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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第四章 逆襲編

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第245話 ゾンビ試験体と市街戦

 俺が試験体を感知した事を伝えると、皆が息を潜めたのに対しクキだけが不思議そうに聞いて来る。


「おい、なんでそんなことが分かるんだよ!」


「気配感知だ」


「気配感知? なんだそりゃ?」


「スキルだ」


「何を訳の分からんことを」


「しっ!」


 試験体が更にこちらに近づいて来る。だが俺達が息をひそめると、再びあたりをゆらゆらと彷徨いだした。


 なんだ? 音に反応しているのか? 


 ゴン!


 俺は装甲バスの天井を鞘に入った日本刀でつついた。すると謎の気配が、こちらに向かって動き出す。俺の行動を見てクキが聞いてきた。


「何をしている?」


「試験体は音につられてついて来たんだ。お前のバイクと俺達の装甲バスの走行音につられて、この住宅地までついて来てしまったんだろう」


「マジかよ」


 まだ試験体は完全に装甲バスを見つけてはいない。俺がみんなに言った。


「このまま装甲バスで都心から出てしまえば、アイツらはそのままついて来るだろう。そうすれば東京の外にあれを解き放つことになってしまう。それだけは避けなければならない」


 皆がコクリと頷いた。だがクキだけが首を振る。


「おいおい何をするつもりだ? まさかあれを相手にするってんじゃないよな?」


「問題ない。だがここで戦うのは得策ではない、都心から出さないようにする必要がある」


 それを聞いたヤマザキが言う。


「ヒカル。なら、このまま都心に進もう。俺達がオトリになればいい」


「はあ? あんたら正気か? 軍隊でもなければ倒せない相手だと思うぞ?」


 俺がクキに言った。


「むしろ、お前が東京をバイクでうろついていて、よくアイツらに襲われなかったと感心する」


「まあ…俺は悪運が強いんだ。風向きや時間的な問題なんかもあったのかもしれねえし、バイクを使うのも一瞬で後は足で動き回っていたからな」


 俺達が話をしていると、既に試験体の気配がすぐそばまで来てしまった。俺はヤマザキに耳打ちする。


「移動してくれ」


「わかった」


 東京は遮蔽物が多く範囲も広い。ここで試験体を相手するのは俺以外は無理だった。ヤマザキが静かに運転席に移動し、エンジンをかけて装甲バスのアクセルを踏んだ。


「やはり、間違いない。試験体はエンジン音につられてついてきている」


 するとヤマザキが俺に聞いた。 


「どこに行く?」


 ミオが懐中電灯で地図を照らしながら言う。


「練馬を抜けて中野方面へ!」


「お、おまえら! 何言ってんだ! そっちは東京の中心! 俺が試験体とやらを確認した場所だぞ!」


 それを聞いたタケルが苦笑しながらクキに言った。


「だから、わかんねえかな? そこに向かってんだよ」


「な、なんでそんなことを」


「あんなもんを、東京の外に出しちまったらそれこそ多くの日本人が死ぬだろ? だから東京で封じ込めようって作戦だ」


「作戦? こんなのは作戦でも何でもない! 神風だ!」


「だれも死ぬ気はさらさらねえよ」


  二人の会話を止めるように俺が言う。


「この装甲バスより試験体の方が速い! 追いつかれるぞ!」


「だめだ。瓦礫や倒木が多くてこれ以上のスピードは出せない!」


「なら俺が迎撃する」


 するとクキが大声で言った。


「馬鹿どもが! 中心地に向かうなら都道四号に乗れ! あの道は道が広いうえにあまり荒れていない!」


 ミオの指示のもとでヤマザキがハンドルを切り、都道四号線に出た。クキが言うように道路は広く、倒木も無いためスピードが上がる。そんな中でクキがぶつぶつ言っていた。


「いったいなんなんだ! ちくしょうが! こんな所に来て、なんでお前らと心中しなきゃならねんだよ!」


 するとユミが懐中電灯でゴツンとクキを殴った。


「黙りなさいよ! 男ならこんな状況を楽しむぐらいがちょうどいいのよ」


「おまっ! 何言ってやがる!」


 そしてクキがきょろきょろと俺やタケルを見て言う。


「はあ? お前ら、なに…笑ってやがんだよ」


 どうやら俺やタケルは口角を上げて笑っていたらしい。自覚はしていなかったが、クキに言われて改めて自分が笑っている事を知る。


 そしてそのクキの言葉にタケルが答えた。


「俺達はここまでの半年、日本中で人を救って来たんだ。せっかく苦労して助けた大勢の命を、消してしまう訳にはいかねえんだよ。お前も目を見開いてヒカルの戦いを見るんだな。今までの自分がちっぽけに感じるぜ! あのバケモノたちの阿鼻叫喚がみれると思うと、つい笑ってしまうってもんだ」


「くっ! 頭おかしいんじゃねえのか!」


 ユミが蔑むような目でクキを見る。


「あんたねえ、特殊部隊の隊長だったんでしょ?」


「だからって、戦う相手は選ぶ」


「なら! 有利になるための、指示の一つでも出して見なさいよ!」


「おまえら、随分…肝が据わってんな…」


 クキは俺達を驚愕の眼差しで見つめていた。俺達の今までの戦いを知らないのだから仕方がないとは思うが、ユミの言う通りグダグダ言ったところで道は開けない。


「わかったよ! 何をするつもりなんだ?」


 それに俺が答えた。


「試験体を出来るだけ引き付けて一網打尽にする」


「引き付ける?」


「そうだ」


「……」


 クキが少し沈黙して言った。


「死ぬつもりか?」


「だから何度も言わせるな。試験体を出来るだけ多く殺すつもりだ」


「引きつけてか?」


「そうだ」


「わかった! なら俺のバッグから手榴弾を取れ! それを外に放り投げろ!」


 クキは縛られているので、ミナミがバッグに手を突っ込み手榴弾を獲る。


「これ?」


「使い方は?」


「分かってる!」


 ミナミは窓を開け、手榴弾のピンを抜いて外に放り投げた。するとバスの後方で手榴弾が炸裂し、四方八方の試験体が反応したことが分かる。


「しらねえぞ!」


 俺がクキに尋ねる。


「見通しのいい広い場所を知っているか?」


「どうせ中心に向かうなら、明治神宮に向かえ。木々も丸焼けになって今は完全な更地になっていた」


 それを聞いたミオとヤマザキは地図を見ながら進んでいく。だが四方から集まって来た試験体が、装甲バスに追いつきそうになって来た。


「ヤマザキ! ドアを開けろ!」


「了解だ」


 俺がドアから出ようとすると、クキが驚いたように言う。


「何してんだ?」


「へばりつく前に迎撃する!」


 俺はすぐに装甲車の屋根に上り、四方に気配感知を張り巡らせた。すると道脇のビルの上から、試験体が飛びおりてくるのが分かる。


「刺突閃!」


 俺は二閃の剣撃を落ちて来る試験体に放つと、二つの頭を直撃されボトリと道路に落ちて、そのまま進む装甲バスの車輪にひきつぶされた。装甲バスが進む先の道のビルの上から、また数体の試験体が落ちてくるのだった。

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