合は、正直言って全員を守りきれる保証もない。


 するとそこにオオモリが来た。


「セーフティーゾーンを作って置いて行くしかないんじゃないですかね? 生存者を集めて、そこで暮らして貰うのが一番いいでしょうね」


「そうだな…」


 だが…その先、どうなる? 人々は守ってくれるのか? 俺達はその命を守っていけるのか? そう考えれば、子供を産むと判断した彼女らの決断は重かった。だがこの日本の未来は、彼女らのような人達にかかっている。彼女らの意思は最大限、尊重されなければならない。


「とりあえず武さん! 見張りを代わります!」


「ああ、すまねえな大森」


 そしてオオモリとタケルが交代した。俺はクキにも休むように言ったが、もっと過酷な作戦は山ほどあったと言い張って見張りを続けている。


 ずっと市街地を眺めているが、光が灯る事は無かった。深夜となり、あたりがより一層静けさを増しても街に動きは無い。虫の鳴き声だけが美しく鳴り響き、俺達はそれを黙って聞いていた。


 その時だった。俺が違和感を感じる。よく耳を澄ましていると、明らかに何かの音が聞こえて来た。


「聞こえる…」


 クキが聞き返してくる。


「なにがだ?」


「機械音だ。恐らくは…発電機か何かだ」


「聞こえんが…」


 そこにチヌークヘリからツバサが降りて来た。


「ヒカル」


「どうした?」


「機械の音が聞こえるんだけど」


「やはりそうか」


 クキがツバサに聞いた。


「おねえちゃん。どっちから聞こえる?」


「都市側じゃないわ。全く逆方向から聞こえて来る」


「山の上か?」


「多分」


 間違いないだろう。俺達は市街地に気を向けていたが、どうやら更に山中に生存者がいたようだ。ミヤタやミシェル達も富士山に陣取っていたが、考える事は皆同じらしい。


 そして俺はチヌークヘリに戻って、皆に聞こえるように言った。


「タケル、ミナミ。クキと一緒にここを護ってくれ。ヤマザキ! 皆を頼む!」


「わかった」


 更にクキにも言う。


「銃を取れ。万が一は応戦する必要があるだろう」


「了解だ」


「俺は音の発信元を確認してくる」


「せいぜい気を付けてな」


「問題ない。いざとなったらヘリコプターを飛ばせ」


「そうだな」


 そうして俺はチヌークヘリから離れ、音が鳴る方に向かって走り始めるのだった。

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